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第4話 聖女の昼ごはん
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「それでは私は陛下に報告に行きますので、ごゆっくり食事をお楽しみください。また後程お迎えに参ります」
お城の前で騎士アスタリスと別れた私は魔導士達を連れて食堂へやってきた。
「お待ちしておりました聖女様。どうぞこちらのお席へ。我々が腕によりをかけて作らせていただきました。聖女様のお口に合えばよろしいのですが」
「ありがとうございます。魔導士さん達と一緒にお昼ご飯を食べようと思いますが、構いませんよね?」
「はい、聖女様がそう仰るのならば」
料理長の案内で席に座ると、テーブルの上には見た事もない料理が大量に並べられていた。
まるで満漢全席だ。とても一人で食べきれる量じゃない。
でもこれはこれで丁度良かった。
「聖女様とお食事ができるなんて、我々は果報者です」
魔導士の中には、感激のあまり涙を流す者までいる。
やはり食事は大勢でする方が楽しい。
アスタリスさんも一緒に食べればよかったのに。
私は魔導士達にこの世界の事をいろいろ聞きながらひと時の休息を楽しんだ。
「───という訳で、この国を観光するならば西にある水の都ペレーケイプは外せません。あの景観は一度見たら忘れませんよ」
「食事を楽しむならやはり南にある港町エリコですね。魚介類の鮮度が違います」
ふむふむ、やはり観光名所の情報は現地人に聞くに限る。
ひと段落したら是非行ってみよう。
そういえば、礼拝堂で特訓をしている間に気になった事がある。ついでに聞いてみよう。
「どうしてわざわざ聖女候補を異世界から呼び寄せるんですか?この世界の人じゃダメな理由でもあるんですか?」
魔導士達は一瞬困った表情をして顔を見合わせた後、意を決したように魔導士のリーダーが口を開く。
「聖女様に嘘や隠し事はできませんね。正直にお答えしますがお気を悪くなさらないでください」
何か聞いちゃいけないことだったのかも。
「初代国王、クラウディア一世の時代のお話です。当時も今と同じように魔族との間で大規模な戦争が勃発していました。クラウディア一世は魔族に対抗する為、マッスイーヴ教会の一人の修道女に、神に祈りを捧げて神のお力をその身に宿すよう命じました」
「へえ、そこまでは私と同じですね」
「神のお力を宿した修道女は聖女となり、その力(物理)で魔族の軍団を駆逐しました。そこまでは良かったのですが……」
(まさか、神の力に身体が耐えられずに自滅してしまったとか言うんじゃないでしょうね?)
「自らの力に溺れたその聖女に野心が芽生え、やがて王国への反逆を企てたのです」
(そっちか!)
「数年に及ぶ王国軍と聖女の戦いは熾烈を極めました。多大な犠牲の上、最終的に勝利をしたのは王国軍でした。我々はこの出来事を聖女の乱と呼んでいます」
(聖女とは一体)
「それで、結局どうして異世界から聖女を召喚することになったんですか?」
「実は異世界の人間は我々の魔法でいつでも元の世界に送り返せるのです。マッスイーヴ神のお力はこの世界でしか振るう事はできませんので、元の世界に帰った聖女はただの人になりますね」
「ああ、つまりもし私がその修道女のように野心を持ったら、強制的に元の世界に送り返されるという事ですね」
「そういう事になりますね。でも我々は聖女様の事を信じておりますから」
「でもよくそんなことまで正直に話してくれましたね。黙っていた方が良かったのでは?」
「聖女様は我々の命の恩人です。だからこそ全てを包み隠さずに申し上げました」
まあ、確かに私にはそんな事をするつもりはさらさらないけど。
じゃあついでに他にも気になった事を聞いてみよう。
「話は変わりますが、リーデルさんとセレーネさんだっけ?あなた達付き合ってるんですか?」
リーデルとセレーネと呼ばれた二人の魔導士は突然の質問に食べている物を噴き出した後必死で否定をする。
「な、聖女様突然何を言い出すんですか」
「リーデルとはただの幼馴染で、そういう関係ではありません!」
「へえ、でも礼拝堂の中にあなたたちの会話が聞こえてきましたよ。ただの幼馴染のようには聞こえませんでしたけど。聖女に嘘をついてはいけませんよ?」
「ち、違います!神に誓って付き合ってはいません!」
二人は顔を真っ赤にして否定をする。
