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第34話 鈺収集家
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俺達は約一ヶ月ぶりにクリムドに帰ってきた。
「やっぱりこの町は落ち着きますね。もはや第二の故郷です」
「あたしはおやっさんの所に行ってくるよ。じゃあまた後でな」
まずプリンが武器の作成を依頼する為に一人でダンガルさんの工房へ向かう。
その間に俺とマリーニャとルッテの三人はギルドへ行き、掲示板に貼られたクエストをチェックする。
「ゴブリン討伐……これは町長からか。今回の件とは関係なさそうだな」
「迷いの森で魔法のキノコの回収……これも関係なさそうですわね」
「隣町の武器屋まで鉄の剣20個の配達……こんなクエストばかりですね」
他の冒険者パーティが受注済みのものも含めて一通りのクエストを確認したが、特に怪しいものは見つからない。
俺達は肩透かしを食らった様な気持ちになった。
「ま、そう簡単には見つからないか。今日のところはこれで引き揚げて、また明日にでも新たなクエストが追加されていれば確認をしよう」
「チェイン、ちょっと待って」
ギルドを出てプリンと合流しようとする俺をマリーニャが引き止める。
「まだ掲示板に貼られていないクエストがあるかもしれません。念の為聞いてみましょう」
マリーニャは受付嬢のカテリーさんの所へ行き確認をする。
「未掲載のクエストですか。確か今朝届いたばかりのものがひとつありますよ。ちょっと待っていて下さい」
カテリーさんは事務室へ行き、一枚の依頼書を持ってきた。
俺達は依頼書を受け取り目を通す。
「なになに……依頼主、リッキー辺境伯。クエスト内容はクリムドの北に位置する廃墟ミリタに眠っているという古文書の回収。報酬は金貨1枚。古文書の状態によってはさらに追加報酬も検討する。なお、古文書の内容については秘匿とする事」
ミリタは100年程前に魔王軍の侵攻によって滅びた城砦都市だ。
その後魔王は勇者によって討たれたが、完膚なきまでに破壊し尽くされたその町は戦後も復興される事はなかった。
目的の古文書は、当時の王国軍の指揮官フーリン将軍の屋敷跡の地下倉庫に眠っているという。
リッキー辺境伯はここ数年で頭角を現してきた貴族で、現在は王国の東側にある広大な領地を治めている。
ルッテの話では、貴族内での立ち位置は不明な点が多く、珍しいお宝───即ち鈺を好んで収集しているという噂がある人物だ。
「あからさまに怪しいですね……」
依頼書を食い入るように見ている俺達に、カテリーは首をかしげながら意見する。
「でも、かなり低レベルの冒険者パーティ向けのクエストですよこれ。【フルーレティ】の皆さんのレベルでは物足りないかと」
推奨レベルの項目を確認すると、せいぜいレベル10の冒険者向けのクエストだ。
マリーニャ達から見れば子供のおつかいの様なものだろう。
ここにレベル1の鈺魔導士がいるんだけどな。
しかしクエストを受ける事が目的ではない。
俺達は互いに目配せをして軽く頷き、全員の考えを確認する。
表向きは難易度が低すぎる事を理由に受注を見送る旨をカテリーさんに伝えた。
この後でこのクエストを受ける冒険者には悪いが、依頼主の手に渡る前に先回りしてこのアイテムを回収しよう。
カテリーさんにお礼を言ってギルドを出ると、プリンと合流する為にダンガルさんの工房へと足を運んだ。
「おやっさんこんにちは」
「よう、マリーニャにルッテ、チェイン。プリンなら奥にいるぜ。今日はシズハナちゃんはいないのか?」
工房内にダンガルさんの活気のある声が木霊する。
俺達はプリンがいる工場の奥へ歩きながらダンガルさんと談笑をする。
「シズハナは仕事で別行動中です。戻ったら顔を出させますよ。ところでプリンの新しい武器は決まりました?」
「おうよ。この死霊使いの鴉の鈎爪の切れ味の鋭さはあんたらも知ってるだろ。こいつを加工して棒の先に三つ繋げる」
「東方の武器三尖両刃刀ってやつだ。そのまま薙ぎ払ってもいいし、敵に突き刺すと一度に三つも穴が開く」
奥からプリンが出てきて流れる様に武器の説明を引き継ぐ。
プリンとダンガルさんが鼻息を荒げて武器の解説を続けているが、あまりゆっくりはしていられない。
適当なところで話を切り上げさせて、プリンに廃墟ミリタへ向かう旨を伝える。
「お、こりゃまた絶妙なタイミングで怪しげなクエストが見つかったものだな」
プリンは工房の壁に立てかけてあった鈎鎌鎗を拾い上げる。
「それではおやっさん、また3日程空けますのでプリンの武器の件宜しくお願いしますね」
「おうよ、帰ってくる頃には三尖両刃刀が出来上がってると思うぜ。面白い素材を見つけたらまた持ってきてくれ」
俺達は工房を出るとクリムド商会で遠征の準備をし、レンタルした馬車で廃墟ミリタへ向けて出発した。
廃墟ミリタへは馬車で片道1日程度だ。
廃墟にはどんな魔物が生息しているか分からない。
推奨レベルよりも強い魔物が隠れている事もある。
