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陳蔡之厄黒炎山(黒炎山での災難)
051:狐死首丘(九)
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『彩鉱門が禁忌の鉱物を手にした』
当時の彩鉱門には二つの過ちがあった。
いわれのない噂と思われていたことは、実は真実であったこと。
ただ、彩鉱門が『禁忌の鉱物を手にした』という点においては少々語弊がある。
金行使いである彩鉱門は特に鉱石などの扱いに長け、貴重な鉱石を使って沢山の霊剣を生み出した。
しかし、彩鉱門の役目はそれだけではない。
彼らの真の役目。それは『睡龍で一番貴重で珍しい鉱石を取り扱う技術』を後世に伝えていくこと。禁忌というのは彩鉱門以外の者たちに向けた話であって、その鉱物を扱うことこそが彩鉱門の使命であったのだ。
――それは創世と共に生まれ、創世から遥かなる未来の終末に至るまで、過去や未来、事象、現象がすべて記憶されていると伝えられている。
無限に続くそれらの記憶のすべてを神はひとつの鉱石へと変えて、原始の谷の奥深くに封じ込めた。
触れれば恒久の叡智が手に入り、この世の全てを知ることができる。
宝器を造れば誰も太刀打ちできないほどの力を手に入れることができる。
いつしか人々はそのように語り継ぐようになった。
その鉱石の名は『万晶鉱』という。
奇跡の鉱石を鍛えることができるのは、金行使いの中でも古来より万晶鉱を取り扱う技術を、門外不出で伝え続ける唯一無二の門派である彩鉱門のみ。
恒凰宮と翳冥宮の恒翳双宮は、古来より万晶鉱が眠る原始の谷を守る役目を持っており、通常いかなることがあっても谷を開放することはない。
にもかかわらず彩鉱門は原始の谷にある、決して手に入れることができないはずの鉱石を手に入れていた。
――それがひとつめ。
さらにその鉱石を使って、神にも等しい力を持った道具を生み出してしまった。
――それが、ふたつめの過ち。
表向き彩鉱門はいわれのない噂によって姿を消したということになっている。しかし実はその裏にはもう一つ、隠された事実があるという。
彩鉱門が万晶鉱を手に入れたという話は、秘密だったにもかかわらず驚くほどの速さで界隈に伝わってしまった。さらにそれだけではなく、ほどなくして彩鉱門に恐るべき神託が下りたのだ。
『人の領分を超えた行いをした彩鉱門は滅びるだろう』
当時の彩鉱門の掌門――前掌門は震えあがった。彼らは既に万晶鉱を使い、いくつもの宝器を完成させ、さらには金持ちや著名な掌門たちに宝器を売りさばいていたからだ。
はじめはまさかと思っていたものの、宝器や万晶鉱を羨んだ門派の者たちからの圧は強く、嫌がらせも相次ぐようになった。
このままでは何が起こるか分からない――。
そう思った彩鉱門は、全てを捨て慌てて黒炎山へと移り住むことにした。しかしその後、彩鉱門では突如として原因不明の流行り病が蔓延し、半数以上の門弟が命を落とした。前掌門は神を畏れ、怯えるあまりじきに体を壊して亡くなってしまったという。しかし毎日懺悔を欠かさず許しを懇願したおかげなのか、掌門の死を最後にそれ以上の災いが起こることはなくなった。
* * *
「ま。からくりは簡単なことで、火龍が現れたとき、睡龍の前身である国が三つ吹っ飛んだ。流石に緊急事態だってことで原始の谷の封印が解かれて、彩鉱門は万晶鉱を採掘し各門派に作った宝器の数々を融通した。盟主の瞋九龍が持ってる槍だって彩鉱門が造ったものさ。…………で、そんときに使った万晶鉱の残りをこっそり拝借して使ってた――ってだけなんだけどな」
今夜話すことは絶対口外しないことを条件に、彩藍方は煬鳳たちに彩鉱門の真実を語ってくれた。何故この話を聞くかといえば、煬鳳の霊力をどうにかするためにこの話が重要な鍵を握っているからだ。
それもこれも、彩鉱門の事情を知る凰黎が頼み込んで、ようやく掌門の許しを得たお陰。
しかし、あっけらかんと重大な彩鉱門の秘密を喋った彩藍方に、そして何よりもその真実に煬鳳たちは開いた口が塞がらず、次の言葉が出てこなかった。
(まあ、万晶鉱が手元に無かったら技術の伝承も難しいだろうし……)
万晶鉱が危険な代物であるのなら、扱える者たちのところに置いておくというのも分からなくもない。
真顔に戻った彩藍方は人差し指をピンと立て、己の眼前に掲げる。
「――で、ここからが本題だ。実は彩鉱門が秘密裏に万晶鉱を取り扱っていたってことは、一部の者なら知っていることだった。ってえのも、いま世に出ている宝器の大半は、万晶鉱によって作られたものだからなんだ」
「実は彩鉱門が秘密裏に万晶鉱を取り扱っていたってことは、一部の者なら知っていることだった。ってえのも、いま世に出ている宝器の大半は、万晶鉱によって作られたものだからなんだ」
強大な力を持つものは、素晴らしい宝器を所持している者も少なくはない。例えば、雷を呼び寄せる槍、炎を纏った剣、一瞬で敵を消し飛ばすようなものから、天候を変えることができるような代物まで、どれも一介の職人の力では到底作り上げることが不可能な代物だ。
しかし奇跡の力を持つ宝器を、彼らは一体どこで手に入れたのか?
――彩鉱門だ。
彼らは膨大な金を積み、またあるときは重大な約束事と引き換えに、それを持てば仙界の仙人たちとすら渡り合えるとまで言われる力を手に入れたのだ。いま、世に存在する宝器の中でも伝説に数えられるもの、その大半が万晶鉱を使っているという。
「ちょっと待てよ! 原始の谷の話は、ただのおとぎ話だろ? そんな凄い効果があるわけが……」
「信じるも信じないもお前の自由さ、煬鳳。でも、少なくともお前の隣にいる凰公子はそのおとぎ話を信じて、俺に万晶鉱のことを聞いてきたんだからな」
そう言った彩藍方は凰黎を見た。凰黎は夢見がちな性格ではないし、どちらかと言えば現実的な方だ。そんな彼がおとぎ話を信じるのは、意外だった。
いや、凰黎のことだ。もしかしたら万晶鉱について、何か確証を持っているのかもしれない。
「そもそも万晶鉱ってのは本当に不思議な鉱石で、見た目以上に厄介な構造をしている」
彩藍方は中庭に降りると枝を伸ばす竹に近寄った。まだ成長しきっていない若竹から数枚の葉をもぎ取ると、両手で重ね挟んでみせる。
「例えるならこんなふうに……何千もの折り重ねられた層が超圧縮されることで、通常では考えられないほどの硬度と、質量の何百倍何千倍もの膨大な情報を記録しておくことができるんだ。つまり万晶鉱の中には、原始の谷が生まれたときからずっと蓄え続けた力を内包しているってわけさ。だからその鉱石を使って鍛造した剣は、どんな剣よりも強い。そして類まれなる強大な効果が発揮できるってことなんだ」
彩藍方は煬鳳たちの目の前に、巻物のようなものを広げてみせた。その巻物はとても美しい装丁がなされていたが、惜しいことに手元のほうが破れている。
「見てくれ。これは万物を吸収することができる宝器で――万象図という。あ、破った部分は使用済みってこと。凰公子が期待する通り万晶鉱には無限の可能性がある。問題があるとすれば、彩鉱門が万晶鉱を手に入れたのは随分と昔の話で、いまそれを手に入れることはとても難しいことなんだ」
「では、万晶鉱を手に入れることはもう無理なのでしょうか?」
「確かに万晶鉱自体を手に入れることは相当難しい。すぐには思いつかない。……それで、凰公子。あんたは万晶鉱の剣が欲しいって言ってたよな」
「はい」
凰黎は迷うことなく彩藍方に頷いた。
「万晶鉱をすぐに手に入れることは難しいんだけど、万晶鉱の剣を持っているヤツなら心当たりがある」
「!」
煬鳳も、凰黎も同時に息を飲む。彩藍方は手元の記録を捲っているが、どうやら何か過去の記録を見ているようだ。
「その昔……まあまあ昔の話だ。恒凰宮のたっての願いで、万晶鉱の剣を二振り造ったことがある」
「何ですって……」
「掌門に掛け合って、過去の記録を全部調べてみたんだ。十八年前、間違いは絶対にない。たぶん宝剣として大切に保管されてるはずだから、恒凰宮の宮主に頼み込めば剣を借りることができるかもしれない」
「しかし……」
珍しく、凰黎の歯切れが悪い。何か躊躇っているように煬鳳には思えた。
(どうしたんだろ?)
