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第90話 門の在り処
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「さて、ベルゼビュートの討伐は無事終わりました。これから本題である門の捜索を開始する訳ですが、その前にやる事があります」
「やる事?」
マリーニャが俺から目を逸らしながら言う。
「チェインはまず服を着て下さい」
「は? 服……うわっ」
俺はベルゼビュートの攻撃で全身を粉々にされたんだった。
≪無限再生≫スキルで肉体は元通りになったが、着ていたローブはそうはいかない。
俺は咄嗟に前を隠す
「マリーニャ、代わりの服をお願いします」
「はい、はい」
マリーニャは呆れながら≪圧縮魔法≫で持ち運んでいる代えの衣服を取りだし、俺に渡す。
「そういえば前にもこんな事あったな」
プリンは初めて俺と出会った日の事を思い出して感慨にふけっている。
「忘れろプリン。あの時の俺の心の傷はまだ癒えていないんだぞ」
「なんだ、気にしてたのか。あははっ」
笑うプリンとは対照的に、シズハナは顔を紅潮させながら俯いている。
「馬鹿……」
俺が新しいパンツを履いていると、全身が真っ赤に染まったルッテが前に出て言った。
「私も着替えを……いえ、それよりもまず身体を洗いたいですわ。ご覧なさいまし、全身がチェインの体液塗れでベトベトですもの」
「言い方ぁ!」
マリーニャは水魔法を使えないので、フェリグスの仲間の女魔導士に魔法で水を出して貰って身体を洗う事になった。
「はいはい、男達は向こう行っててね」
俺やフェリグス達男連中はプリンに部屋の外に出される。
フルーレティとエリゴールは紳士だ。言われるまでもなく自主的に部屋の外に出ていた。
「へえ、ルッテって意外と……」
「な、何ですの!? 女同士だからってあまりじろじろ見ないで頂けます?」
「ふっふっふー、隙あり!」
「こ、こら、変なところを触らないで下さいまし」
部屋の外にまでルッテ達の声が響く。
「……チェイン君。相談があるのだが、君の≪リプレイス≫は確か容姿も交換できるそうだね」
「お断りします、フェリグスさん」
少ししてマリーニャ達が部屋から出てきた。
ルッテは身体が綺麗になってさっぱりとした表情をしている。
しかし髪を整える余裕はなかったのか、いつもの縦ロールではなく、まっすぐに下ろしている。
「ふむ……これはこれで……」
思わず感想が口からこぼれる。
「何ですのチェイン? さっきからじろじろと」
しまった、つい見入ってしまった。
「いや、髪型が変わると大分イメージも変わるなと思って」
「あら、チェインはストレートの方が好みでして? じゃあこれからそうしようかしら」
「え? ルッテの好きな髪形にすればいいと思うよ」
「……あら、そうですか。ではそうさせて頂きますわ」
ルッテはそれだけ言うと、不機嫌そうな顔で先へ行ってしまった。
「あれ? どうしたんだ? 何か怒ってる?」
「おいチェイン、あんたって奴は……」
プリンが心底失望したような目で俺を見る。
「チェインに足りないのは人としての心ですね」
悪魔の姿をしたマリーニャに人の心がないって言われた。
「馬鹿」
シズハナから俺に送られたのはたった一言だ。
一体何がどうなってるんだ?
◇◇◇◇
魔皇帝ベルゼビュートが死亡した事で、残りの悪魔達は全て降伏した。
俺達はその一体に門の在り処を聞き出す。
「門は宝物庫の中にあります。どうぞこちらへ……」
俺達はその悪魔について近いある宝物庫へと向かう。
厳重に封印されている扉の鍵を開け、中に入るとそこには夥しい数の金銀財宝が敷き詰められていた。
「これは……アフガリア帝国が所持していた金剛石の髑髏だ。こっちのは古代エイリーク王朝の王の亡き骸が収められていたというプラチナの棺……何れもベルゼビュート軍の襲撃によって奪い去られていた人類の鈺だ」
フェリグスはフルーレティに向き直り、真剣な眼差しで言う。
「これらは全て戦利品としてあなた方の所有物となるのが筋だが、どうか一部でも我々に返却願えないだろうか。我々人間が何百、何千年をかけて継承してきた技術の結晶、鈺なのだ」
フルーレティは首を横に振って答える。
「一部だと? それはできぬ相談だな」
「くっ、そうか……いや、仕方がない。無理を言って済まなかったな」
「我らが必要なのは門だけだ。それ以外はいらぬ。全て持ち帰るがいい」
「……! 新たなる魔界の王フルーレティよ、人類を代表して感謝の意を表する」
フェリグスは拳を胸の前に置き頭を下げ、敬礼の姿勢を取る。
「うむ。では我らは門を回収するとしよう。どこにある?」
「はい、こちらです」
悪魔は宝物庫の奥から一つの魔道具を持ちだしてきた。
それはディハールで見たものと同じ形状をしている。
「うむ。ではそれをこちらに寄こせ」
「お言葉のままに……とでも言うと思ったか!」
「!?」
ベキベキベキ
その悪魔は俺達の目の前で門を握りつぶす。
「貴様!」
次の瞬間、フルーレティの手によってその悪魔は八つ裂きにされた。
「へ……へへ。我が主は……ベルゼビュート様の……み……貴様達にこれを渡すぐらいな……ら……こうして……」
