8 / 83
第8話 健やかさんになる為に
しおりを挟む
森の草むらから赤毛の少女が突然飛び出してきたのだが、それを見たレイラが悲鳴をあげて飛びすさった。
「ま、魔人!? なんでこんな所に!」
「な、ここにも人間がっ!」
「レイラ、この子供が魔人なのか?」
「この髪見ればわかるじゃない、どう見てもそうでしょ!」
へー、随分目を引くと思ったら種族のシンボルだったか。確かに見てきた中でこんな頭したヤツは居なかったな。
少女はオレたちと一定の距離を取りながら威嚇している。警戒度マックスって感じだ。キバを剥いてはいるが全然怖くない。子猫にシャーって言われたときと同じ気分だな。
にらみ合いを続けていると、同じ場所から屈強な男達が現れた。そいつらは少女の髪を乱暴に掴んだ。
「このガキ、もう逃がさねえぞ! 手間かけさせんじゃねえ!」
「街の目前で逃げられるなんて、危なかったな。冷や汗かいちまったよ」
「アンタらコイツの足止めしてくれたのか? ありがとよ」
男達は少女を引きずるようにして立ち去ろうとした。少女は抵抗するが、体格差のせいで逃げることができない。
オレはその連中に何もせずに見送って……。
見送ろうとして……。
ズキリ。
オレの頭に痛みが走った。
昨日とは比べものにならないくらい、頭の芯から痛んだ。幻聴か空耳のような言葉とともに。
ーー・・・から、・・・を頼・・・。
一体なんだってんだ、昨日も街中で急に頭痛がしたし。それにこの声の主は誰なんだ? わるふざけにしちゃタチが悪すぎるぞ!
「離して! 離してぇ!」
「うるせぇ! 害獣のくせに人間様に逆らうんじゃねえ!」
ズキリ、ズキリ、ズキリ!
頭痛はひどくなる一方で、頭のなかで割れ鐘を叩かれているようだ。あまりの痛さに手が汗ばんでいる。
ーー・・・から、魔・・・を頼んだぞ。
あーー! マジ痛ぇえ!
何だよこれ吐き気までしてきたぞ。この幻聴、オレの神経をしっかり逆撫でしやがる。
もう勘弁してくれ、やめろ、やめろ!
「やめろぉーー!」
頭痛がピタリ。あー……良かったー。頭痛持ちのヤツってこんなに辛いのかよ。いやほんと大変だな。
少女と男達がピタリ。ん、どったの? オレのこと凝視しちゃって。
レイラもピタリ。なんだお前ら、それ流行ってんの?
「てめぇ、このガキを横取りする気か? そうはさせねえぞ!」
「あん? 横取りっつうか、自分の体調の都合のせいで」
「わけわかんねえ事言ってんじゃねえ。ブッ殺してやる!」
まぁお下品、野蛮人。ブッ殺すですって。沸点も低すぎるし、煽り耐性なさそう。
オレに向かってシャムシールだのブロードソードだの、不揃いな武器の刃が迫ってくる。これ対処しなきゃダメだよな、クソめんどくせぇ。
しょうがないから突き出されら刃物をトントントントン! まな板の上の食材のように、突きつけられた刃を輪切りにしてやった。
驚いて固まった間抜けヅラのど頭をターン、ターン、ターーン! リズミカルに、そして丁寧に蹴り飛ばした。
3人は錐揉みしながら吹っ飛んで、数本の木をなぎ倒して、1本の大木にぶち当たってようやく止まった。
正確に蹴り飛ばしたおかげか、綺麗に1列に並んでノビている。お行儀良し。
そして戦闘終了。
状況の変化についていけず、呆然としていた少女がおずおずと話しかけてきた。
「あ、あの……助けてくれるんですか?」
「ああ、そうしないといけないらしい。オレの健やかさの為に助けた」
「??? あ、ありがとうございます」
釈然としないながらもお礼を言われた。まぁそうか、オレの説明じゃわけわかんないよな。
でもいいじゃん、助かったんだからさ。難しい話は置いときなって。
ここでようやくレイラが声を発した。今まで固まってたのかよ?