普段の凰黎なら、煬鳳のためになることなら絶対に躊躇はしない。その彼が、少しばかり言葉を濁したのはかなり珍しいことだ。しかし凰黎と会ったばかりの彩藍方はそのようなことを知るはずもなく、煬鳳の心配をよそに語り続けている。
「一つ心配があるとすれば、原始の谷の守り手であるである恒凰宮が万晶鉱の剣を持ってることが公になると、恒凰宮のことを悪く言う奴が出るかもしれない。そう考えるとなかなか二つ返事では難しいかも……、でも見つかるか分からない万晶鉱を探すよりはまだマシだろ?」
凰黎はかなり長い沈黙を経て、ようやく言葉を絞り出した。
「確かに……。貴方の仰る通りです」
やはり凰黎の顔色は芳しくない。そして彼がこのような表情をするのを、煬鳳が見たのは初めてだった。
(何か不安があるのかな……)
聞こうか聞くまいか。しかしこの場所には彩藍方も一緒だ。そんなときに凰黎の悩みを尋ねるのは良くないだろう。せめて二人きりになったら聞いてみよう、それがいい。
煬鳳はそう決めると、彩藍方の話にもう一度耳を傾けた。
当時の彩鉱門には二つの過ちがあった。
いわれのない噂と思われていたことは、実は真実であったこと。
ただ、彩鉱門が『禁忌の鉱物を手にした』という点においては少々語弊がある。
金行使いである彩鉱門は特に鉱石などの扱いに長け、貴重な鉱石を使って沢山の霊剣を生み出した。
しかし、彩鉱門の役目はそれだけではない。
彼らの真の役目。それは『睡龍で一番貴重で珍しい鉱石を取り扱う技術』を後世に伝えていくこと。禁忌というのは彩鉱門以外の者たちに向けた話であって、その鉱物を扱うことこそが彩鉱門の使命であったのだ。
――それは創世と共に生まれ、創世から遥かなる未来の終末に至るまで、過去や未来、事象、現象がすべて記憶されていると伝えられている。
無限に続くそれらの記憶のすべてを神はひとつの鉱石へと変えて、原始の谷の奥深くに封じ込めた。
触れれば恒久の叡智が手に入り、この世の全てを知ることができる。
宝器を造れば誰も太刀打ちできないほどの力を手に入れることができる。
いつしか人々はそのように語り継ぐようになった。
その鉱石の名は『万晶鉱』という。
奇跡の鉱石を鍛えることができるのは、金行使いの中でも古来より万晶鉱を取り扱う技術を、門外不出で伝え続ける唯一無二の門派である彩鉱門のみ。
恒凰宮と翳冥宮の恒翳双宮は、古来より万晶鉱が眠る原始の谷を守る役目を持っており、通常いかなることがあっても谷を開放することはない。
にもかかわらず彩鉱門は原始の谷にある、決して手に入れることができないはずの鉱石を手に入れていた。
――それがひとつめ。
さらにその鉱石を使って、神にも等しい力を持った道具を生み出してしまった。
――それが、ふたつめの過ち。
表向き彩鉱門はいわれのない噂によって姿を消したということになっている。しかし実はその裏にはもう一つ、隠された事実があるという。
