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なな
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「何にも無いってことは、元夫のことは愛していないってことでいい?」
「愛どころか、情すらありません。」
考えても、考えても何にも出てこない。
せめてルディの父親だと思って見ようとしたけど、父親だとも思えなかった。というかわたくしが父親の気持ちになっていましたわ。母親?だって優秀な乳母がいますもの。
「何も無いのです。」
逆に何もなさすぎてガッカリです。
わたくしという人間の空虚さを物語っているようです。
「じゃあ、私が求婚しても問題ないかな?」
「キュウコンですか?」
「そう。君に結婚を申し込みたい。」
いつもと変わらない笑顔のラリー先生は、どこから取り出したのか、色とりどりの花束を抱えて、わたくしの横に跪きました。
「キャロル嬢。私と結婚してほしい。
君が傷心なら、その傷が癒えるまで待とうと思っていたんだ。君の心があの男にないなら、考えてほしい。」
傷心が癒えるまでなんて……。
わたくしでしたら、きっと傷心につけ込んでしまいますわ。弱いところを打つのは勝負の基本ですもの。
いけない!こういう所ですわ、わたくしの女性らしくない所は!
「……わたくし、ラリー先生のことを愛せるかわかりません。」
「いいよ。それでも私は君を支えていきたい。
君の愛するルディとこの子爵領をね。」
「もし、結婚しましても、わたくしとラリー先生の子どもはこの子爵領を継げませんのよ。」
現在のカイエン子爵はルディです。
わたくしはルディの後見人でしかありません。今は暫定的にカイエン子爵夫人を名乗っておりますが、ルディが成人した暁には、わたくしの身分はなくなってしまうのです。
「嬉しいな。もう私たちの子供のことまで考えてくれるのかい?」
ラリー先生がはにかみながら、わたくしの頬に手を伸ばします!
どうしましょう!ラリー先生ってこんなに色気がダダ漏れな人でしたか?
「キャロル。私は君を愛してる。」
「ふぁっっ!!」
あ、愛してるなんて!家族以外に初めて言われました。
顔が、顔が熱いです。
多分赤いです!真っ赤な気がします!!
「でも…わたくし、上手く結婚できるか……全然可愛くないし、領主代行の仕事もある、し、結婚には向いてないのでは?と思うのです。」
ああ、もう。ほんと可愛くないです。
愛してる、と言われて素直に返せない女なのです!
「キャロル。」
ラリー先生は花束をテーブルに置くと、わたくしの手を、優しく握ってくれました。
「上手く出来なくてもいいよ。
ずっと領主の仕事を頑張ってきたんだ。結婚したらたくさん私に甘えてほしい。」
「………はい」
手に柔らかな口付けを落とされるのが、恥ずかしくてたまりません!
小さく返事するだけでやっとです。
こんな恥ずかしいこと、慣れていないのです。
「ラリー先生。」
「ラリーと呼んでくれるかい?」
「…ラリー」
ラリーの今まで見たことのない笑顔に、なんだか泣きそうなくらい嬉しくなってしまいました。
わたくし、甘えていいのでしょうか?
「一緒に歩いてくれますか?ずっと、一生。」
「もちろん。ずっと一緒に歩いていこう。」
************
それから1年後、わたくしはラリーと結婚しました。
結婚式はルディとリシュタット家の家族で慎ましく行いました。それでもカイエン子爵邸の使用人だけでなく、領民の皆様がお祝いしてくれて、本当に温かな式でしたわ。
そうそう、式にはドルトイル辺境伯もいらっしゃってびっくりしました。
実はラリーはドルトイル辺境伯の甥にあたるそうです。ご両親はすでに他界されておりますし、家族の反対を押し切って結婚されたので、ドルトイル辺境伯とはあまり交流はしていなかったそうです。
「キャロル。とても可愛らしいね。花の妖精のようだよ。」
ラリーの達ての希望でフリルとレースがふんだんに使われたドレスに身を包み、頭にはベールではなく花冠がのせられています。
恥ずかしいです。
わたくし再婚で、子連れですのよ。痛々しくないですか⁈
「かあたま、よーせー。ちれーね。」
ラリーに抱っこされたルディが、小さな手でぱちぱちとしながら褒めてくれるのが救いですわ。
「ラリーは乙女チックすぎますわ。」
「ロマンチックと言ってほしいね。」
「ね。」
そう言って笑い合うラリーとルディはまるで本当の親子のようです。
ルディもいつかこんな乙女、いえロマンチストになるのでしょうか。
わたくしはラリーの目の色のリボンで束ねた花束を、青空に向かって投げました。
終わり
「愛どころか、情すらありません。」
考えても、考えても何にも出てこない。
せめてルディの父親だと思って見ようとしたけど、父親だとも思えなかった。というかわたくしが父親の気持ちになっていましたわ。母親?だって優秀な乳母がいますもの。
「何も無いのです。」
逆に何もなさすぎてガッカリです。
わたくしという人間の空虚さを物語っているようです。
「じゃあ、私が求婚しても問題ないかな?」
「キュウコンですか?」
「そう。君に結婚を申し込みたい。」
いつもと変わらない笑顔のラリー先生は、どこから取り出したのか、色とりどりの花束を抱えて、わたくしの横に跪きました。
「キャロル嬢。私と結婚してほしい。
君が傷心なら、その傷が癒えるまで待とうと思っていたんだ。君の心があの男にないなら、考えてほしい。」
傷心が癒えるまでなんて……。
わたくしでしたら、きっと傷心につけ込んでしまいますわ。弱いところを打つのは勝負の基本ですもの。
いけない!こういう所ですわ、わたくしの女性らしくない所は!