「ちょっとタクミ! もしかして魔人族の肩持つ気?!」
「そうだな、成り行きというか……半強制というか」
「あのね、この世界で魔人と関わって生きていけると思う? どこの国行っても捕まるか殺されるかしちゃうわよ」
「そうか、じゃあそんな旅にお前は連れていけないな。オレはこの娘と旅を続けるから、お前は故郷に……」
「差別反対! 魔人はトモダチ! 私はたった今、博愛主義者に転向したわよ!」
相変わらずの手のひら返し、コイツのはキレが違うな。
まだ疑い半分の魔人の少女の手を取り、必死に取り繕うレイラを伴って、オレたちは森の奥へと消えていった。
そして、書き置きのように例の幻聴が最後に聞こえた。頭痛の伴わない、メッセージだけが。
ーーオレの力をやるから、魔人族を頼んだぞ。
「ま、魔人!? なんでこんな所に!」
「な、ここにも人間がっ!」
「レイラ、この子供が魔人なのか?」
「この髪見ればわかるじゃない、どう見てもそうでしょ!」
へー、随分目を引くと思ったら種族のシンボルだったか。確かに見てきた中でこんな頭したヤツは居なかったな。
少女はオレたちと一定の距離を取りながら威嚇している。警戒度マックスって感じだ。キバを剥いてはいるが全然怖くない。子猫にシャーって言われたときと同じ気分だな。
にらみ合いを続けていると、同じ場所から屈強な男達が現れた。そいつらは少女の髪を乱暴に掴んだ。
「このガキ、もう逃がさねえぞ! 手間かけさせんじゃねえ!」
「街の目前で逃げられるなんて、危なかったな。冷や汗かいちまったよ」
「アンタらコイツの足止めしてくれたのか? ありがとよ」
男達は少女を引きずるようにして立ち去ろうとした。少女は抵抗するが、体格差のせいで逃げることができない。
オレはその連中に何もせずに見送って……。
見送ろうとして……。
ズキリ。
オレの頭に痛みが走った。
昨日とは比べものにならないくらい、頭の芯から痛んだ。幻聴か空耳のような言葉とともに。
ーー・・・から、・・・を頼・・・。
一体なんだってんだ、昨日も街中で急に頭痛がしたし。それにこの声の主は誰なんだ? わるふざけにしちゃタチが悪すぎるぞ!
「離して! 離してぇ!」
「うるせぇ! 害獣のくせに人間様に逆らうんじゃねえ!」
ズキリ、ズキリ、ズキリ!
頭痛はひどくなる一方で、頭のなかで割れ鐘を叩かれているようだ。あまりの痛さに手が汗ばんでいる。
ーー・・・から、魔・・・を頼んだぞ。
あーー! マジ痛ぇえ!
何だよこれ吐き気までしてきたぞ。この幻聴、オレの神経をしっかり逆撫でしやがる。
もう勘弁してくれ、やめろ、やめろ!
「やめろぉーー!」
頭痛がピタリ。あー……良かったー。頭痛持ちのヤツってこんなに辛いのかよ。いやほんと大変だな。
少女と男達がピタリ。ん、どったの? オレのこと凝視しちゃって。
レイラもピタリ。なんだお前ら、それ流行ってんの?
「てめぇ、このガキを横取りする気か? そうはさせねえぞ!」
「あん? 横取りっつうか、自分の体調の都合のせいで」
「わけわかんねえ事言ってんじゃねえ。ブッ殺してやる!」
まぁお下品、野蛮人。ブッ殺すですって。沸点も低すぎるし、煽り耐性なさそう。
オレに向かってシャムシールだのブロードソードだの、不揃いな武器の刃が迫ってくる。これ対処しなきゃダメだよな、クソめんどくせぇ。
しょうがないから突き出されら刃物をトントントントン! まな板の上の食材のように、突きつけられた刃を輪切りにしてやった。
驚いて固まった間抜けヅラのど頭をターン、ターン、ターーン! リズミカルに、そして丁寧に蹴り飛ばした。
3人は錐揉みしながら吹っ飛んで、数本の木をなぎ倒して、1本の大木にぶち当たってようやく止まった。
正確に蹴り飛ばしたおかげか、綺麗に1列に並んでノビている。お行儀良し。
そして戦闘終了。
状況の変化についていけず、呆然としていた少女がおずおずと話しかけてきた。
「あ、あの……助けてくれるんですか?」
「ああ、そうしないといけないらしい。オレの健やかさの為に助けた」
「??? あ、ありがとうございます」
釈然としないながらもお礼を言われた。まぁそうか、オレの説明じゃわけわかんないよな。
でもいいじゃん、助かったんだからさ。難しい話は置いときなって。
ここでようやくレイラが声を発した。今まで固まってたのかよ?
「ちょっとタクミ! もしかして魔人族の肩持つ気?!」
「そうだな、成り行きというか……半強制というか」
「あのね、この世界で魔人と関わって生きていけると思う? どこの国行っても捕まるか殺されるかしちゃうわよ」
「そうか、じゃあそんな旅にお前は連れていけないな。オレはこの娘と旅を続けるから、お前は故郷に……」
「差別反対! 魔人はトモダチ! 私はたった今、博愛主義者に転向したわよ!」
相変わらずの手のひら返し、コイツのはキレが違うな。
まだ疑い半分の魔人の少女の手を取り、必死に取り繕うレイラを伴って、オレたちは森の奥へと消えていった。
そして、書き置きのように例の幻聴が最後に聞こえた。頭痛の伴わない、メッセージだけが。
ーーオレの力をやるから、魔人族を頼んだぞ。
0
お気に入りに追加
741
あなたにおすすめの小説
黒の創造召喚師
幾威空
ファンタジー
※2021/04/12 お気に入り登録数5,000を達成しました!ありがとうございます!
