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第1章 平民時代
第4話 極秘の救出作戦
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ウィラド協会。
僕は今、妹が囚われている建物の前にいる。
希望が生まれたからか、心は今までにないくらいに高揚している。
不安が無くはないけど、大人が味方についてくれただけで頼もしかった。
僕は道案内を買ってでて、魔王様と側近のエレナさんを連れてきている。
ここは街の一角にある、レンガ造りの大きめの商店だ。
表向きは奴隷商の看板を掛けているけど、裏の顔があることは公然の秘密。
犯罪の証拠もたくさんあるのに、お咎めは一度もないらしい。
そんな事が許されるのも、領主と裏で繋がってるからだとか。
「あそこです。あいつらが誘拐犯です」
「己の利益の為に人さらいか。それも6歳の子供に手をだすなど、許さる事では無い」
「あーーほんっとめんどくせえ、とっとと皆殺しにして帰るぞ」
心を読むなんてできない僕にも、この二人の気持ちは良く理解できた。
エレナさんは怒り心頭、魔王様はやる気ゼロといったところだ。
口から気力が漏れてそうな顔だけど、あのシルヴィアという女の子の約束のために、ここまで来てくれた。
どうやら「妹ちゃんがここに来てくれるまで寝ない!」なんて言ってたようで、渋々承諾してくれたのだ。
「シルヴィアを早く寝かせたい。だからパパッとやっつけるぞ」
「ええ? ちょっと待って……」
いくら急いでるからって、下調べも何もしないうちに乗り込むのはどうなの?
僕の不安を他所に、魔王さまは軽い足取りで入り口に向かってしまう。
「なんだテメェは! それ以上こっちに来るんじゃねぇ!」
「うっさい黙れクズ」
魔王様が両手をおもむろに広げたかと思うと、門番の男2人はドサリと地面に崩れ落ちた。
魔法……でも唱えたんだろうか?
それにしては詠唱らしきものは聞こえなかったけど。
不思議に思って門番の顔を覗いてみると、眉間に小さな穴が空いて血が流れていた。
「え? どうしたの?」
「ホラぼさっとすんな行くぞ。」
何事もなかったように入り口を潜る魔王様とエレナさん。
困惑しているのは僕だけのようだ。
「あ、あの殺したんですか?」
「ん? なんだよ、殺しちゃまずかったのか?」
ここの連中は人さらいはもちろん、強盗や窃盗、殺しまで何でもやるヤツらだ。
そんなヤツらなら殺してもいい……のかな?
うーん、どうなんだろうね。
というかそもそも、どうやってあの一瞬で屈強な男達を瞬殺したんだろう?
そう考えを巡らせていると、建物の奥から荒くれ者達が飛び出してきた。
3人、5人と現れるが、結果は同じだ。
戦闘になる前に、皆すぐに屍体へと変わっていった。
魔王様は相変わらず両手を真上に上げるだけ。
そうすると立ちはだかる男達は眉間に穴が空き、確実な死を与えられた。
「この建物は2階までだな。アルフよ、救出対象はやはり地下にでもいるのだろう」
「地下室とかありがちだよなーこんな組織なら。悪いことしてますって感じでよ」
まるで引越しでも頼まれたような気軽さで、アジトの地下室を探すお二方。
もちろん潜入要素なんて全くなくて、エレナさんは物音を気にもせず家具を引っ張り回している。
魔王様なんて床や壁を八つ当たり気味に蹴り砕いている。
おかしいな。
組織壊滅じゃなくて救出目的だったはずなのに。
そうしている間にも、警備の男達が2人3人とやってくる。
今度はエレナさんが手を前に伸ばし、やっぱり男達は動かなくなる。
理屈はわからないけど。
もっとこう……失伝した太古の魔法とか、呪われた魔剣とか、そういうのが出てくると想像してたんだけど。
どちらも出てくる気配が微塵もなかった。
「おい、あったぞ。地下への入り口」
棚によって隠された地下入り口を発見して、僕たちは降りていった。
足音を殺したりなんか全くせずに、それはもう淡々と。
地下は思ったよりも広く、階段を降りた先には詰所のような部屋があった。
そこには酒や料理の乗ったテーブルといくつかの椅子、そして部屋の奥には扉があった。
見るからに重く硬そうで、何かから守ろうとするような意思を感じる。
大切なものを隠すにはうってつけだと思えた。
ーーこの奥にミレイアが?
