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第6話 完全に浮浪者
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あれからしばらく街道を進んだ。
魔人王復活の噂の効果はテキメンなようで、数えきれない程の荷馬車がオレ達を追い越していった。
レイラの話では数百年も昔の人物なんだが、いまだに影響力が強いようだ。おとぎ話上の存在だとは考えないらしい。
ようやくセントラル・ミレイアと言う名の都市についた。円形の石壁に囲まれた、良くある地方都市だった。
整備された大通りの左右には石造りの商店が並び、様々な客引きの声が聞こえる。建物の間を埋めるように露店も並び、民芸品やら装飾品なども売られていた。レイラがちらちら目移りさせているが、オレは足を止めずに歩き去った。
地方都市とは思えない賑わいで、往来は人で埋め尽くされている。例の噂で逃げてきた人間も多分に含まれているんだろう。街の入り口は荷馬車で行列ができていた。
魔人王ってのはそんなおっかないのかねえ? そんな奴らを横目に歩き続け、街の中心部にたどり着いた。
そこは円形の噴水付きの広場が作られていて、噴水に背を向けるように椅子がいくつも置かれていた。普段であれば住民の憩いの場だったり、旅人が気を休めるための休憩スポットになるんだろう。今は物々しい演説をするものが居て、辺りは緊張感に包まれている。
ーー領民たちよ、魔人王の復活は近い。しかし恐れるばかりで良いのか!
演説をしているのは若い騎士のようだ。正義感の塊のような真っ直ぐな瞳をした、融通がきかなそうな取っ付きにくいタイプだ。
それでも説得力や安心感があるらしく、道行く人は足を止めて彼の演説を聞き続けた。
ーー我らの祖先は見事、魔人王を撃退した。あれから我ら人類の文明や技術は著しく成長した。もはや魔人どもなど敵ではあるまい! 事実、我が騎士団は魔人どもが巣食う拠点を、いくつも叩き潰している。魔人が人類より優位に立っていた時代は終わったのだ!
そこまで耳にして、オレの頭に鋭い痛みが走った。電気が頭を駆け抜けたようにツキィンとした頭痛だ。もしかして風邪でも引いたのかもしれない。体を休めようとして裏路地に入ると、急に痛みが治まった。一体なんだったんだ?
「ねぇタクミ、大丈夫? さっきまで顔真っ青だったよ?」
「ああ、平気だ。疲れてんのかもな」
「まぁ大丈夫ならいいんだけど。それでこれからどうするの?」
「とりあえず今日の寝床を探そうか」
「そう、じゃあ宿屋に向かうのね」
「宿? お前金持ってんのか?」
「え、持ってないわよ。慌てて出てきたんだもん。え、もしかしてタクミも?」
「ねえぞ。サイフすらねえ」
「ええーーー!?」
言葉を失うってこういう事を言うんだな。目も口も大きく開けたまま固まってるぞ。絵に残したいくらい良い表情だ。
「じゃあどうするの? 宿は? ご飯は?!」
「この辺の路地は屋根があるからいけるだろ、メシは今日森で拾ったクルミとか食えばいい」
「そんな浮浪者みたいな真似なんでしなきゃいけないのよ! てことはこの街で今後の食料も買えないじゃない、有りえないわよ!」
「お、そうか。オレとスタイルが合わないな。じゃあお前は自分の家にかえ……」
「最近痩せたかったから木の実だけのご飯くらいが丁度いいわね、この路地も寝るのに十分なスペースがあるし、今日はここでいいんじゃない?」
なんていうお手本のような手のひら返し。こいつお嬢様暮らしのクセに以外と根性あるな。過酷な生活を味あわせて実家に帰そうと思ってたんだが。
レイラが言ったように、文字通りオレたちは無一文の浮浪者だ。面倒だから働いて稼ぐ気はない。夜までここで横になって、夜になったら普通に寝よう。ごろ寝サイコー。