※2021/02/28 続編の連載を開始しました。
■あらすじ■
佐伯継那(さえき つぐな)16歳。彼は偶然とも奇跡的ともいえる確率と原因により死亡してしまう。しかも、神様の「手違い」によって。
そんな継那は神様から転生の権利を得、地球とは異なる異世界で第二の人生を歩む。神様からの「お詫び」にもらった(というよりぶんどった)「創造召喚魔法」というオリジナルでユニーク過ぎる魔法を引っ提げて。
自重をやめた転生者は、異世界を楽しむ
饕餮
ファンタジー
書籍発売中!
詳しくは近況ノートをご覧ください。
桐渕 有里沙ことアリサは16歳。天使のせいで異世界に転生した元日本人。
お詫びにとたくさんのスキルと、とても珍しい黒いにゃんこスライムをもらい、にゃんすらを相棒にしてその世界を旅することに。
途中で魔馬と魔鳥を助けて懐かれ、従魔契約をし、旅を続ける。
自重しないでものを作ったり、テンプレに出会ったり……。
旅を続けるうちにとある村にたどり着き、スキルを使って村の一番奥に家を建てた。
訳アリの住人たちが住む村と、そこでの暮らしはアリサに合っていたようで、人間嫌いのアリサは徐々に心を開いていく。
リュミエール世界をのんびりと冒険したり旅をしたりダンジョンに潜ったりする、スローライフ。かもしれないお話。
★最初は旅しかしていませんが、その道中でもいろいろ作ります。
★本人は自重しません。
★たまに残酷表現がありますので、苦手な方はご注意ください。
表紙は巴月のんさんに依頼し、有償で作っていただきました。
黒い猫耳の丸いものは作中に出てくる神獣・にゃんすらことにゃんこスライムです。
★カクヨムでも連載しています。カクヨム先行。
魔術師セナリアンの憂いごと
野村にれ
ファンタジー
エメラルダ王国。優秀な魔術師が多く、大陸から少し離れた場所にある島国である。
偉大なる魔術師であったシャーロット・マクレガーが災い、争いを防ぎ、魔力による弊害を律し、国の礎を作ったとされている。
シャーロットは王家に忠誠を、王家はシャーロットに忠誠を誓い、この国は栄えていった。
現在は魔力が無い者でも、生活や移動するのに便利な魔道具もあり、移住したい国でも挙げられるほどになった。
ルージエ侯爵家の次女・セナリアンは恵まれた人生だと多くの人は言うだろう。
公爵家に嫁ぎ、あまり表舞台に出る質では無かったが、経営や商品開発にも尽力した。
魔術師としても優秀であったようだが、それはただの一端でしかなかったことは、没後に判明することになる。
厄介ごとに溜息を付き、憂鬱だと文句を言いながら、日々生きていたことをほとんど知ることのないままである。
♪イキイキさん ~インフィニットコメディー! ミラクルワールド!~ 〈初日 辰みっつの刻(8時30分頃)〉
神棚 望良(かみだな もちよし)
ファンタジー
『みなさん!こんにちはっ!私の名前は、大事 守香!やっと、ネコさんに会えました!
もう、嬉しくて、嬉しくて!早速、自分のタブレットを取り出して、職場に報告しようとしたのですが・・・・・・。
あ、あと、ネコさんのご厚意で、お茶に呼ばれてしまいました!ただ、これが、もう、嬉しさの連続で・・・・・・』
追放された宮廷錬金術師、彼女が抜けた穴は誰にも埋められない~今更戻ってくれと言われても、隣国の王子様と婚約決まってたのでもう遅い~
まいめろ
ファンタジー
錬金術師のウィンリー・トレートは宮廷錬金術師として仕えていたが、王子の婚約者が錬金術師として大成したので、必要ないとして解雇されてしまった。孤児出身であるウィンリーとしては悲しい結末である。
しかし、隣国の王太子殿下によりウィンリーは救済されることになる。以前からウィンリーの実力を知っていた
王太子殿下の計らいで隣国へと招かれ、彼女はその能力を存分に振るうのだった。
そして、その成果はやがて王太子殿下との婚約話にまで発展することに。
さて、ウィンリーを解雇した王国はどうなったかというと……彼女の抜けた穴はとても補填出来ていなかった。
だからといって、戻って来てくれと言われてももう遅い……覆水盆にかえらず。
ある日仕事帰りに神様の手違いがあったが無事に転移させて貰いました。
いくみ
ファンタジー
寝てたら起こされて目を開けたら知らない場所で神様??が、君は死んだと告げられる。そして神様が、管理する世界(マジョル)に転生か転移しないかと提案され、キターファンタジーとガッツポーズする。
成宮暁彦は独身、サラリーマンだった
アラサー間近パットしない容姿で、プチオタ、完全独り身爆走中。そんな暁彦が神様に願ったのは、あり得ない位のチートの数々、神様に無理難題を言い困らせ
スキルやらetcを貰い転移し、冒険しながらスローライフを目指して楽しく暮らす場を探すお話になると?思います。
なにぶん、素人が書くお話なので
疑問やら、文章が読みにくいかも知れませんが、暖かい目でお読み頂けたらと思います。
あと、とりあえずR15指定にさせて頂きます。
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
とあるおっさんのVRMMO活動記
椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。
念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。
戦闘は生々しい表現も含みます。
のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。
また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり
一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が
お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。
また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や
無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる