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 GMが体育館の中へ案内すると、パイプ椅子が円状に10個並べられていた。
 両隣のスペースが均等に開けられており、座ってしまえば隣に座った人間と耳打ちでの会話は不可能だろう。

 コピー用紙に番号が書かれた物が椅子の背もたれへ雑に貼り付けられている。
 一周回って確認すると、その番号は2から始まり、11で終わっている。

 ティーが自分の席に着いた。
 皆が座るのを躊躇し、椅子を見つめるだけで突っ立っている中、1人椅子に座った。

【 人狼ティーは皮肉にも、最近のペンギンファーストペンギンの役目を果たす。 】

ーーっ!!!? な、何だ、これは!?

 電子的な情報が、脳内に浮かぶ感覚。
 
 幼い頃、授業で習った『最初のペンギンファーストペンギン』は、よく覚えている。
 海へ1匹のペンギンが飛び込むと、他のペンギンも続いて海へ飛び込んで行く姿から。
 物事が動く最初のきっかけになる存在を、最初のペンギンファーストペンギンと呼ぶ事があると言う。

ーー人狼ティー……?

 それぞれが席に着き始める中、俺は突っ立ったまま。
 GMも座る気配を見せなかった。

「お前は座らないのか?」
「僕はGMであり、リストの1人目のシンです。席はありません」
「リスト……か」

 ここに来る前、ティーが言っていた。
 待機していた教室に、それぞれに向けて書かれていた情報。

ーーそうだ、思い出した。

人狼ティー』は、あの時見た黒板に書かれていた情報だ。

 しかし、他の情報に関しての記憶には、靄がかかる。

ーー否。……ノイズ? 
 不快な機械音。砂嵐の向こうに、うっすら文字が見える。
 思い出せないーーと言った言葉で表すには、ちょっと違う感覚だった。
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