扉の鍵を探す必要がありそうだ。
そうすると、まずは手がかりを見つけなきゃ。
……なんて考えていると、「とーん」なんてやる気のない声が聞こえた。
扉の前に立つ、魔王様が言ったようだ。
するとどうだろう。
扉が刃物で切られたように、バラバラになって崩れた。
切り口は滑らかで、切ったようにしか見えない。
魔王さまの両手は今も尚手ぶらだった。
どうやら僕の常識は、ここでは意味を成さないらしい。
もうあれこれ考えるのはよそう、ミレイアの事だけ考るべきだ。
僕の頭は限界を迎えようとしていた。
「……! お兄ちゃん!」
「ミレイア!!」
扉の向こうは予想通り牢屋になっていて、何人もの子供が捕まっていた。
ちなみに牢屋の鍵も探し出す必要はなくて、同じように魔王様が「とーん」と牢を破ってしまった。
「よかった、ミレイア。怪我はない?」
「うん、大丈夫。みんなと一緒に閉じ込められただけなの。お兄ちゃんこそ怪我はない?」
僕はミレイアの無事を、ミレイアは無茶をした僕を。
互いに気遣い合いながら、僕たちは再会を果たすことができた。
物凄く嬉しいし感謝の気持ちはあるのに、素直に受け入れられない。
それはきっと、ここまでの異様な出来事のせいだと思った。
僕は今、妹が囚われている建物の前にいる。
希望が生まれたからか、心は今までにないくらいに高揚している。
不安が無くはないけど、大人が味方についてくれただけで頼もしかった。
僕は道案内を買ってでて、魔王様と側近のエレナさんを連れてきている。
ここは街の一角にある、レンガ造りの大きめの商店だ。
表向きは奴隷商の看板を掛けているけど、裏の顔があることは公然の秘密。
犯罪の証拠もたくさんあるのに、お咎めは一度もないらしい。
そんな事が許されるのも、領主と裏で繋がってるからだとか。
「あそこです。あいつらが誘拐犯です」
「己の利益の為に人さらいか。それも6歳の子供に手をだすなど、許さる事では無い」
「あーーほんっとめんどくせえ、とっとと皆殺しにして帰るぞ」
心を読むなんてできない僕にも、この二人の気持ちは良く理解できた。
エレナさんは怒り心頭、魔王様はやる気ゼロといったところだ。
口から気力が漏れてそうな顔だけど、あのシルヴィアという女の子の約束のために、ここまで来てくれた。
どうやら「妹ちゃんがここに来てくれるまで寝ない!」なんて言ってたようで、渋々承諾してくれたのだ。
「シルヴィアを早く寝かせたい。だからパパッとやっつけるぞ」
「ええ? ちょっと待って……」
いくら急いでるからって、下調べも何もしないうちに乗り込むのはどうなの?
僕の不安を他所に、魔王さまは軽い足取りで入り口に向かってしまう。
「なんだテメェは! それ以上こっちに来るんじゃねぇ!」
「うっさい黙れクズ」
魔王様が両手をおもむろに広げたかと思うと、門番の男2人はドサリと地面に崩れ落ちた。
魔法……でも唱えたんだろうか?
それにしては詠唱らしきものは聞こえなかったけど。
不思議に思って門番の顔を覗いてみると、眉間に小さな穴が空いて血が流れていた。
「え? どうしたの?」
「ホラぼさっとすんな行くぞ。」
何事もなかったように入り口を潜る魔王様とエレナさん。
困惑しているのは僕だけのようだ。
「あ、あの殺したんですか?」
「ん? なんだよ、殺しちゃまずかったのか?」
ここの連中は人さらいはもちろん、強盗や窃盗、殺しまで何でもやるヤツらだ。
そんなヤツらなら殺してもいい……のかな?
うーん、どうなんだろうね。
というかそもそも、どうやってあの一瞬で屈強な男達を瞬殺したんだろう?
そう考えを巡らせていると、建物の奥から荒くれ者達が飛び出してきた。
3人、5人と現れるが、結果は同じだ。
戦闘になる前に、皆すぐに屍体へと変わっていった。
魔王様は相変わらず両手を真上に上げるだけ。
そうすると立ちはだかる男達は眉間に穴が空き、確実な死を与えられた。
「この建物は2階までだな。アルフよ、救出対象はやはり地下にでもいるのだろう」
「地下室とかありがちだよなーこんな組織なら。悪いことしてますって感じでよ」
まるで引越しでも頼まれたような気軽さで、アジトの地下室を探すお二方。
もちろん潜入要素なんて全くなくて、エレナさんは物音を気にもせず家具を引っ張り回している。
魔王様なんて床や壁を八つ当たり気味に蹴り砕いている。
おかしいな。
組織壊滅じゃなくて救出目的だったはずなのに。
そうしている間にも、警備の男達が2人3人とやってくる。
今度はエレナさんが手を前に伸ばし、やっぱり男達は動かなくなる。
理屈はわからないけど。
もっとこう……失伝した太古の魔法とか、呪われた魔剣とか、そういうのが出てくると想像してたんだけど。
どちらも出てくる気配が微塵もなかった。
「おい、あったぞ。地下への入り口」
棚によって隠された地下入り口を発見して、僕たちは降りていった。
足音を殺したりなんか全くせずに、それはもう淡々と。
地下は思ったよりも広く、階段を降りた先には詰所のような部屋があった。
そこには酒や料理の乗ったテーブルといくつかの椅子、そして部屋の奥には扉があった。
見るからに重く硬そうで、何かから守ろうとするような意思を感じる。
大切なものを隠すにはうってつけだと思えた。
ーーこの奥にミレイアが?
扉の鍵を探す必要がありそうだ。
そうすると、まずは手がかりを見つけなきゃ。
……なんて考えていると、「とーん」なんてやる気のない声が聞こえた。
扉の前に立つ、魔王様が言ったようだ。
するとどうだろう。
扉が刃物で切られたように、バラバラになって崩れた。
切り口は滑らかで、切ったようにしか見えない。
魔王さまの両手は今も尚手ぶらだった。
どうやら僕の常識は、ここでは意味を成さないらしい。
もうあれこれ考えるのはよそう、ミレイアの事だけ考るべきだ。
僕の頭は限界を迎えようとしていた。
「……! お兄ちゃん!」
「ミレイア!!」
扉の向こうは予想通り牢屋になっていて、何人もの子供が捕まっていた。
ちなみに牢屋の鍵も探し出す必要はなくて、同じように魔王様が「とーん」と牢を破ってしまった。
「よかった、ミレイア。怪我はない?」
「うん、大丈夫。みんなと一緒に閉じ込められただけなの。お兄ちゃんこそ怪我はない?」
僕はミレイアの無事を、ミレイアは無茶をした僕を。
互いに気遣い合いながら、僕たちは再会を果たすことができた。
物凄く嬉しいし感謝の気持ちはあるのに、素直に受け入れられない。
それはきっと、ここまでの異様な出来事のせいだと思った。
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