その夜にオレは珍しく夢を見た。妙にリアリティのある、あやふやな部分のない不思議な夢を。
魔人王復活の噂の効果はテキメンなようで、数えきれない程の荷馬車がオレ達を追い越していった。
レイラの話では数百年も昔の人物なんだが、いまだに影響力が強いようだ。おとぎ話上の存在だとは考えないらしい。
ようやくセントラル・ミレイアと言う名の都市についた。円形の石壁に囲まれた、良くある地方都市だった。
整備された大通りの左右には石造りの商店が並び、様々な客引きの声が聞こえる。建物の間を埋めるように露店も並び、民芸品やら装飾品なども売られていた。レイラがちらちら目移りさせているが、オレは足を止めずに歩き去った。
地方都市とは思えない賑わいで、往来は人で埋め尽くされている。例の噂で逃げてきた人間も多分に含まれているんだろう。街の入り口は荷馬車で行列ができていた。
魔人王ってのはそんなおっかないのかねえ? そんな奴らを横目に歩き続け、街の中心部にたどり着いた。
そこは円形の噴水付きの広場が作られていて、噴水に背を向けるように椅子がいくつも置かれていた。普段であれば住民の憩いの場だったり、旅人が気を休めるための休憩スポットになるんだろう。今は物々しい演説をするものが居て、辺りは緊張感に包まれている。
ーー領民たちよ、魔人王の復活は近い。しかし恐れるばかりで良いのか!
演説をしているのは若い騎士のようだ。正義感の塊のような真っ直ぐな瞳をした、融通がきかなそうな取っ付きにくいタイプだ。
それでも説得力や安心感があるらしく、道行く人は足を止めて彼の演説を聞き続けた。
ーー我らの祖先は見事、魔人王を撃退した。あれから我ら人類の文明や技術は著しく成長した。もはや魔人どもなど敵ではあるまい! 事実、我が騎士団は魔人どもが巣食う拠点を、いくつも叩き潰している。魔人が人類より優位に立っていた時代は終わったのだ!
そこまで耳にして、オレの頭に鋭い痛みが走った。電気が頭を駆け抜けたようにツキィンとした頭痛だ。もしかして風邪でも引いたのかもしれない。体を休めようとして裏路地に入ると、急に痛みが治まった。一体なんだったんだ?
「ねぇタクミ、大丈夫? さっきまで顔真っ青だったよ?」
「ああ、平気だ。疲れてんのかもな」
「まぁ大丈夫ならいいんだけど。それでこれからどうするの?」
「とりあえず今日の寝床を探そうか」
「そう、じゃあ宿屋に向かうのね」
「宿? お前金持ってんのか?」
「え、持ってないわよ。慌てて出てきたんだもん。え、もしかしてタクミも?」
「ねえぞ。サイフすらねえ」
「ええーーー!?」
言葉を失うってこういう事を言うんだな。目も口も大きく開けたまま固まってるぞ。絵に残したいくらい良い表情だ。
「じゃあどうするの? 宿は? ご飯は?!」
「この辺の路地は屋根があるからいけるだろ、メシは今日森で拾ったクルミとか食えばいい」
「そんな浮浪者みたいな真似なんでしなきゃいけないのよ! てことはこの街で今後の食料も買えないじゃない、有りえないわよ!」
「お、そうか。オレとスタイルが合わないな。じゃあお前は自分の家にかえ……」
「最近痩せたかったから木の実だけのご飯くらいが丁度いいわね、この路地も寝るのに十分なスペースがあるし、今日はここでいいんじゃない?」
なんていうお手本のような手のひら返し。こいつお嬢様暮らしのクセに以外と根性あるな。過酷な生活を味あわせて実家に帰そうと思ってたんだが。
レイラが言ったように、文字通りオレたちは無一文の浮浪者だ。面倒だから働いて稼ぐ気はない。夜までここで横になって、夜になったら普通に寝よう。ごろ寝サイコー。
その夜にオレは珍しく夢を見た。妙にリアリティのある、あやふやな部分のない不思議な夢を。
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