47 / 87
【4】
?4−5?
しおりを挟む「体育館、一緒に行こうよ」
「……え?」
「体育館だよ。自分の番号覚えてる?」
「番号……?」
「何人目、ってやつ。後ろの黒板にあったリストとか……自分の名前の前に書かれてた番号だよ」
「覚えてないと、まずいのか?」
「席順だから。その番号の椅子に座ることになるよ」
「なるほど」
見た記憶は、ある。
だが、自分の番号までは覚えていない。
黒板にあるであろう情報を確認すべく、自分のいた教室に戻ろうとドアに手を伸ばす。
ーーガラガラガラガラッッ!!!
教室のドアは、自動で開いた時と同様の勢いで閉まった。
ドアに手をかけるもガタつくだけ。
まるで鍵がかかった様に開かなくなった。
「あっぶね……ていうか、マジかよ」
「一度出た教室にはもう入れないよ?
もし他の人が別の教室に入ったりしたら、ゲーム破綻しちゃうし」
「ゲーム、破綻……?」
「ウイロウだよ。ウ・イ・ロ・ウ!」
「ウイロウ……?」
「やりにいこうよ、体育館へ」
ウイロウ。ういろう……外郎?
好物の外郎しか思いつかなかった。
その言葉に続くには相応しくない「やりにいこう」の言葉に、思わず吹き出してしまう。
その様子を見たティーは、先程までの愛想が無くなる。
俺を置いて歩き出した。
「おい、待って! ウイロウって、何だよ!」
呼び止めたティーは、こちらには振り向かず止まる。
さっき見せた愛想笑いとは別物のーー高笑いをしてみせた。
『……アハハハハハ。アハハハハハッ!』
ーー機械的なその声は、廊下に響き渡る。
「ウイルス人狼ゲーム。略して、ウイロウ」
「人狼ゲーム、だと?」
「フフフ。まだとぼけてる……ジンくんだって、知ってるはずだよ?」
振り向かずそのまま言葉を続けていたティーは、わざとらしく首を傾げて見せた。
俺からの返答を待っていたのか、しばらくの沈黙の後、首を戻して再び歩き出した。
『ヤリニイコウヨ。タイイクカンヘ』
脳内から離れない先程の言葉を思い出すと、浮かんだ文字が再び変換されていく。
『殺り行こうよ。体育館へ』
『違ウ。ウイロウハ、誰モ死ナナイ人狼』
不安な孤独からの解放も束の間、新たな恐怖に襲われる。
ーー目に見えない、誰かが、ここにいる。
現実離れしたこの空間は、現実の感覚を見失わせる。
この違和感が違和感なのか、当たり前なのかさえ判断出来なくなって来た。
ーー目に見えないそれは、俺の中にいる。
ーーこの感覚の正体は何だ?
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
小児科医、姪を引き取ることになりました。
sao miyui
キャラ文芸
おひさまこどもクリニックで働く小児科医の深沢太陽はある日事故死してしまった妹夫婦の小学1年生の娘日菜を引き取る事になった。
慣れない子育てだけど必死に向き合う太陽となかなか心を開こうとしない日菜の毎日の奮闘を描いたハートフルストーリー。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる