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第11章「最深部」
第124話「佐江と、会ったのか、おまえ」
しおりを挟む(UnsplashのDominick Valenciaが撮影)
深沢洋輔は、深夜のコルヌイエホテルのスタッフ用喫煙エリアで、色気のありすぎる顔をゆがめて清春をのぞきこんだ。
「なあ、キヨ。今のお前を一人にはできねえよ。倒れそうなツラを下げて、仕事づけだ。俺と真乃《まの》のためだと思って、飯くらい食えや」
「大丈夫だよ、うちの社食《しゃしょく》で食っている」
「つまんねえ嘘つくなって。この三週間ばかり、お前を社食で見た奴なんか、いないよ。調べはついてんだ」
「なんだよ、おれ、容疑者みたいだな」
さすがに清春も笑いだした。
モデルばりの美貌のバーテンダーが、よれよれのトレンチコートを着て、聞き込みをしているシーンが勝手に頭に浮かんできたのだ。
そこへ、洋輔が続けていった。
「まいっているのはわかるけどな、少しでいいから、自分の身体をいたわれよ。佐江さんもお前を心配してて―――」
「さえ?」
清春が洋輔の顔を見ると、あきらかに失言したという顔をしていた。そのうろたえぶりが、清春の中に根拠のない不安を生み出した。
「佐江と、会ったのか、おまえ」
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