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第11章「俺の朝を、きみに」
第85話「玉(ぎょく)のネックレス」
しおりを挟む二階の家族用リビングに着くと、今野はテキパキとDVDの準備を始めた。
「環ちゃん、城見《しろみ》監督の映画は、どれを見た?」
「あ、”アオモリ”を見ました。強盗犯に間違えられた人がすごいカーチェイスで逃げ出す映画です」
「あれね、あれはかなり初期だな。じゃあちょうどいい。”アオモリ”の中に、五歳くらいの女の子が出てきたの、覚えている?」
環は思い出した。
「ええ。山の中のおうちの子ですね。少ししか出なかったけれど、印象的な役でした」
今野はDVDを機械に入れ、リモコンをもってソファへやってきた。環の隣に座る。
画面が動きはじめた。
今野が説明する。
「この映画は”アオモリ”の二年後の作品。
城見監督はmこのころ香港の映画会社と契約をしていて、オール香港ロケで撮っている。
内容はドタバタコメディなんだけど家族のストーリーを上手に織り込んであって、映画祭でも高評価されたんだ。
おもしろい映画なんだけど、今は時間がないから……」
今野は早送りをし、ある場面を選び出した。
カーチェイスのシーンで、屋根が吹き飛んだ車にが乗り、コミカルに運転しつつ、後部座席で抱き合う若い女性と七歳くらいの女の子にマシンガンのような声で話しかけている。
追手らしき車が迫ると、後部座席にいた幼い女の子がすっくと立ちあがり、手にしたパチンコで肉薄する追手の車に石をぶつけた。
パリッと追手の車はフロントガラスにひびが入り、大げさに運河に向かって落ちていった。まさにドタバタコメディ映画である。
今野はいったん画面をとめ、ほんの少しだけ映画を戻した。
幼い少女が後部座席で立ち上がり、パチンコをかまえている場面だ。
「あれ、見えるかな。あの女の子の首に下がっているやつ」
「くびに? あ、ネックレスですか。変わった形ですね」
「次のシーンになると、もっとはっきりわかるよ」
場面が切り替わったタイミングで再び画面が止まる。環はを乗り出した。
「ネックレスの飾りは、輪ですか? 透明感のあるものですね。素材はガラス?」
今野も、じっと画面に目を凝らしつつ、
「いや。”玉《ぎょく》”なんだ。
ほら、白い翡翠《ひすい》みたいなやつ。あれに穴をあけて輪にしたものみたいなんだ」
そして考え込みつつ、今野は言った。
「この玉のペンダントが、城見監督の映画には、いたるところに出てくるんだ」
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