10 / 13
第十話
しおりを挟む
んふふ~。ふふ~ん。
いつもより鼻歌絶好調!!うん!誰がなんと言おうと絶好調!!
よちよち歩きでショーンがこっちに歩いてくる姿と言ったら!!く~~っ!動画撮りたい~!!
(たぶん)クマのぬいぐるみを気合いを入れて持つ!!ショーンはニコニコしながら、クマさんのぬいぐるみに突進してくるのよ!!
このぬいぐるみは謎のお屋敷で見つけた。
謎のなんて誤魔化してみたけど、マリアベルの家だ。
あたしの移動範囲はそのまんまマリアベルの移動範囲なんだと思う。お城と家だけ…。
マリアベルの記憶はまったくないけど、色々なものに触れたり、人に触れたりすると移動範囲も増えるし、物に触れたり出来ることが増えていく。
それがとても……怖い………。
謎のお屋敷にはいつのまにか、いた。ちょっとよくわからないと思うけど、気がついたら知らない廊下に立っていた。
この姿になってからは、気づいたら知らないところに立っていたり、さっきまでハイハイしていたはずのショーンがよちよち歩いていたり、不思議なことがよく起こる。よく起こるので細かいことは気にしなーい!
いつも歩き回っているお城とはちょっと違って木の温もりが感じられる。
お城より働いている人がずっと少なくて歩きやすい!
階段を降りていくと立派な玄関ホールになってて、壁には肖像画がいくつも飾られている。あぁ、これは小さい頃のマリアベルだ。鏡に時々映り込む顔よりずっと幼い頃に両親と一緒に描かれた、家族の肖像画だね。
その隣には最近、王様の執務室で見かけるイケメンとマリアベル、二人の肖像画だ。
お屋敷の中を見て回っているとすごく気になる部屋があった。扉に両手をつくようにすり抜ける。
あぁ、ここはマリアベルの部屋なのだろう。
優しく、落ち着いたサーモンピンクの壁や小さなお花をモチーフにした家具。ベットには沢山のぬいぐるみが置いてあるけど、埃っぽい感じは全然ない。
うーん、このぬいぐるみならショーンに持っていってあげられるかな。マリアベルのだし、いいよね。
小さなものを手に取ってモフモフしてみるけど、くそうっ!感触がない!
ガチャと音がして、誰かが部屋に入ってきた。よく掃除してあるから、お掃除の人かな。
「…!マリアベル!」
入ってきたのは、ロマンスグレーなイケオジだ。整った顔をこっちに向けたまま固まっている。
あ、この人あたしのこと見える人だ。
「待ってくれ!マリアベル!」
そろりと部屋から出て行こうとしたけどイケオジに止められる。うーん、必死な姿も絵になるわ~。
手を伸ばしてきたけど、あたしに触ることは出来ない事に気がついて、ものすごい顔を歪めた。
「すまない、マリアベル。……お前をこんな姿にしてしまって………守ってやれなくて……
あの時、国のためなどと思わず婚約破棄させておけば良かった……マリアベル、お前にあの愚かな王太子を任せてしまったばっかりに………」
婚約破棄……?
「お前が妃となったことで廃嫡を免れたというのにな。」
そっか、王様はマリアベルと結婚したくなかったわけね。で、婚約破棄しようとして失敗。ってまんまラノベか⁈悪役令嬢か⁈
「お前が側妃殺害を企てることなどあり得ない。などと油断してしまった。まさか…まさか、ベルクがお前を陥れるとは……。
だが、私は見てみぬフリをした。公爵家の跡取りを失うわけにはいかないと。
恨んでいるのだろう。
家のためなどと……私はお前の父親であったのにな………」
ああ、やっぱり。
マリアベルは殺されたんだよね。
マリアベルの姿が近くにいるとみんな怯えたり、後悔したりしている。
国のためなのか、家のためなのか、自分のためなのかわからないけど、マリアベルを殺したわけだ。
マリアベルが恨んでいたのか、諦めていたのかはわからない。この姿だけ残して、いなくなってしまったからね。
あまり考えたくないよ。
あたし高橋あかりの時なんて、人違いで殺されちゃってるわけだし。
マリアベルの恨みとか言われちゃったら、もうお腹いっぱいって感じ。
「マリアベル、私は……」
イケオジ父さん。なんとなくマリアベルは貴方のことは恨んでないと思う。
あたしは出来るだけ明るく見えるよう笑顔になると、スカートを少し持ち上げて挨拶した。お城の人たちの見様見真似だから変なのは許してほしい。
でも、マリアベルらしく見えたらいいなあ。
顔を上げると、クマのぬいぐるみと一緒にお城に戻っていた。
いつもより鼻歌絶好調!!うん!誰がなんと言おうと絶好調!!