彩鉱門が万晶鉱を手に入れたという話は、秘密だったにもかかわらず驚くほどの速さで界隈に伝わってしまった。さらにそれだけではなく、ほどなくして彩鉱門に恐るべき神託が下りたのだ。
『人の領分を超えた行いをした彩鉱門は滅びるだろう』
当時の彩鉱門の掌門――前掌門は震えあがった。彼らは既に万晶鉱を使い、いくつもの宝器を完成させ、さらには金持ちや著名な掌門たちに宝器を売りさばいていたからだ。
はじめはまさかと思っていたものの、宝器や万晶鉱を羨んだ門派の者たちからの圧は強く、嫌がらせも相次ぐようになった。
このままでは何が起こるか分からない――。
そう思った彩鉱門は、全てを捨て慌てて黒炎山へと移り住むことにした。しかしその後、彩鉱門では突如として原因不明の流行り病が蔓延し、半数以上の門弟が命を落とした。前掌門は神を畏れ、怯えるあまりじきに体を壊して亡くなってしまったという。しかし毎日懺悔を欠かさず許しを懇願したおかげなのか、掌門の死を最後にそれ以上の災いが起こることはなくなった。
* * *
「ま。からくりは簡単なことで、火龍が現れたとき、睡龍の前身である国が三つ吹っ飛んだ。流石に緊急事態だってことで原始の谷の封印が解かれて、彩鉱門は万晶鉱を採掘し各門派に作った宝器の数々を融通した。盟主の瞋九龍が持ってる槍だって彩鉱門が造ったものさ。…………で、そんときに使った万晶鉱の残りをこっそり拝借して使ってた――ってだけなんだけどな」
今夜話すことは絶対口外しないことを条件に、彩藍方は煬鳳たちに彩鉱門の真実を語ってくれた。何故この話を聞くかといえば、煬鳳の霊力をどうにかするためにこの話が重要な鍵を握っているからだ。
それもこれも、彩鉱門の事情を知る凰黎が頼み込んで、ようやく掌門の許しを得たお陰。
しかし、あっけらかんと重大な彩鉱門の秘密を喋った彩藍方に、そして何よりもその真実に煬鳳たちは開いた口が塞がらず、次の言葉が出てこなかった。
(まあ、万晶鉱が手元に無かったら技術の伝承も難しいだろうし……)
万晶鉱が危険な代物であるのなら、扱える者たちのところに置いておくというのも分からなくもない。
真顔に戻った彩藍方は人差し指をピンと立て、己の眼前に掲げる。
「――で、ここからが本題だ。実は彩鉱門が秘密裏に万晶鉱を取り扱っていたってことは、一部の者なら知っていることだった。ってえのも、いま世に出ている宝器の大半は、万晶鉱によって作られたものだからなんだ」
「実は彩鉱門が秘密裏に万晶鉱を取り扱っていたってことは、一部の者なら知っていることだった。ってえのも、いま世に出ている宝器の大半は、万晶鉱によって作られたものだからなんだ」
強大な力を持つものは、素晴らしい宝器を所持している者も少なくはない。例えば、雷を呼び寄せる槍、炎を纏った剣、一瞬で敵を消し飛ばすようなものから、天候を変えることができるような代物まで、どれも一介の職人の力では到底作り上げることが不可能な代物だ。
しかし奇跡の力を持つ宝器を、彼らは一体どこで手に入れたのか?
