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翻訳室はそれほど広くはない。部屋の真ん中に長テーブルと椅子が4脚、入り口以外の三方の壁をを本棚が覆っている。棚は天井まであるので小さな梯子が置いてある。
アプルは本棚と蔵書リストを見比べ、本が全て揃ってあるのか確認していく。
そのあとを所在なさげのついて歩くオーリーが、低い声で話し始めた。
確かに怪しまれず、図書館で調査をするために、アプルに声はかけた。
オーリーはこの見た目から、常に周りに女性がいるので、一番自然な感じでいるためには、唯一の女性職員に声をかけているというのが最も怪しまれない。
だけどアプルと話すのが楽しくて、お菓子をもらう時の顔が可愛いくて。
「ご飯を食べに行ったら惚れました。」
「は??」
言い訳は聞いたけど、理解ができない。
「だってオーリーが任務で女性に話しかけるのはよくあることなんでしょう?その度に惚れたとか言っちゃうの?」
「だから任務であったけど、本気でアプルのことを好きになったんだよ。誰にでもいうわけないだろう。あー!もう!なんでこんな格好悪い告白してんのかな。」
癖のある金髪を片手でかき混ぜながら、ダリル隊長めと悪態をついている。
(バカって・・・ダリル隊長のことだよね?)
ダリルの精悍な顔を思い浮かべるが、ついでに図書館の入り口で額にキスをされたことを思い出してしまい、オーリーに見えないようくるりと反対側の本棚に体ごと向いた。
「いや、今はダリル隊長のことはいい。
アプル。俺にとってアプルは特別なんだ。アプルが美味しいもの食べて、幸せそうな顔をみていると俺も幸せな気分にしてくれるんだ。」
幸せそうな顔。
そんなに変わった顔をしているのだろうか?とアプルは考える。マナーは家庭教師と学園で最低限習ったので、悪くはないはずだ。しかし顔と言われると、鏡を見ながら食事をするようなことはないし、何と言ってもアプルは、糸目令嬢と言われているのだ。
こんな結婚したい男、ナンバーワンみたいなオーリーが惚れるような顔ではないだろう。
とそこまで考えて思い出す。
「・・・そういえばダリル隊長も変なこと言っていた。」
「え?隊長が、なんて?」
エロい顔・・・なんて言えない。
恥ずかしいじゃないか!!
「なんでもない!聞かなかったことにして!」
アプルはなんでもない風を装って、本棚を下から上まで見回す。
「アプル、なんて言わ」
「あ、あんなとこに本が!誰だろ、あんな所に置きっぱなしにして!」
バレバレに誤魔化したアプルが見ている先は、本棚の上段、空いた棚に置き去られたような本だ。
「俺が取ろうか?」
「これは私の仕事です。」
手を伸ばそうとしたオーリーを押し留め、梯子を準備すると足をかける。
「アプル。危ないよ。」
目の前で落ちたアプルを思い出すのか、顔を顰めるが仕事だと言われれば仕方がない。
一段、二段と慎重に上がる様子にため息を一つつくと、アプルの後ろから覆い被さるように梯子を支えた。
「オーリー!!」
「ちゃんと落ちないように登って。押さえてるから。」
(近い!近い!!)
腕や背中のすぐそばにオーリーの体温を感じるようで、アプルは身悶えしそうなのを押さえつける。
もう一段上がれば本に手が届くけど、オーリーにお尻がぶつかるんじゃないかと思って、片足を三段目にかけた状態で止まる。
(お尻をぶつけるなんて!そんなのまるで痴女じゃない!!)
痴女、痴女とアプル頭の中でグルグルしているが、側からみれば後ろから覆い被さって、アプルの反応を楽しんでいるオーリーの方が変態である。
「オーリー、ちょっと離れて!」
「無理。離れたら落ちた時に助けられないからね。」
「落ちないから!!」
半泣きのアプルだが、オーリーは頑として聞いてくれない。
仕方なくアプルは梯子に縋り付くようにして一段上がると、無事に本を手に取った。
「取った!」
「じゃあ今度は気をつけて降りて。」
ーー降りる⁉︎
(絶対!お尻がぶつかるっ!!!)
「抱えて降ろしてあげようか?」
楽しげなオーリーの声。
揶揄われていると思ったら、急に負けず嫌いな気持ちが湧いてきた。
「大丈夫、自分で降りられるから。」
そっと片足を下の段に伸ばす。下が見えづらくて足を探るように動かすと下の段に足がつく。
「それじゃあその本、先にちょうだい。持っていてあげる。」
「大丈夫!ゆっくり降りるしっ・・ひゃっ!!」
本を意識をした途端、足元が疎かになって、ガクンと段から足が滑り落ちて、バランスを崩したアアプルは落ち・・・なかった。
オーリーの両腕がアプルをぎゅっと抱きしめていたのだ。
「ほら、危なかった。俺がいて良かったね。」
オーリーがいたから落ちたんだよ、と言いたかったが、思ったよりも逞しい腕に抱きしめられて、とにかくそこから抜け出すことが先決だ!
