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第13話 再会

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「チェイン、てめえ生きてやがったのか。悪運が強い奴だな」

 鍛冶屋を出た後、大通りを歩いて時間を潰していると馴染みのある声が聞こえてきた。

 振り向くと、【ヘルクレス】の面々がそこにいた。

「チェイン、あんたが冒険者喰いアドベントイーターに引っ掛かって落ちていく時の顔、傑作だったわよ」
「なんだその顔は、あの時の事まだ怒ってるのか?なんならギルドに訴えてみるか?ま、俺達がお前を陥れた証拠なんかどこにもねえから無駄だろうけどな」

「皆さん止めましょうよ……」

 オロオロと右往左往しているプラリスを横目に、ラメアとアノムスも加わって俺を挑発する。

「チェイン、何だこいつら?」

 いきなり絡んできたジェラルド達に不快感を示しつつ、プリンが尋ねる。

「彼らが俺が此間こないだまで所属していた【ヘルクレス】のメンバーさ」

「ああ、こいつらが例の……」

 プリンは腕を組み、ジェラルド達に侮蔑の眼差しを向ける。

「ジェラルド、丁度いいや。俺もお前を探していたんだ。先日の借りを返そうと思ってね」

「何だとコラ。雑用係風情が何だその口のきき方は」

「ジェラルドさんもチェインさんも落ち着いて、喧嘩は駄目です」

 プラリスが俺達を仲裁しようとするが、あんな目に遭わされて黙っていられるほど俺はお人よしではない。
 大通りの真ん中で睨み合いが続く。

「喧嘩だ!【ヘルクレス】と【フルーレティ】の奴らが揉めてるぞ」

 火事と喧嘩はこの町の花だ。
 騒ぎを見ていた通行人の声で、俺達の周りには野次馬が集まってきた。

 冒険者という人種は血の気が多い奴ばかりだ。
 喧嘩などは日常茶飯事である。
 天下の往来で斬り合いなど始めたら当然即座に憲兵に取り押さえられるだろうが、ギルドではお互い合意の上での決闘行為が認められている。
 合法的に報復する一番手っ取り早い方法だ。

「ジェラルド、お前に決闘を申し込む!」
「てめえがか?おもしれえ、公衆の面前でてめえをぶっ殺してやる」

 レベル1の俺が無謀にもレベル50台のジェラルドに決闘を申し込む様は、野次馬達の目にはさぞかし滑稽に映っただろう。
 や一部の人間以外、俺が習得した魔法の事を知らないからな。
 しかし、ジェラルドだけをぶちのめしても俺の気は収まらない。
 俺は決闘の条件を追加した。

「俺が決闘を申し込むのはジェラルドではなく、【ヘルクレス】に対してだ」

「ああ?【ヘルクレス】対【フルーレティ】のチーム戦をやろうってのか。いいだろう、そこの小娘どももまとめてぶっ潰してやるよ」

「上等だ、やってみろ」
「チェインはもう私達の大切な仲間です。侮辱する事は許しません」
「私こういう性根が腐った方は大嫌いですわ。少し懲らしめて差し上げましょう」
「この人達、私達より弱い。余裕で勝てる」

 さっきからジェラルド達の態度に対して苛立ちが最高潮に達している【フルーレティ】の皆もやる気充分だ。
 だがそうじゃない。俺は皆を手で制止する。

「違う違う、が【ヘルクレス】に決闘を申し込むんだ。皆は手を出さないで欲しい」

「何だと!?ふざけてるのかてめえ」

 俺の一言に、ジェラルドはゆでタコのように顔を紅潮させて激高した。

「チェイン、確か≪リプレイス≫は対象となる一体にしか使えない魔法ですよね。四人も相手にするなんて、大丈夫なんですか?」

 マリーニャが心配そうに眉をひそめるが、もちろん勝算があっての事だ。
 俺は微笑みながらサムズアップで答える。

「成程、そういう事ですね。分かりましたチェインの好きな様にして下さい」

 マリーニャは俺の作戦に気づいたのか、他の仲間達に耳打ちをして後ろに下がった。

「舐められたものだな。まあいい、今更冗談でしたじゃ通らねえぜ。ここでてめえを公開処刑してやる。ほら、プラリスお前もさっさと準備しな」

「は、はい……」

 プラリスには個人的に怨みは全くないんだけど、【ヘルクレス】と決闘すると宣言をしてしまった以上仕方がない。

 俺と、【ヘルクレス】メンバーの計5人は自らの魔法珠をかざして宣言する。

「挑戦者チェイン、対するはジェラルド、アノムス、ラメア、プラリスの四人。決闘デュエルスタート!」

 ジャーン、ジャーン!

 決闘が魔法珠を通してギルドに承認されると、5人の魔法珠からドラを鳴らすような音が鳴り響いた。
 決闘開始の合図だ。

 相手を戦闘不能にするか、降参させた方が勝利だ。
 万が一相手を殺害してしまっても、事故として片づけられる。
 そして、敗北した者は勝利者の言う事に従わなければならない。
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