悪魔は息絶えた。
僅かな沈黙の後、フルーレティが口を開く。
「……敵とはいえ見事な忠義である。手厚く葬ってやれ」
「やる事?」
マリーニャが俺から目を逸らしながら言う。
「チェインはまず服を着て下さい」
「は? 服……うわっ」
俺はベルゼビュートの攻撃で全身を粉々にされたんだった。
≪無限再生≫スキルで肉体は元通りになったが、着ていたローブはそうはいかない。
俺は咄嗟に前を隠す
「マリーニャ、代わりの服をお願いします」
「はい、はい」
マリーニャは呆れながら≪圧縮魔法≫で持ち運んでいる代えの衣服を取りだし、俺に渡す。
「そういえば前にもこんな事あったな」
プリンは初めて俺と出会った日の事を思い出して感慨にふけっている。
「忘れろプリン。あの時の俺の心の傷はまだ癒えていないんだぞ」
「なんだ、気にしてたのか。あははっ」
笑うプリンとは対照的に、シズハナは顔を紅潮させながら俯いている。
「馬鹿……」
俺が新しいパンツを履いていると、全身が真っ赤に染まったルッテが前に出て言った。
「私も着替えを……いえ、それよりもまず身体を洗いたいですわ。ご覧なさいまし、全身がチェインの体液塗れでベトベトですもの」
「言い方ぁ!」
マリーニャは水魔法を使えないので、フェリグスの仲間の女魔導士に魔法で水を出して貰って身体を洗う事になった。
「はいはい、男達は向こう行っててね」
俺やフェリグス達男連中はプリンに部屋の外に出される。
フルーレティとエリゴールは紳士だ。言われるまでもなく自主的に部屋の外に出ていた。
「へえ、ルッテって意外と……」
「な、何ですの!? 女同士だからってあまりじろじろ見ないで頂けます?」
「ふっふっふー、隙あり!」
「こ、こら、変なところを触らないで下さいまし」
部屋の外にまでルッテ達の声が響く。
「……チェイン君。相談があるのだが、君の≪リプレイス≫は確か容姿も交換できるそうだね」
「お断りします、フェリグスさん」
少ししてマリーニャ達が部屋から出てきた。
ルッテは身体が綺麗になってさっぱりとした表情をしている。
しかし髪を整える余裕はなかったのか、いつもの縦ロールではなく、まっすぐに下ろしている。
「ふむ……これはこれで……」
思わず感想が口からこぼれる。
「何ですのチェイン? さっきからじろじろと」
しまった、つい見入ってしまった。
「いや、髪型が変わると大分イメージも変わるなと思って」
「あら、チェインはストレートの方が好みでして? じゃあこれからそうしようかしら」
「え? ルッテの好きな髪形にすればいいと思うよ」
「……あら、そうですか。ではそうさせて頂きますわ」
ルッテはそれだけ言うと、不機嫌そうな顔で先へ行ってしまった。
「あれ? どうしたんだ? 何か怒ってる?」
「おいチェイン、あんたって奴は……」
プリンが心底失望したような目で俺を見る。
「チェインに足りないのは人としての心ですね」
悪魔の姿をしたマリーニャに人の心がないって言われた。
「馬鹿」
シズハナから俺に送られたのはたった一言だ。
一体何がどうなってるんだ?
◇◇◇◇
魔皇帝ベルゼビュートが死亡した事で、残りの悪魔達は全て降伏した。
俺達はその一体に門の在り処を聞き出す。
「門は宝物庫の中にあります。どうぞこちらへ……」
俺達はその悪魔について近いある宝物庫へと向かう。
厳重に封印されている扉の鍵を開け、中に入るとそこには夥しい数の金銀財宝が敷き詰められていた。
「これは……アフガリア帝国が所持していた金剛石の髑髏だ。こっちのは古代エイリーク王朝の王の亡き骸が収められていたというプラチナの棺……何れもベルゼビュート軍の襲撃によって奪い去られていた人類の鈺だ」
フェリグスはフルーレティに向き直り、真剣な眼差しで言う。
「これらは全て戦利品としてあなた方の所有物となるのが筋だが、どうか一部でも我々に返却願えないだろうか。我々人間が何百、何千年をかけて継承してきた技術の結晶、鈺なのだ」
フルーレティは首を横に振って答える。
「一部だと? それはできぬ相談だな」
「くっ、そうか……いや、仕方がない。無理を言って済まなかったな」
「我らが必要なのは門だけだ。それ以外はいらぬ。全て持ち帰るがいい」
「……! 新たなる魔界の王フルーレティよ、人類を代表して感謝の意を表する」
フェリグスは拳を胸の前に置き頭を下げ、敬礼の姿勢を取る。
「うむ。では我らは門を回収するとしよう。どこにある?」
「はい、こちらです」
悪魔は宝物庫の奥から一つの魔道具を持ちだしてきた。
それはディハールで見たものと同じ形状をしている。
「うむ。ではそれをこちらに寄こせ」
「お言葉のままに……とでも言うと思ったか!」
「!?」
ベキベキベキ
その悪魔は俺達の目の前で門を握りつぶす。
「貴様!」
次の瞬間、フルーレティの手によってその悪魔は八つ裂きにされた。
「へ……へへ。我が主は……ベルゼビュート様の……み……貴様達にこれを渡すぐらいな……ら……こうして……」
悪魔は息絶えた。
僅かな沈黙の後、フルーレティが口を開く。
「……敵とはいえ見事な忠義である。手厚く葬ってやれ」
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