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【1ー1】
キーンコーンカーンコーン……
学校のチャイムだ。
なんの変哲もないチャイムなのに、何処か不気味な雰囲気も兼ね備えている。
ーー違和感。久しぶりに聴いた気がするのだ。
不自然な感覚と共に、俺はチャイムの音で目を覚ました。
どうやら俺は椅子に座って居たらしく、項垂れていた体を起こし周りを見渡す。
そこは、このチャイム音に相応しい小学校の教室だった。
当時は感じなかったが、何もかもが子供仕様だった。
低い位置の黒板、窓。
大人が座るには小さ過ぎる椅子。
ーー何かが、おかしい。何が、おかしい?
壁に張り付いた時計や展示物。
黒板とその付属品は存在するものの、本来あるべき物がそこにはなかった。
教室には、自分が座る椅子がひとつ。
それに座る俺。ただそれだけだった。
机は無い。他の生徒も、教員もいない。
こんなにも物が少ないと言うのに、それでも狭く感じる教室。
違和感。違和感。感じとる度に鳥肌が立つ。
……キーンコーンカーンコーン……
「俺って、今何歳だっけ……?」
聴いたことのない声に驚いた。
”予想“していたよりも、俺の声は低かったのだ。
自分の意思で出した声なのに、自分の声だと思えなかった。
誰も居ない教室。
此処に自分が存在している事の確認の意味も込めて、声に出して言ってみた。
ほんのり反響した俺の声。
心の中の声じゃ無い。現実だ。
自分の手のひらを見つめながら、自分の意思で開いては閉じる。
どう見ても小学生の手のサイズじゃなかった。
そもそも、何を根拠に自分を小学生だと思ったのだろうか。
自分の正確な年齢がわからない。何歳と何ヶ月とかそう言う細かい単位でのレベルでは無い。
自分が大人か子供かすら、わからないのだ。
……いや。良く考えてみれば、元々それはハッキリわかるものでもないのかも。
成人すれば大人だ、なんてのも大人が決めた事だ。
こんな状況、テレビや漫画で見たことがある気がする。
ーーそう、これも一緒だ。自分の名前も、思い出せない。
でも、これを記憶喪失と呼ぶ事はわかった。知っていたみたいだ。
記憶喪失だとわかっただけで、今まで当たり前に出来た事も、記憶として失ってはいないのだと再確認し、不思議と少し冷静になれた。
……キーンコーンカーンコーン……
この教室も、椅子も、小さいんじゃ無い。
俺がでかいんだ。
ここは小学校だろう。
そう思ったのは知識というより、過去の記憶として感じる情報だった。
外は夕方。教室は薄暗く、窓ガラスに俺のシルエットが映る。
身長は、“予想”していたより高い。
ーーまただ。さっきから、”予想“って。何なんだよ……おかしいだろ?
俺は、自分を子供だと思い込んでいる節がある。
くっきり映るほどの鏡代わりになる物が無く、自分の顔は確認出来ない。
顔全体を触ってみるが、眉毛と髪の毛以外の『毛』の気配は感じない。
髭はチクチクとさえ感じず、全く生えて無い様だ。
手の甲も見てみるが、うっすら毛が生えている程度で肌も老いてない。
腕、足……あそこも同様で、大人だとしたら毛が薄い。
体の大きさも成長の見込みがあり、声ももう一段回くらい声変わりを残して居そうな高さ。
未成年。中学生から高校生くらいの年齢だろうと予想がついた。
ーー普通……平均値? 違う。身近? 日常?
仮にこれが記憶喪失だったとして。
これが正真正銘”俺“の“男”の体である事は、調べる前からわかっていた。
こんな異様な環境下に居ながらも、これが別の人間の体である可能性は頭に浮かばなかった。
自分自身である事を疑わなかった。
繊細な部分を覗き、その正体を知ってしまう事への罪悪感も無かった。
自分の認識とは違う体だとは認識しながらも、異性の体である可能性へのワクワクも皆無。
お馴染みのものがそこにあった感は否めない。
ーー日常的な感覚……それを思い出すなんて事は、現実にはそうそう無いよな?
再び襲う違和感。
その正体もふくめ、直ぐに理解出来てしまう自分に恐怖する。
あまりにも、何もかもの理解が早すぎるのだ。
皮肉にも俺は、頭が良くない……はずだ。
仮に今俺が学生だったとして、何故“大人では無い”と、最も簡単に直ぐにわかったのか。
否、そんな複雑な問題じゃ無いのだろう。
知っていたんだ。
知識? ……少し違う。過去に学んだ知識を掘り起こして出した答えのスピード感じゃなかった。
考えろ、あり得ない事だと怯えて思考を逸らすな、俺。
ーー記憶だ。
何故、“大人になった俺”と“今の俺”を比較する事が出来たんだ!?
違和感への回答は即答。その繰り返し。
今の俺は、”大人になった俺“を、知っている。
しかし、大人ではない。そこまでわかっている今の俺は、何故”小学生では無い俺“に、何度も驚いているんだ?
