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第六話(生者視点)

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最後のロンバルトの独白が変わっています。

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 ショーンの部屋で、怪しい気配を感じてから、城の其処此処で気配を感じるような気がする。


 執務も一区切りついたので、夕食の前に一度自室に戻ることをリオルに告げる。執務室の隣の自室に戻るだけだ、ついてこようとする護衛を執務室の前に留め自室に向かう。
「うっ!」
 ドアを開けた途端、首筋を撫でるような寒気に慌てて扉を閉めた。
「陛下、どうかされましたか?」
「いや、なんでもない。」
 こちらへ向かおうとする護衛を留めドアノブを握りながら激しく憤りを感じた。なぜ、私がこんな風に怯えなくてはならないのか。
 ガチャリと出来るだけ大きな音を立てて、もう一度ドアを開けると寒気など何処にもない。
 ……馬鹿馬鹿しい。リリーに感化されたか。
 リリーを宥めて置きながら、自分も気が小さいな、などと自重する。夕食の際はもう少し話を聞いてやろう。

 夕暮れで薄暗くなった室内に入ると、ベッドの近くの花瓶が倒れているのが目に入った。
 誰かがこの部屋に入ったのか?この部屋は王太子の時から使っていた部屋で、リリーと婚姻した後は、重要な物などは置いていない完全なプライベートな部屋だ。対して使わないので週二回程メイドが掃除するくらいだ。今日は掃除の日ではないので、入る者などいないはずだが。
 倒れたばかりなのか、花瓶の乗った花台からポタリポタリと水が落ちている。メイドを呼んで片付けさせるか。
 花瓶を戻そうと手を伸ばした時に気がついた。
 手の跡が……
 ピンと張られたベッドのシーツの上に水で濡れた手の跡がくっきりとある。
「ひいいぃっ!」
引きつれるような悲鳴に、護衛が部屋に入ってきた。
「陛下!ご無事ですか?」
「ひっ……だ、大丈夫だ……」
座り込んでしまった私を護衛が助け起こす。
「お、お前たち!この部屋に…誰か入ったか?」
 護衛の二人は顔を見合わせて、昼の交代後から誰もこの部屋に近づいていないと言う。
 そんなわけないだろう!じゃあこの手の跡は!花瓶は勝手に倒れたのか!
 不気味な手の跡は乾いてしまったのか、跡形もない。ただほんの少しシーツにシワが寄っているだけだ。
 護衛の手を乱暴に振り払って、花瓶とシーツの片付けを言いつけ部屋を出た。

「「わあっ!」」
 執務室のドアを開けるとリアムが悲鳴をあげたので、驚いて悲鳴を上げてしまった。
「す、すまない!ロンバルト!」
「どうした、お前が大声出すなんて。脅かされたのかと思ったぞ。」
「そんな子どもの時のようなことは流石にしない…が……どうかしたか?顔色が悪いぞ。」
 真っ青な顔をしたリアムに言われたくは無い。幸い部屋の中は私とリアムしかいないので、私たちはお互いソファに座ると、今あったことを話した。
 
 私が部屋を出た後、秘書官と文官の二人は書類を届けるため退室したので、リアムが片付けをしていたらしい。
「その書類綴りが一枚、一枚めくれ始めたんだ。始めは風かと思ったんだが、窓は閉まっているし。そうしてるうちにめくれる速さがどんどん早くなって、その書類を止めようと手を伸ばしたら…」
リアムは肩を摩りながら身体を震わす。

「……声が、何か呻く様な声が聞こえた気がしたら………
 体の左側を何かが通り抜けて行ったんだ。」


 この城に一体何が起こっているのか。
 本当にマリアベルの呪いだとでもいうのか?
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