アプルは本棚と蔵書リストを見比べ、本が全て揃ってあるのか確認していく。
そのあとを所在なさげのついて歩くオーリーが、低い声で話し始めた。
確かに怪しまれず、図書館で調査をするために、アプルに声はかけた。
オーリーはこの見た目から、常に周りに女性がいるので、一番自然な感じでいるためには、唯一の女性職員に声をかけているというのが最も怪しまれない。
だけどアプルと話すのが楽しくて、お菓子をもらう時の顔が可愛いくて。
「ご飯を食べに行ったら惚れました。」
「は??」
言い訳は聞いたけど、理解ができない。
「だってオーリーが任務で女性に話しかけるのはよくあることなんでしょう?その度に惚れたとか言っちゃうの?」
「だから任務であったけど、本気でアプルのことを好きになったんだよ。誰にでもいうわけないだろう。あー!もう!なんでこんな格好悪い告白してんのかな。」
癖のある金髪を片手でかき混ぜながら、ダリル隊長めと悪態をついている。
(バカって・・・ダリル隊長のことだよね?)
ダリルの精悍な顔を思い浮かべるが、ついでに図書館の入り口で額にキスをされたことを思い出してしまい、オーリーに見えないようくるりと反対側の本棚に体ごと向いた。
「いや、今はダリル隊長のことはいい。
アプル。俺にとってアプルは特別なんだ。アプルが美味しいもの食べて、幸せそうな顔をみていると俺も幸せな気分にしてくれるんだ。」
幸せそうな顔。
そんなに変わった顔をしているのだろうか?とアプルは考える。マナーは家庭教師と学園で最低限習ったので、悪くはないはずだ。しかし顔と言われると、鏡を見ながら食事をするようなことはないし、何と言ってもアプルは、糸目令嬢と言われているのだ。
こんな結婚したい男、ナンバーワンみたいなオーリーが惚れるような顔ではないだろう。
とそこまで考えて思い出す。
「・・・そういえばダリル隊長も変なこと言っていた。」
「え?隊長が、なんて?」
エロい顔・・・なんて言えない。
恥ずかしいじゃないか!!
「なんでもない!聞かなかったことにして!」
アプルはなんでもない風を装って、本棚を下から上まで見回す。
「アプル、なんて言わ」
「あ、あんなとこに本が!誰だろ、あんな所に置きっぱなしにして!」
バレバレに誤魔化したアプルが見ている先は、本棚の上段、空いた棚に置き去られたような本だ。
「俺が取ろうか?」
「これは私の仕事です。」
手を伸ばそうとしたオーリーを押し留め、梯子を準備すると足をかける。
「アプル。危ないよ。」
目の前で落ちたアプルを思い出すのか、顔を顰めるが仕事だと言われれば仕方がない。
一段、二段と慎重に上がる様子にため息を一つつくと、アプルの後ろから覆い被さるように梯子を支えた。
「オーリー!!」
「ちゃんと落ちないように登って。押さえてるから。」
(近い!近い!!)
腕や背中のすぐそばにオーリーの体温を感じるようで、アプルは身悶えしそうなのを押さえつける。
もう一段上がれば本に手が届くけど、オーリーにお尻がぶつかるんじゃないかと思って、片足を三段目にかけた状態で止まる。
(お尻をぶつけるなんて!そんなのまるで痴女じゃない!!)
痴女、痴女とアプル頭の中でグルグルしているが、側からみれば後ろから覆い被さって、アプルの反応を楽しんでいるオーリーの方が変態である。
「オーリー、ちょっと離れて!」
「無理。離れたら落ちた時に助けられないからね。」
「落ちないから!!」
半泣きのアプルだが、オーリーは頑として聞いてくれない。
仕方なくアプルは梯子に縋り付くようにして一段上がると、無事に本を手に取った。
「取った!」
「じゃあ今度は気をつけて降りて。」
ーー降りる⁉︎
(絶対!お尻がぶつかるっ!!!)
「抱えて降ろしてあげようか?」
楽しげなオーリーの声。
揶揄われていると思ったら、急に負けず嫌いな気持ちが湧いてきた。
「大丈夫、自分で降りられるから。」
そっと片足を下の段に伸ばす。下が見えづらくて足を探るように動かすと下の段に足がつく。
「それじゃあその本、先にちょうだい。持っていてあげる。」
「大丈夫!ゆっくり降りるしっ・・ひゃっ!!」
本を意識をした途端、足元が疎かになって、ガクンと段から足が滑り落ちて、バランスを崩したアアプルは落ち・・・なかった。
オーリーの両腕がアプルをぎゅっと抱きしめていたのだ。
「ほら、危なかった。俺がいて良かったね。」
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