よちよち歩きでショーンがこっちに歩いてくる姿と言ったら!!く~~っ!動画撮りたい~!!
(たぶん)クマのぬいぐるみを気合いを入れて持つ!!ショーンはニコニコしながら、クマさんのぬいぐるみに突進してくるのよ!!
このぬいぐるみは謎のお屋敷で見つけた。
謎のなんて誤魔化してみたけど、マリアベルの家だ。
あたしの移動範囲はそのまんまマリアベルの移動範囲なんだと思う。お城と家だけ…。
マリアベルの記憶はまったくないけど、色々なものに触れたり、人に触れたりすると移動範囲も増えるし、物に触れたり出来ることが増えていく。
それがとても……怖い………。
謎のお屋敷にはいつのまにか、いた。ちょっとよくわからないと思うけど、気がついたら知らない廊下に立っていた。
この姿になってからは、気づいたら知らないところに立っていたり、さっきまでハイハイしていたはずのショーンがよちよち歩いていたり、不思議なことがよく起こる。よく起こるので細かいことは気にしなーい!
いつも歩き回っているお城とはちょっと違って木の温もりが感じられる。
お城より働いている人がずっと少なくて歩きやすい!
階段を降りていくと立派な玄関ホールになってて、壁には肖像画がいくつも飾られている。あぁ、これは小さい頃のマリアベルだ。鏡に時々映り込む顔よりずっと幼い頃に両親と一緒に描かれた、家族の肖像画だね。
その隣には最近、王様の執務室で見かけるイケメンとマリアベル、二人の肖像画だ。
お屋敷の中を見て回っているとすごく気になる部屋があった。扉に両手をつくようにすり抜ける。
あぁ、ここはマリアベルの部屋なのだろう。
優しく、落ち着いたサーモンピンクの壁や小さなお花をモチーフにした家具。ベットには沢山のぬいぐるみが置いてあるけど、埃っぽい感じは全然ない。
うーん、このぬいぐるみならショーンに持っていってあげられるかな。マリアベルのだし、いいよね。
小さなものを手に取ってモフモフしてみるけど、くそうっ!感触がない!
ガチャと音がして、誰かが部屋に入ってきた。よく掃除してあるから、お掃除の人かな。
「…!マリアベル!」
入ってきたのは、ロマンスグレーなイケオジだ。整った顔をこっちに向けたまま固まっている。
あ、この人あたしのこと見える人だ。
「待ってくれ!マリアベル!」
そろりと部屋から出て行こうとしたけどイケオジに止められる。うーん、必死な姿も絵になるわ~。
手を伸ばしてきたけど、あたしに触ることは出来ない事に気がついて、ものすごい顔を歪めた。
「すまない、マリアベル。……お前をこんな姿にしてしまって………守ってやれなくて……
あの時、国のためなどと思わず婚約破棄させておけば良かった……マリアベル、お前にあの愚かな王太子を任せてしまったばっかりに………」
婚約破棄……?
「お前が妃となったことで廃嫡を免れたというのにな。」
そっか、王様はマリアベルと結婚したくなかったわけね。で、婚約破棄しようとして失敗。ってまんまラノベか⁈悪役令嬢か⁈
「お前が側妃殺害を企てることなどあり得ない。などと油断してしまった。まさか…まさか、ベルクがお前を陥れるとは……。
だが、私は見てみぬフリをした。公爵家の跡取りを失うわけにはいかないと。
恨んでいるのだろう。
家のためなどと……私はお前の父親であったのにな………」
ああ、やっぱり。
マリアベルは殺されたんだよね。
マリアベルの姿が近くにいるとみんな怯えたり、後悔したりしている。
国のためなのか、家のためなのか、自分のためなのかわからないけど、マリアベルを殺したわけだ。
マリアベルが恨んでいたのか、諦めていたのかはわからない。この姿だけ残して、いなくなってしまったからね。
あまり考えたくないよ。
あたし高橋あかりの時なんて、人違いで殺されちゃってるわけだし。
マリアベルの恨みとか言われちゃったら、もうお腹いっぱいって感じ。
「マリアベル、私は……」
イケオジ父さん。なんとなくマリアベルは貴方のことは恨んでないと思う。
あたしは出来るだけ明るく見えるよう笑顔になると、スカートを少し持ち上げて挨拶した。お城の人たちの見様見真似だから変なのは許してほしい。
でも、マリアベルらしく見えたらいいなあ。
顔を上げると、クマのぬいぐるみと一緒にお城に戻っていた。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
不憫な推しキャラを救おうとしただけなのに【魔法学園編 突入☆】
はぴねこ
BL
魔法学園編突入! 学園モノは読みたいけど、そこに辿り着くまでの長い話を読むのは大変という方は、魔法学園編の000話をお読みください。これまでのあらすじをまとめてあります。
美幼児&美幼児(ブロマンス期)からの美青年×美青年(BL期)への成長を辿る長編BLです。
金髪碧眼美幼児のリヒトの前世は、隠れゲイでBL好きのおじさんだった。
享年52歳までプレイしていた乙女ゲーム『星鏡のレイラ』の攻略対象であるリヒトに転生したため、彼は推しだった不憫な攻略対象:カルロを不運な運命から救い、幸せにすることに全振りする。
見た目は美しい王子のリヒトだが、中身は52歳で、両親も乳母も護衛騎士もみんな年下。
気軽に話せるのは年上の帝国の皇帝や魔塔主だけ。
幼い推しへの高まる父性でカルロを溺愛しつつ、頑張る若者たち(両親etc)を温かく見守りながら、リヒトはヒロインとカルロが結ばれるように奮闘する!
リヒト… エトワール王国の第一王子。カルロへの父性が暴走気味。
カルロ… リヒトの従者。リヒトは神様で唯一の居場所。リヒトへの想いが暴走気味。
魔塔主… 一人で国を滅ぼせるほどの魔法が使える自由人。ある意味厄災。リヒトを研究対象としている。
オーロ皇帝… 大帝国の皇帝。エトワールの悍ましい慣習を嫌っていたが、リヒトの利発さに興味を持つ。
ナタリア… 乙女ゲーム『星鏡のレイラ』のヒロイン。オーロ皇帝の孫娘。カルロとは恋のライバル。
殿下から婚約破棄されたけど痛くも痒くもなかった令嬢の話
ルジェ*
ファンタジー
婚約者である第二王子レオナルドの卒業記念パーティーで突然婚約破棄を突きつけられたレティシア・デ・シルエラ。同様に婚約破棄を告げられるレオナルドの側近達の婚約者達。皆唖然とする中、レオナルドは彼の隣に立つ平民ながらも稀有な魔法属性を持つセシリア・ビオレータにその場でプロポーズしてしまうが───
「は?ふざけんなよ。」
これは不運な彼女達が、レオナルド達に逆転勝利するお話。
********
「冒険がしたいので殿下とは結婚しません!」の元になった物です。メモの中で眠っていたのを見つけたのでこれも投稿します。R15は保険です。プロトタイプなので深掘りとか全くなくゆるゆる設定で雑に進んで行きます。ほぼ書きたいところだけ書いたような状態です。細かいことは気にしない方は宜しければ覗いてみてやってください!