それに今回は探知役のシズハナがいない。
特にレベル1の俺は油断をすると命に関わる。
慎重にいこう。
「やっぱりこの町は落ち着きますね。もはや第二の故郷です」
「あたしはおやっさんの所に行ってくるよ。じゃあまた後でな」
まずプリンが武器の作成を依頼する為に一人でダンガルさんの工房へ向かう。
その間に俺とマリーニャとルッテの三人はギルドへ行き、掲示板に貼られたクエストをチェックする。
「ゴブリン討伐……これは町長からか。今回の件とは関係なさそうだな」
「迷いの森で魔法のキノコの回収……これも関係なさそうですわね」
「隣町の武器屋まで鉄の剣20個の配達……こんなクエストばかりですね」
他の冒険者パーティが受注済みのものも含めて一通りのクエストを確認したが、特に怪しいものは見つからない。
俺達は肩透かしを食らった様な気持ちになった。
「ま、そう簡単には見つからないか。今日のところはこれで引き揚げて、また明日にでも新たなクエストが追加されていれば確認をしよう」
「チェイン、ちょっと待って」
ギルドを出てプリンと合流しようとする俺をマリーニャが引き止める。
「まだ掲示板に貼られていないクエストがあるかもしれません。念の為聞いてみましょう」
マリーニャは受付嬢のカテリーさんの所へ行き確認をする。
「未掲載のクエストですか。確か今朝届いたばかりのものがひとつありますよ。ちょっと待っていて下さい」
カテリーさんは事務室へ行き、一枚の依頼書を持ってきた。
俺達は依頼書を受け取り目を通す。
「なになに……依頼主、リッキー辺境伯。クエスト内容はクリムドの北に位置する廃墟ミリタに眠っているという古文書の回収。報酬は金貨1枚。古文書の状態によってはさらに追加報酬も検討する。なお、古文書の内容については秘匿とする事」
ミリタは100年程前に魔王軍の侵攻によって滅びた城砦都市だ。
その後魔王は勇者によって討たれたが、完膚なきまでに破壊し尽くされたその町は戦後も復興される事はなかった。
目的の古文書は、当時の王国軍の指揮官フーリン将軍の屋敷跡の地下倉庫に眠っているという。
リッキー辺境伯はここ数年で頭角を現してきた貴族で、現在は王国の東側にある広大な領地を治めている。
ルッテの話では、貴族内での立ち位置は不明な点が多く、珍しいお宝───即ち鈺を好んで収集しているという噂がある人物だ。
「あからさまに怪しいですね……」
依頼書を食い入るように見ている俺達に、カテリーは首をかしげながら意見する。
「でも、かなり低レベルの冒険者パーティ向けのクエストですよこれ。【フルーレティ】の皆さんのレベルでは物足りないかと」
推奨レベルの項目を確認すると、せいぜいレベル10の冒険者向けのクエストだ。
マリーニャ達から見れば子供のおつかいの様なものだろう。
ここにレベル1の鈺魔導士がいるんだけどな。
しかしクエストを受ける事が目的ではない。
俺達は互いに目配せをして軽く頷き、全員の考えを確認する。
表向きは難易度が低すぎる事を理由に受注を見送る旨をカテリーさんに伝えた。
この後でこのクエストを受ける冒険者には悪いが、依頼主の手に渡る前に先回りしてこのアイテムを回収しよう。
カテリーさんにお礼を言ってギルドを出ると、プリンと合流する為にダンガルさんの工房へと足を運んだ。
「おやっさんこんにちは」
「よう、マリーニャにルッテ、チェイン。プリンなら奥にいるぜ。今日はシズハナちゃんはいないのか?」
工房内にダンガルさんの活気のある声が木霊する。
俺達はプリンがいる工場の奥へ歩きながらダンガルさんと談笑をする。
「シズハナは仕事で別行動中です。戻ったら顔を出させますよ。ところでプリンの新しい武器は決まりました?」
「おうよ。この死霊使いの鴉の鈎爪の切れ味の鋭さはあんたらも知ってるだろ。こいつを加工して棒の先に三つ繋げる」
「東方の武器三尖両刃刀ってやつだ。そのまま薙ぎ払ってもいいし、敵に突き刺すと一度に三つも穴が開く」
奥からプリンが出てきて流れる様に武器の説明を引き継ぐ。
プリンとダンガルさんが鼻息を荒げて武器の解説を続けているが、あまりゆっくりはしていられない。
適当なところで話を切り上げさせて、プリンに廃墟ミリタへ向かう旨を伝える。
「お、こりゃまた絶妙なタイミングで怪しげなクエストが見つかったものだな」
プリンは工房の壁に立てかけてあった鈎鎌鎗を拾い上げる。
「それではおやっさん、また3日程空けますのでプリンの武器の件宜しくお願いしますね」
「おうよ、帰ってくる頃には三尖両刃刀が出来上がってると思うぜ。面白い素材を見つけたらまた持ってきてくれ」
俺達は工房を出るとクリムド商会で遠征の準備をし、レンタルした馬車で廃墟ミリタへ向けて出発した。
廃墟ミリタへは馬車で片道1日程度だ。
廃墟にはどんな魔物が生息しているか分からない。
推奨レベルよりも強い魔物が隠れている事もある。
それに今回は探知役のシズハナがいない。
特にレベル1の俺は油断をすると命に関わる。
慎重にいこう。
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