「じゃあ、今此処にいる俺は……誰なんだ?」
キーンコーンカーンコーン……
学校のチャイムだ。
なんの変哲もないチャイムなのに、何処か不気味な雰囲気も兼ね備えている。
ーー違和感。久しぶりに聴いた気がするのだ。
不自然な感覚と共に、俺はチャイムの音で目を覚ました。
どうやら俺は椅子に座って居たらしく、項垂れていた体を起こし周りを見渡す。
そこは、このチャイム音に相応しい小学校の教室だった。
当時は感じなかったが、何もかもが子供仕様だった。
低い位置の黒板、窓。
大人が座るには小さ過ぎる椅子。
ーー何かが、おかしい。何が、おかしい?
壁に張り付いた時計や展示物。
黒板とその付属品は存在するものの、本来あるべき物がそこにはなかった。
教室には、自分が座る椅子がひとつ。
それに座る俺。ただそれだけだった。
机は無い。他の生徒も、教員もいない。
こんなにも物が少ないと言うのに、それでも狭く感じる教室。
違和感。違和感。感じとる度に鳥肌が立つ。
……キーンコーンカーンコーン……
「俺って、今何歳だっけ……?」
聴いたことのない声に驚いた。
”予想“していたよりも、俺の声は低かったのだ。
自分の意思で出した声なのに、自分の声だと思えなかった。
誰も居ない教室。
此処に自分が存在している事の確認の意味も込めて、声に出して言ってみた。
ほんのり反響した俺の声。
心の中の声じゃ無い。現実だ。
自分の手のひらを見つめながら、自分の意思で開いては閉じる。
どう見ても小学生の手のサイズじゃなかった。
そもそも、何を根拠に自分を小学生だと思ったのだろうか。
自分の正確な年齢がわからない。何歳と何ヶ月とかそう言う細かい単位でのレベルでは無い。
自分が大人か子供かすら、わからないのだ。
……いや。良く考えてみれば、元々それはハッキリわかるものでもないのかも。
成人すれば大人だ、なんてのも大人が決めた事だ。
こんな状況、テレビや漫画で見たことがある気がする。
ーーそう、これも一緒だ。自分の名前も、思い出せない。
でも、これを記憶喪失と呼ぶ事はわかった。知っていたみたいだ。
記憶喪失だとわかっただけで、今まで当たり前に出来た事も、記憶として失ってはいないのだと再確認し、不思議と少し冷静になれた。
……キーンコーンカーンコーン……
この教室も、椅子も、小さいんじゃ無い。
俺がでかいんだ。
ここは小学校だろう。
そう思ったのは知識というより、過去の記憶として感じる情報だった。
外は夕方。教室は薄暗く、窓ガラスに俺のシルエットが映る。
身長は、“予想”していたより高い。
ーーまただ。さっきから、”予想“って。何なんだよ……おかしいだろ?
俺は、自分を子供だと思い込んでいる節がある。
くっきり映るほどの鏡代わりになる物が無く、自分の顔は確認出来ない。
顔全体を触ってみるが、眉毛と髪の毛以外の『毛』の気配は感じない。
髭はチクチクとさえ感じず、全く生えて無い様だ。
手の甲も見てみるが、うっすら毛が生えている程度で肌も老いてない。
腕、足……あそこも同様で、大人だとしたら毛が薄い。
体の大きさも成長の見込みがあり、声ももう一段回くらい声変わりを残して居そうな高さ。
未成年。中学生から高校生くらいの年齢だろうと予想がついた。
ーー普通……平均値? 違う。身近? 日常?
仮にこれが記憶喪失だったとして。
これが正真正銘”俺“の“男”の体である事は、調べる前からわかっていた。
こんな異様な環境下に居ながらも、これが別の人間の体である可能性は頭に浮かばなかった。
自分自身である事を疑わなかった。
繊細な部分を覗き、その正体を知ってしまう事への罪悪感も無かった。
自分の認識とは違う体だとは認識しながらも、異性の体である可能性へのワクワクも皆無。
お馴染みのものがそこにあった感は否めない。
ーー日常的な感覚……それを思い出すなんて事は、現実にはそうそう無いよな?
再び襲う違和感。
その正体もふくめ、直ぐに理解出来てしまう自分に恐怖する。
あまりにも、何もかもの理解が早すぎるのだ。
皮肉にも俺は、頭が良くない……はずだ。
仮に今俺が学生だったとして、何故“大人では無い”と、最も簡単に直ぐにわかったのか。
否、そんな複雑な問題じゃ無いのだろう。
知っていたんだ。
知識? ……少し違う。過去に学んだ知識を掘り起こして出した答えのスピード感じゃなかった。
考えろ、あり得ない事だと怯えて思考を逸らすな、俺。
ーー記憶だ。
何故、“大人になった俺”と“今の俺”を比較する事が出来たんだ!?
違和感への回答は即答。その繰り返し。
今の俺は、”大人になった俺“を、知っている。
しかし、大人ではない。そこまでわかっている今の俺は、何故”小学生では無い俺“に、何度も驚いているんだ?
「じゃあ、今此処にいる俺は……誰なんだ?」
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