ふむふむなるほど。まだそういう関係ではないという事ね。
二人がお互いを意識しているのは間違いない。こういう時だけは私の勘は働いてくれる。これは今後の展開が楽しみだ。
「そういう聖女様はどうなんですか?」
予想外の反撃を受けた。
生まれてこの方彼氏とかいたことないよ、ちくしょうめ。
「ええと、まあうん、向こうではそれなりにモテてましたよ!」
私は適当に誤魔化すのが精いっぱいだった。
それにしてもどの料理もおいしい。正直異世界の料理を舐めてた。
特にこの刺身は別格だ。
口に入れた途端にとろけるように舌の上に旨味が広がっていく。
さらにこのソースの酸味が食欲を掻き立てる。
「料理長さん、これは何という魚なんですか?」
「聖女様これはヌヌメメポケポケホマリの刺身です」
「ヌヌメメ……何?」
「ヌヌメメポケポケホマリです。今が旬の海魚ですね」
この世界の人と私が会話できるのは、召喚された時に魔導士達に翻訳魔法をかけてもらったからだと聞いた。
しかし固有名詞や私の世界には存在しないものは翻訳しようがないので、発音がそのまま聞こえるそうだ。
逆にこの世界の言葉がどんなものか興味を持ってしまったので、一旦翻訳魔法を解除してもらう事にした。
「聖女様、それでは魔法を解除します」
「ええ、お願いします」
魔導士が私の額の辺りに手をかざして呪文を唱える。
すぐに翻訳魔法の解除は終わったらしい。
さあ、何て聞こえるのかな?
「セータガワ サイジョ トーバ スワーイッテ シノマーカリカ イルコーカー」
「ワーン コガーマリ デ チャアンース イース キデーネ タヌワシワース」
……なるほど、全然わかんない。
私が知ってるどの言語とも違う。
「もういいですよ。もう一度翻訳魔法をかけて下さい」
「ウキョーキョ クートリノッヨ キャトナキョウ キャククカキーク カトーキョウクハーダ」
しまった、私がもういいと言った言葉自体が伝わってない。
私はいろいろ考えた末、身振り手振りのボディランゲージでもういいと伝える事にした。
結局最後に頼れるのは魔法ではなく物理のようだ。
食事が終わる頃、騎士アスタリスが食堂まで私を迎えに来た。
「聖女様、食後の運動をしませんか」
お城の前で騎士アスタリスと別れた私は魔導士達を連れて食堂へやってきた。
「お待ちしておりました聖女様。どうぞこちらのお席へ。我々が腕によりをかけて作らせていただきました。聖女様のお口に合えばよろしいのですが」
「ありがとうございます。魔導士さん達と一緒にお昼ご飯を食べようと思いますが、構いませんよね?」
「はい、聖女様がそう仰るのならば」
料理長の案内で席に座ると、テーブルの上には見た事もない料理が大量に並べられていた。
まるで満漢全席だ。とても一人で食べきれる量じゃない。
でもこれはこれで丁度良かった。
「聖女様とお食事ができるなんて、我々は果報者です」
魔導士の中には、感激のあまり涙を流す者までいる。
やはり食事は大勢でする方が楽しい。
アスタリスさんも一緒に食べればよかったのに。
私は魔導士達にこの世界の事をいろいろ聞きながらひと時の休息を楽しんだ。
「───という訳で、この国を観光するならば西にある水の都ペレーケイプは外せません。あの景観は一度見たら忘れませんよ」
「食事を楽しむならやはり南にある港町エリコですね。魚介類の鮮度が違います」
ふむふむ、やはり観光名所の情報は現地人に聞くに限る。
ひと段落したら是非行ってみよう。
そういえば、礼拝堂で特訓をしている間に気になった事がある。ついでに聞いてみよう。
「どうしてわざわざ聖女候補を異世界から呼び寄せるんですか?この世界の人じゃダメな理由でもあるんですか?」
魔導士達は一瞬困った表情をして顔を見合わせた後、意を決したように魔導士のリーダーが口を開く。
「聖女様に嘘や隠し事はできませんね。正直にお答えしますがお気を悪くなさらないでください」
何か聞いちゃいけないことだったのかも。
「初代国王、クラウディア一世の時代のお話です。当時も今と同じように魔族との間で大規模な戦争が勃発していました。クラウディア一世は魔族に対抗する為、マッスイーヴ教会の一人の修道女に、神に祈りを捧げて神のお力をその身に宿すよう命じました」
「へえ、そこまでは私と同じですね」
「神のお力を宿した修道女は聖女となり、その力(物理)で魔族の軍団を駆逐しました。そこまでは良かったのですが……」
(まさか、神の力に身体が耐えられずに自滅してしまったとか言うんじゃないでしょうね?)
「自らの力に溺れたその聖女に野心が芽生え、やがて王国への反逆を企てたのです」
(そっちか!)
「数年に及ぶ王国軍と聖女の戦いは熾烈を極めました。多大な犠牲の上、最終的に勝利をしたのは王国軍でした。我々はこの出来事を聖女の乱と呼んでいます」
(聖女とは一体)
「それで、結局どうして異世界から聖女を召喚することになったんですか?」
「実は異世界の人間は我々の魔法でいつでも元の世界に送り返せるのです。マッスイーヴ神のお力はこの世界でしか振るう事はできませんので、元の世界に帰った聖女はただの人になりますね」
「ああ、つまりもし私がその修道女のように野心を持ったら、強制的に元の世界に送り返されるという事ですね」
「そういう事になりますね。でも我々は聖女様の事を信じておりますから」
「でもよくそんなことまで正直に話してくれましたね。黙っていた方が良かったのでは?」
「聖女様は我々の命の恩人です。だからこそ全てを包み隠さずに申し上げました」
まあ、確かに私にはそんな事をするつもりはさらさらないけど。
じゃあついでに他にも気になった事を聞いてみよう。
「話は変わりますが、リーデルさんとセレーネさんだっけ?あなた達付き合ってるんですか?」
リーデルとセレーネと呼ばれた二人の魔導士は突然の質問に食べている物を噴き出した後必死で否定をする。
「な、聖女様突然何を言い出すんですか」
「リーデルとはただの幼馴染で、そういう関係ではありません!」
「へえ、でも礼拝堂の中にあなたたちの会話が聞こえてきましたよ。ただの幼馴染のようには聞こえませんでしたけど。聖女に嘘をついてはいけませんよ?」
「ち、違います!神に誓って付き合ってはいません!」
二人は顔を真っ赤にして否定をする。
ふむふむなるほど。まだそういう関係ではないという事ね。
二人がお互いを意識しているのは間違いない。こういう時だけは私の勘は働いてくれる。これは今後の展開が楽しみだ。
「そういう聖女様はどうなんですか?」
予想外の反撃を受けた。
生まれてこの方彼氏とかいたことないよ、ちくしょうめ。
「ええと、まあうん、向こうではそれなりにモテてましたよ!」
私は適当に誤魔化すのが精いっぱいだった。
それにしてもどの料理もおいしい。正直異世界の料理を舐めてた。
特にこの刺身は別格だ。
口に入れた途端にとろけるように舌の上に旨味が広がっていく。
さらにこのソースの酸味が食欲を掻き立てる。
「料理長さん、これは何という魚なんですか?」
「聖女様これはヌヌメメポケポケホマリの刺身です」
「ヌヌメメ……何?」
「ヌヌメメポケポケホマリです。今が旬の海魚ですね」
この世界の人と私が会話できるのは、召喚された時に魔導士達に翻訳魔法をかけてもらったからだと聞いた。
しかし固有名詞や私の世界には存在しないものは翻訳しようがないので、発音がそのまま聞こえるそうだ。
逆にこの世界の言葉がどんなものか興味を持ってしまったので、一旦翻訳魔法を解除してもらう事にした。
「聖女様、それでは魔法を解除します」
「ええ、お願いします」
魔導士が私の額の辺りに手をかざして呪文を唱える。
すぐに翻訳魔法の解除は終わったらしい。
さあ、何て聞こえるのかな?
「セータガワ サイジョ トーバ スワーイッテ シノマーカリカ イルコーカー」
「ワーン コガーマリ デ チャアンース イース キデーネ タヌワシワース」
……なるほど、全然わかんない。
私が知ってるどの言語とも違う。
「もういいですよ。もう一度翻訳魔法をかけて下さい」
「ウキョーキョ クートリノッヨ キャトナキョウ キャククカキーク カトーキョウクハーダ」
しまった、私がもういいと言った言葉自体が伝わってない。
私はいろいろ考えた末、身振り手振りのボディランゲージでもういいと伝える事にした。
結局最後に頼れるのは魔法ではなく物理のようだ。
食事が終わる頃、騎士アスタリスが食堂まで私を迎えに来た。
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