シブシブ異世界!!

文字の大きさ
上 下
7 / 9
来たよ。異世界。

異世界だし!

しおりを挟む
 体が宙へと引っ張り上げられ、さながらジェットコースターのような力が加わる。
 ――ヤダヤダヤダ! なになになに!! 怖い怖い怖い!!!
 ぎゅーっと目を瞑っていたが、直ぐに力が弱まり、トスンと尻もちをついた。

 ――ここは……
 辺りを見渡す萌香。辺りは薄暗く夕方か明け方か――。
 ――森? 林?
 土に草の匂いがする。やや湿り気があるので雨上がりであろうか。

「はぁぁぁぁ」と大きなため息をつく萌香。
 ――あーあ、もーーー。

 これは街の外れからスタートパターンだなと把握する。お城からスタートが良かったなぁと呟く。
「おお!召喚に応えし勇者よ! とか。王様に言われちゃってさ。あーあ……。 まずは街を目指さないとね。冒険者ギルドってやつか~。あー、あとその前に街への城門があって、そこで一悶着あったりする事もあるんだよね~。メンドイ事ないといいけど…… まぁ、勇者で無双って事だから楽勝っしょ!」

 一先ずは立ち上がり、怪我をしていないか確認する。

「え……っ 何で……?」
 萌香は自分の服装が高校時代のブレザーの制服に変わっている事に気付く。
「は!? 高校の制服じゃん。 何で…… もお卒業してるっつーの! ……コレってイタクない……? …………まぁ、可愛いからいいけど……」

 シンとしている静けさに耐えられず独りごちる萌香。――何故高校の制服なのかはさておき。

 これから夜になるのか、それとも夜が明けるのか。努めて明るく振る舞うが、これから夜となる場合、早くこの森?から抜ける必要があると感じている。また夜はきっと城門が閉ざされているであろう。

 ――急ごう……。 でもどっちに進むのが正解なのか……。

「あ!そうだ!!」
 パッと閃き途端に不安が消し飛ぶ。萌香は声高に叫ぶ。
「ステータス・オープン!!」
「…………」

 萌香はスッと息を吸い、右手を前に出す
「ステータス・オープン!!」
「………………」

 何もおこりはしない。

「は、何で…… え、ちょ、まってまって…… ステータスは……!?」
 嫌な汗が出てくるのを感じる。鼓動も早くなる。

 試しにと、お決まりの技名を叫んでみる。
「ファイヤーボール!」
「………………」

「ファイーボール!」
「………………」


 辺りは変わらずシンとしている。

「どーすんの……これ…………アイテムボックスも無い……」

 辺りはより一層暗くなってきているようだ。
「夜になる……」

 どうしようどうしようと焦り始める。兎にも角にもひらけた場所に移動したいと、生い茂る草を踏み締め歩を進める。
 よく見ると、眼前に細めの道が左右へと伸びていた。元は獣道であったのであろうか。
「助かったー…… ただ、右に行くべきか左に行くべきか……」

 目を凝らす。どうやら右への道が降りになっているようだ。
「よし。降ろう」

 不安に駆られながらも道を進む萌香。周りはよりいっそう暗さを増してくる。
「あー……  熊とか出ませんように!!」

 ――いや、待って。熊どころじゃないっ。 これってほら……! ゴブリンだ。ゴブリンだよ! こーゆー時に現れるのは!! それで犯されたりしてさ…… ヤダヤダヤダ!!!! 何もおこりませんように!!!! もおーーーーー! チートで無双はどーなってんのーーーー!!!!

 心の中で騒ぐ。熊なら音を出した方が良いのであろうが、魔物相手の場合は見つからないよう静かにしているべきだろうと萌香は思った。

 いや待てよ……と、一つの考えに行き当たる。
 ステータスも魔法もでない。勇者っぽい力も感じない。

 ――もしかして、異世界じゃないってありえる???
 ならば納得だと。思い込もうとするが、直ぐにここが地球ではない事を確信する。

 やや空がひらけてきたので見上げると月が二つ並んでいた。
 ――あーあー。ですよねー……。
 地球ではない事を確信し項垂れる。

 ――だとしたら、今の状況、マヂヤバいっ……。
 ホントに何事もおこりませんようにと強く願う萌香。

「あー…… せめて男だったら……」
 女の身では危険が倍増だと感じ、ポツリと呟く。
 すると何やら言葉が頭に浮かんできた。

 ――ん? 
 なんのこっちゃと思ったが、自然と口から発せられた。

「チトパイチトパイチンチンチン……」
 いい終わるやいなやポワンと煙に巻かれる。
 ――な、なに?
 軽く宙に浮いた感じがし、身体がぞわっとした。

 うわっとなる萌香。
 ――なに……?

 シュワっと煙は消えてゆく。どうやら自分から出ていたようだ。
 そして何だか体に違和感を感じる。
 ――んん?
 ――なんか、あれ、服が違くない??
 制服ではなくなっている事に気付く。ズボンに変わっている。

 ――いや、まってまってまって! まって!!! 服だけじゃなくない……?
 腕を伸ばし、足を見、体を捻る。

 ――体……なんか、、一回り小さくなってない???
 くるくると回ってみる萌香。頭に手をやると髪も短くなっている。

 ――んんんん? なになに? どーゆーこと???
 ハッとズボンを下げ覗き見ると、そこには見慣れぬ部品がぶら下がっていた。

 ――んーーーー!? これって!? これって! チンじゃん!! ティンティンじゃん!!! ……アタシ、 今、 男なのーーーー!????



 おかしな言葉を口にした萌香は、男の姿へと変わっていたのでした。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

底辺を生きた者、不老不死になり異世界で過ごす(旧 落ちこぼれニート)

ファンタジー
 罪を犯し、空腹で死亡したユウト・サトウは、転生して不老不死になった。  浮遊城の管理者の傍ら、冒険者としても生活をしていくユウト。  突如として空に浮かぶ巨大な島が現れた異世界の人々は混乱し、各国は様々な方法で接触を試みる。  これは、ユウトが人生をやり直し、スローライフを楽しむ物語である。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

異世界楽々通販サバイバル

shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。 近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。 そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。 そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。 しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。 「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

不幸少女は二度目の人生でイージーモードを望む

天宮暁
ファンタジー
人生なんてクソゲーだ。 それが、16年生きてきた私の結論。 でもまさか、こんな結末を迎えるなんて……。 しかし、非業の死を遂げた私をあわれんで、神様が異世界に転生させてあげようと言ってきた。 けど私、もう人生なんて結構なんですけど! ところが、異世界への転生はキャンセル不能。私はむりやりチートを持たされ、異世界に放り出されることになってしまう。 手に入れたチートは「難易度変更」。世界の難易度を強制的に変える力を使い、冒険者となった私はダンジョンに潜る。 今度こそ幸せな人生を送れるといいんだけど……。

処理中です...