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第4章 列強時代
第57話 外国人観光客
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ヤポーネに着いた頃にはすっかり陽が暮れていた。
夜にもかかわらず、街は明るく活気に溢れていて、つい時間感覚を忘れてしまいそうになる。
通りは商店や露天がひしめき合っており、人族も亜人も魔獣までもが入り乱れている。
「へぇ、随分賑わってるし、明るいんだな。オレンジ色の明かりが落ち着くぞ。」
「あ、これ確か魔道具なんですよ。橙色の灯りの。名前は確かトー、トー・・・」
「トォーー?」
「トーーフ!トーフですよ確か!」
「へぇー、変な名前。」
「ここは独特な文化があるんですよ。あの人が着てる服なんかユタカっていうんですよ。」
「一枚布を巻くもののようだが・・・、それがユタカとは不思議な響きだな。」
「豊作祈願でもかかってるんじゃないです?ユタカ、すなわち豊かと。」
「はぇえ~。」
みんな納得してるけど、これ大丈夫か?
道行く現地人が半笑いになってるぞ。
オレらは今、勘違い外国人になってないか?
「ツアーガイド」は気を良くしたのか舌が滑らかだ。
「この国には500万だか600万だかの数の神様がいるらしいですよー。」
「え、居すぎ!名前覚えられないよ。」
「その辺の色んなものに神様が宿ってるとか言ってましたもん。」
「その辺のって、また随分と雑な話だな。」
それを聞いたシルヴィアが、トーフと呼ばれる灯りの元に歩いていった。
「カミサマはじめまして、シルビィだよ!」
トーフの灯りよりも遥かに眩い笑顔での挨拶だ。
神様が居るならノックアウトだろう。
居るならな。
「おおぅい、灯籠の灯り換えとくれ!」
「はぁい、旦那様!」
そんな声が聞こえると、店から出てきた少年がトーフの灯りを換えた。
いま「トウロウ」って言わなかったか?
「あら、その浴衣綺麗ねぇ。高かったんじゃない?」
「そうなの!父様にねだって買ってもらったのよー?」
今度は街行く若い女だ。
確か「ユカタ」って言ったよな?
オレらはさっきまでしたり顔だったアシュリーを見た。
羽で身体を包み込むようにして覆い、両手で真っ赤になった顔を塞いでいる。
オレはアシュリーの耳元で、甘く甘く囁いた。
「ユタカ、すなわち豊かかと・・・。」
「やめてぇー!忘れてぇー私を見ないでぇー!!」
見ないでったって、今この界隈で一番目だってるからな?
弄る度に光輝くこいつは見てて飽きん。
大火傷を負ったアシュリーをそこそこに弄りながら、宿に着いた。
シンデン建築っていう、建物内に大きな庭がある、独特な造りをしていた。
その庭も、灯りや水場が整然と設置されていて、見るものの目を楽しませてくれる。
部屋に着くと、それぞれ荷物を置いた。
食事の前に風呂に入ろう、という話になった。
「じゃあとりあえず風呂いくかー。」
「アルフさん、着替えはこれみたいだよ?持っていこうよ。」
「はぁ、森の賢人たる私は今まで何を学んできたと・・・」
「アシュリー?せっかくの旅行なんだから、楽しみましょう?」
「シルビィお風呂だいすきー!広いといいなぁ!」
「そうじゃのう、シルビィちゃん。ワシと一緒にゆーっくり入ろうぞ。」
・・・え、誰?
気がつくと部屋には見知らぬ爺さんがいた。
プカプカと宙に浮いた、ちっさい爺さんが。
夜にもかかわらず、街は明るく活気に溢れていて、つい時間感覚を忘れてしまいそうになる。
通りは商店や露天がひしめき合っており、人族も亜人も魔獣までもが入り乱れている。
「へぇ、随分賑わってるし、明るいんだな。オレンジ色の明かりが落ち着くぞ。」
「あ、これ確か魔道具なんですよ。橙色の灯りの。名前は確かトー、トー・・・」
「トォーー?」
「トーーフ!トーフですよ確か!」
「へぇー、変な名前。」
「ここは独特な文化があるんですよ。あの人が着てる服なんかユタカっていうんですよ。」
「一枚布を巻くもののようだが・・・、それがユタカとは不思議な響きだな。」
「豊作祈願でもかかってるんじゃないです?ユタカ、すなわち豊かと。」
「はぇえ~。」
みんな納得してるけど、これ大丈夫か?
道行く現地人が半笑いになってるぞ。
オレらは今、勘違い外国人になってないか?
「ツアーガイド」は気を良くしたのか舌が滑らかだ。
「この国には500万だか600万だかの数の神様がいるらしいですよー。」
「え、居すぎ!名前覚えられないよ。」
「その辺の色んなものに神様が宿ってるとか言ってましたもん。」
「その辺のって、また随分と雑な話だな。」
それを聞いたシルヴィアが、トーフと呼ばれる灯りの元に歩いていった。
「カミサマはじめまして、シルビィだよ!」
トーフの灯りよりも遥かに眩い笑顔での挨拶だ。
神様が居るならノックアウトだろう。
居るならな。
「おおぅい、灯籠の灯り換えとくれ!」
「はぁい、旦那様!」
そんな声が聞こえると、店から出てきた少年がトーフの灯りを換えた。
いま「トウロウ」って言わなかったか?
「あら、その浴衣綺麗ねぇ。高かったんじゃない?」
「そうなの!父様にねだって買ってもらったのよー?」
今度は街行く若い女だ。
確か「ユカタ」って言ったよな?
オレらはさっきまでしたり顔だったアシュリーを見た。
羽で身体を包み込むようにして覆い、両手で真っ赤になった顔を塞いでいる。
オレはアシュリーの耳元で、甘く甘く囁いた。
「ユタカ、すなわち豊かかと・・・。」
「やめてぇー!忘れてぇー私を見ないでぇー!!」
見ないでったって、今この界隈で一番目だってるからな?
弄る度に光輝くこいつは見てて飽きん。
大火傷を負ったアシュリーをそこそこに弄りながら、宿に着いた。
シンデン建築っていう、建物内に大きな庭がある、独特な造りをしていた。
その庭も、灯りや水場が整然と設置されていて、見るものの目を楽しませてくれる。
部屋に着くと、それぞれ荷物を置いた。
食事の前に風呂に入ろう、という話になった。
「じゃあとりあえず風呂いくかー。」
「アルフさん、着替えはこれみたいだよ?持っていこうよ。」
「はぁ、森の賢人たる私は今まで何を学んできたと・・・」
「アシュリー?せっかくの旅行なんだから、楽しみましょう?」
「シルビィお風呂だいすきー!広いといいなぁ!」
「そうじゃのう、シルビィちゃん。ワシと一緒にゆーっくり入ろうぞ。」
・・・え、誰?
気がつくと部屋には見知らぬ爺さんがいた。
プカプカと宙に浮いた、ちっさい爺さんが。
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