――彩鉱門だ。
彼らは膨大な金を積み、またあるときは重大な約束事と引き換えに、それを持てば仙界の仙人たちとすら渡り合えるとまで言われる力を手に入れたのだ。いま、世に存在する宝器の中でも伝説に数えられるもの、その大半が万晶鉱を使っているという。
「ちょっと待てよ! 原始の谷の話は、ただのおとぎ話だろ? そんな凄い効果があるわけが……」
「信じるも信じないもお前の自由さ、煬鳳。でも、少なくともお前の隣にいる凰公子はそのおとぎ話を信じて、俺に万晶鉱のことを聞いてきたんだからな」
そう言った彩藍方は凰黎を見た。凰黎は夢見がちな性格ではないし、どちらかと言えば現実的な方だ。そんな彼がおとぎ話を信じるのは、意外だった。
いや、凰黎のことだ。もしかしたら万晶鉱について、何か確証を持っているのかもしれない。
「そもそも万晶鉱ってのは本当に不思議な鉱石で、見た目以上に厄介な構造をしている」
彩藍方は中庭に降りると枝を伸ばす竹に近寄った。まだ成長しきっていない若竹から数枚の葉をもぎ取ると、両手で重ね挟んでみせる。
「例えるならこんなふうに……何千もの折り重ねられた層が超圧縮されることで、通常では考えられないほどの硬度と、質量の何百倍何千倍もの膨大な情報を記録しておくことができるんだ。つまり万晶鉱の中には、原始の谷が生まれたときからずっと蓄え続けた力を内包しているってわけさ。だからその鉱石を使って鍛造した剣は、どんな剣よりも強い。そして類まれなる強大な効果が発揮できるってことなんだ」
彩藍方は煬鳳たちの目の前に、巻物のようなものを広げてみせた。その巻物はとても美しい装丁がなされていたが、惜しいことに手元のほうが破れている。
「見てくれ。これは万物を吸収することができる宝器で――万象図という。あ、破った部分は使用済みってこと。凰公子が期待する通り万晶鉱には無限の可能性がある。問題があるとすれば、彩鉱門が万晶鉱を手に入れたのは随分と昔の話で、いまそれを手に入れることはとても難しいことなんだ」
「では、万晶鉱を手に入れることはもう無理なのでしょうか?」
「確かに万晶鉱自体を手に入れることは相当難しい。すぐには思いつかない。……それで、凰公子。あんたは万晶鉱の剣が欲しいって言ってたよな」
「はい」
凰黎は迷うことなく彩藍方に頷いた。
「万晶鉱をすぐに手に入れることは難しいんだけど、万晶鉱の剣を持っているヤツなら心当たりがある」
「!」
煬鳳も、凰黎も同時に息を飲む。彩藍方は手元の記録を捲っているが、どうやら何か過去の記録を見ているようだ。
「その昔……まあまあ昔の話だ。恒凰宮のたっての願いで、万晶鉱の剣を二振り造ったことがある」
「何ですって……」
「掌門に掛け合って、過去の記録を全部調べてみたんだ。十八年前、間違いは絶対にない。たぶん宝剣として大切に保管されてるはずだから、恒凰宮の宮主に頼み込めば剣を借りることができるかもしれない」
「しかし……」
珍しく、凰黎の歯切れが悪い。何か躊躇っているように煬鳳には思えた。
(どうしたんだろ?)
普段の凰黎なら、煬鳳のためになることなら絶対に躊躇はしない。その彼が、少しばかり言葉を濁したのはかなり珍しいことだ。しかし凰黎と会ったばかりの彩藍方はそのようなことを知るはずもなく、煬鳳の心配をよそに語り続けている。
「一つ心配があるとすれば、原始の谷の守り手であるである恒凰宮が万晶鉱の剣を持ってることが公になると、恒凰宮のことを悪く言う奴が出るかもしれない。そう考えるとなかなか二つ返事では難しいかも……、でも見つかるか分からない万晶鉱を探すよりはまだマシだろ?」
凰黎はかなり長い沈黙を経て、ようやく言葉を絞り出した。
「確かに……。貴方の仰る通りです」
やはり凰黎の顔色は芳しくない。そして彼がこのような表情をするのを、煬鳳が見たのは初めてだった。
(何か不安があるのかな……)
聞こうか聞くまいか。しかしこの場所には彩藍方も一緒だ。そんなときに凰黎の悩みを尋ねるのは良くないだろう。せめて二人きりになったら聞いてみよう、それがいい。
煬鳳はそう決めると、彩藍方の話にもう一度耳を傾けた。
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