*2023/11/22 ファンタジー1位…⁉︎皆様ありがとうございます!!
最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職
鎌霧
ファンタジー
『To The World Road』
倍率300倍の新作フルダイブ系VRMMOの初回抽選に当たり、意気揚々と休暇を取りβテストの情報を駆使して快適に過ごそうと思っていた。
……のだが、蓋をひらけば選択した職業は調整入りまくりで超難易度不遇職として立派に転生していた。
しかしそこでキャラ作り直すのは負けた気がするし、不遇だからこそ使うのがゲーマーと言うもの。
意地とプライドと一つまみの反骨精神で私はこのゲームを楽しんでいく。
小説家になろう、カクヨムにも掲載
魔王だが、弟子の勇者たちが追放されまくってるそうだな? ~かわりに魔王自ら勇者パーティに潜りこんだら、なんか勇者が詰んだ~
ねぎさんしょ
ファンタジー
主人公ゼルスは、魔王でありながら人間の冒険者を鍛え、育て、勇者候補として世界に送り出し続けてきた。
「この世は闇が多すぎる」それが彼の口癖だったが、ある日、
「俺の弟子が、勇者パーティを追放された……!?」
衝撃的な報告に、ゼルスは自ら動き出す。
弟子を追放した勇者パーティに、弟子と同じ支援術士として潜りこんだのだ。
それはゼルスの、
弟子たちの育て方を間違えていたなら正したいという強い自負心と、
生粋の『人間ファン』であるがゆえ「やっぱり勇者はすごいなあ!」というピュアな期待と、
それらふたつが合わさった「俺の弟子が迷惑をかけたなら申しわけない」という責任感が理由だった。
その純真さが、実は身勝手な理由で彼の弟子たちを追放していた勇者パーティを、じわじわと追い詰めてゆくことになる。
試されているのは、ゼルスや弟子たちではない。
魔王の期待に、勇者は応えられるのか?
魔王の責任感に、見合う勇者は存在するのか?
魔王のピュアっぷりに、勇者は耐えられるのか?
やがては、純真なゼルスも首をかしげる。
「あれ……? なんかこの勇者、変じゃね?」
心やさしき魔王の、無自覚系ざまぁ物語。
※完結保証 40話足らずで第1部完結いたします。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載いたします。
※2020/11/18、タイトル微調整しました。「申しわけない気持ちから」→「かわりに魔王自ら」
断罪される1か月前に前世の記憶が蘇りました。
みちこ
ファンタジー
両親が亡くなり、家の存続と弟を立派に育てることを決意するけど、ストレスとプレッシャーが原因で高熱が出たことが切っ掛けで、自分が前世で好きだった小説の悪役令嬢に転生したと気が付くけど、小説とは色々と違うことに混乱する。
主人公は断罪から逃れることは出来るのか?
司書ですが、何か?
みつまめ つぼみ
ファンタジー
16歳の小さな司書ヴィルマが、王侯貴族が通う王立魔導学院付属図書館で仲間と一緒に仕事を頑張るお話です。
ほのぼの日常系と思わせつつ、ちょこちょこドラマティックなことも起こります。ロマンスはふんわり。
婚約破棄はいいですが、あなた学院に届け出てる仕事と違いませんか?
来住野つかさ
恋愛
侯爵令嬢オリヴィア・マルティネスの現在の状況を端的に表すならば、絶体絶命と言える。何故なら今は王立学院卒業式の記念パーティの真っ最中。華々しいこの催しの中で、婚約者のシェルドン第三王子殿下に婚約破棄と断罪を言い渡されているからだ。
パン屋で働く苦学生・平民のミナを隣において、シェルドン殿下と側近候補達に断罪される段になって、オリヴィアは先手を打つ。「ミナさん、あなた学院に提出している『就業許可申請書』に書いた勤務内容に偽りがありますわよね?」――
よくある婚約破棄ものです。R15は保険です。あからさまな表現はないはずです。
※この作品は『カクヨム』『小説家になろう』にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる