上 下
24 / 153
第3章「ラヴィン・ユー」

第24話「おれのものに、してしまいたい」

しおりを挟む


(Tú AnhによるPixabayからの画像)

 
 清春は佐江のうなじに、軽く歯を当てた。佐江の身体がひくりとして、隠しきれない快楽をつたえて来る。
 
「佐江。何も言わないと、跡をつけるぞ」

 本当は、佐江の全身あちこちに清春のしるしをつけたい。身体に残ったキスマークは、たったひとつの事実を声高に言い立てるはずだ。
 ――佐江が、真乃だけでなく清春自身をも受け入れた事実を。 

 今この瞬間、たとえ佐江の愛情が真乃のものであっても、佐江の身体は清春だけのものだった。。
 しかし、佐江は甘いため息のあいだに

「デコルテにキスの跡はだめ。二の腕と、背中もだめ」

 と言い放った。清春は佐江の甘い声をもっと聴きたくて、つまらないことを話し続ける。

「デコルテも、二の腕も、背中もだめ?いったい、どんな服を着るつもりだ」

 佐江が、背中の空いたドレスを着ているところを考えると、清春はもうたまらなくなる。同時に、嫉妬で目の前がくらんできた。

 この女の背中を、おれ以外の男に見せたくない。
 おれの、ものだ。

 清春がこっそり佐江の背中にキスマークを残そうとすると、彼女が厳しい声で、もう一度、ダメと言った。

「これから、初夏もののコレクションが始まるんです。背中の露出があるアイテムも着るの。ぜったいに、ダメ」
「ずいぶん色っぽい服だな」

 笑い声を交えて、清春は言った。

「じゃあ、ギリギリのところにしてやるよ」

 きゅっと、清春は強めのキスを佐江の乳房に残した。

「さすがに、ここが見える服は売らないだろ?」

 くくっと清春は笑い声をもらした。
 その声に佐江は驚いたようだが、もっと驚いたのは清春自身だ。

 おれは、セックスの最中に笑っているのか。
 まだ、佐江の中に入ってもいないのに。

 入りたい、と清春は思った。
 すでに清春の指を受け入れている佐江は温かくうるみ、いつ清春が押し入ってもいいように準備が出来ている。
 このまま進めば、佐江の身体はやわらかく清春を飲みこむだろう。

 だが、それではなんの避妊手段も講じずに佐江を抱くことになる。
 そしてコンドームは、このベッドから数歩離れた清春のブリーフケースの中だ。


 清春は、これまでどんな女と寝るときでも必ず避妊をして来た。それは清春の信念であり、つきあっている女性に対するリスペクトでもあった。
 清春の中には、望まぬ妊娠をして一生を棒に振った母親の記憶が、つねにある。

 手を止めて、避妊をしろ。女の身体にリスクを残すな、と冷静に叫ぶ清春がいる。

 何の予防策も講じずに佐江を抱くのは、佐江に無用の負担を強いることになる。それは清春にも、十分にわかっているのだ。
 それでも今、愛撫の手を止めることが清春には怖い。

 愛撫がとまり佐江が正気に返ったら、彼女は、もう二度と清春を清春のまま受け入れてくれないだろう。
 このまま、佐江の目が欲情にけむっているあいだに、決定的な悦楽を佐江の身体に刻み込んでしまいたい。

 もう、信念も相手への配慮もどうなってもいいほど、清春は、佐江が欲しくなっていた。
 ーーなんとかなる、と清春は自分に言い聞かせた。

 なんとかなる。きっと大丈夫だ。とにかく佐江を――
 おれのものに、してしまいたい。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

彼女の母は蜜の味

緋山悠希
恋愛
ある日、彼女の深雪からお母さんを買い物に連れて行ってあげて欲しいと頼まれる。密かに綺麗なお母さんとの2人の時間に期待を抱きながら「別にいいよ」と優しい彼氏を演じる健二。そんな健二に待っていたのは大人の女性の洗礼だった…

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

【R18】こんな産婦人科のお医者さんがいたら♡妄想エロシチュエーション短編作品♡

雪村 里帆
恋愛
ある日、産婦人科に訪れるとそこには顔を見たら赤面してしまう程のイケメン先生がいて…!?何故か看護師もいないし2人きり…エコー検査なのに触診されてしまい…?雪村里帆の妄想エロシチュエーション短編。完全フィクションでお送り致します!

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

ねえ、私の本性を暴いてよ♡ オナニークラブで働く女子大生

花野りら
恋愛
オナニークラブとは、個室で男性客のオナニーを見てあげたり手コキする風俗店のひとつ。 女子大生がエッチなアルバイトをしているという背徳感! イケナイことをしている羞恥プレイからの過激なセックスシーンは必読♡

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

処理中です...