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【4】
?4−4?
しおりを挟むビビビッ……ガ、ッガーー。
聞き覚えのあるノイズ。
教室前方にあるスピーカーから聞こえた音だった。
『夜のお仕事が終わりました。朝がやってきます。
皆様、体育館に集合して下さい』
放送が終わると同時に、教室のドアが勝手に開く。
勢いよく開いたドアは、バンッと大きな音を立て軋む。
ーーここの教室だけじゃ無かった。
少し離れた教室のドアも同時に開いたらしい。
滑りの悪いドアが開く音は、多少のタイミングのズレにより何重にもなって響いていた。
その現象に驚いた人間の悲鳴も、僅かながら聞こえてきた。
「……誰か、居ないのー!?」
数秒の沈黙の後、廊下から女性のものらしき声が聞こえた。
その声の主の位置を探りながら、廊下へと出る。
同様に、離れた教室から出てくる人間の姿も確認出来た。
「コウ……ちゃん?」
背後からだった。先程と同じ声。
女性から声をかけられた。
その声に反応して後ろへ振り向くと、頭に鈍い痛みが走る。
それと同時に、脳裏に名前が浮かんできた。
咄嗟に名前が口から溢れ出る。
「ミホ、なのか……?」
「んー? ……あれ、人違いだったかも。私、ミホさんじゃない……です」
「ごめん。俺も、コウちゃんでは無い」
「そっか~。そうですよね……ははは、ごめんなさい。私は、ティーです」
「俺は……ジン」
「はい。よろしくお願いします!」
すんなり名前が出てきた。
彼女から名前を聞いた途端、条件反射に近い感覚で自分の名前を名乗っていた。
彼女の事は本当に知らなかった。
それなのに、すんなりこの状況を鑑みて、不信感も抱かず名乗ってしまった。
俺もそうだが……彼女は随分と親しげに話してくる。
少し話しただけなのに、彼女が同い年位の高校生だと、なんとなくわかった。
ーー高校生……?
「ごめん。ティーは、いくつ?」
「17歳。高校2年生だけど? ジンくんは?」
「同じ。高2だ」
「そっか」
ーー高校2年生、か。
先程まで検討さえつかなかった自分の年齢が、彼女との接触をきっかけにはっきり『高校2年生』だとわかる様になった。
一回聞いただけの『ティー』の名前もそうだ。
今、不自然だと感じる事が出来る名前にも関わらず、疑問も抱かず聞き返しもせず。
当たり前の様に、会話に組み込んだ。
ーーこの違和感がありながら、なぜ俺はこれらの情報を使いこなせるんだ……?
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