「……わたくし、ラリー先生のことを愛せるかわかりません。」
「いいよ。それでも私は君を支えていきたい。
君の愛するルディとこの子爵領をね。」
「もし、結婚しましても、わたくしとラリー先生の子どもはこの子爵領を継げませんのよ。」
現在のカイエン子爵はルディです。
わたくしはルディの後見人でしかありません。今は暫定的にカイエン子爵夫人を名乗っておりますが、ルディが成人した暁には、わたくしの身分はなくなってしまうのです。
「嬉しいな。もう私たちの子供のことまで考えてくれるのかい?」
ラリー先生がはにかみながら、わたくしの頬に手を伸ばします!
どうしましょう!ラリー先生ってこんなに色気がダダ漏れな人でしたか?
「キャロル。私は君を愛してる。」
「ふぁっっ!!」
あ、愛してるなんて!家族以外に初めて言われました。
顔が、顔が熱いです。
多分赤いです!真っ赤な気がします!!
「でも…わたくし、上手く結婚できるか……全然可愛くないし、領主代行の仕事もある、し、結婚には向いてないのでは?と思うのです。」
ああ、もう。ほんと可愛くないです。
愛してる、と言われて素直に返せない女なのです!
「キャロル。」
ラリー先生は花束をテーブルに置くと、わたくしの手を、優しく握ってくれました。
「上手く出来なくてもいいよ。
ずっと領主の仕事を頑張ってきたんだ。結婚したらたくさん私に甘えてほしい。」
「………はい」
手に柔らかな口付けを落とされるのが、恥ずかしくてたまりません!
小さく返事するだけでやっとです。
こんな恥ずかしいこと、慣れていないのです。
「ラリー先生。」
「ラリーと呼んでくれるかい?」
「…ラリー」
ラリーの今まで見たことのない笑顔に、なんだか泣きそうなくらい嬉しくなってしまいました。
わたくし、甘えていいのでしょうか?
「一緒に歩いてくれますか?ずっと、一生。」
「もちろん。ずっと一緒に歩いていこう。」
************
それから1年後、わたくしはラリーと結婚しました。
結婚式はルディとリシュタット家の家族で慎ましく行いました。それでもカイエン子爵邸の使用人だけでなく、領民の皆様がお祝いしてくれて、本当に温かな式でしたわ。
そうそう、式にはドルトイル辺境伯もいらっしゃってびっくりしました。
実はラリーはドルトイル辺境伯の甥にあたるそうです。ご両親はすでに他界されておりますし、家族の反対を押し切って結婚されたので、ドルトイル辺境伯とはあまり交流はしていなかったそうです。
「キャロル。とても可愛らしいね。花の妖精のようだよ。」
ラリーの達ての希望でフリルとレースがふんだんに使われたドレスに身を包み、頭にはベールではなく花冠がのせられています。
恥ずかしいです。
わたくし再婚で、子連れですのよ。痛々しくないですか⁈
「かあたま、よーせー。ちれーね。」
ラリーに抱っこされたルディが、小さな手でぱちぱちとしながら褒めてくれるのが救いですわ。
「ラリーは乙女チックすぎますわ。」
「ロマンチックと言ってほしいね。」
「ね。」
そう言って笑い合うラリーとルディはまるで本当の親子のようです。
ルディもいつかこんな乙女、いえロマンチストになるのでしょうか。
わたくしはラリーの目の色のリボンで束ねた花束を、青空に向かって投げました。
終わり
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