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第3章「ラヴィン・ユー」
第24話「おれのものに、してしまいたい」
しおりを挟む(Tú AnhによるPixabayからの画像)
清春は佐江のうなじに、軽く歯を当てた。佐江の身体がひくりとして、隠しきれない快楽をつたえて来る。
「佐江。何も言わないと、跡をつけるぞ」
本当は、佐江の全身あちこちに清春のしるしをつけたい。身体に残ったキスマークは、たったひとつの事実を声高に言い立てるはずだ。
――佐江が、真乃だけでなく清春自身をも受け入れた事実を。
今この瞬間、たとえ佐江の愛情が真乃のものであっても、佐江の身体は清春だけのものだった。。
しかし、佐江は甘いため息のあいだに
「デコルテにキスの跡はだめ。二の腕と、背中もだめ」
と言い放った。清春は佐江の甘い声をもっと聴きたくて、つまらないことを話し続ける。
「デコルテも、二の腕も、背中もだめ?いったい、どんな服を着るつもりだ」
佐江が、背中の空いたドレスを着ているところを考えると、清春はもうたまらなくなる。同時に、嫉妬で目の前がくらんできた。
この女の背中を、おれ以外の男に見せたくない。
おれの、ものだ。
清春がこっそり佐江の背中にキスマークを残そうとすると、彼女が厳しい声で、もう一度、ダメと言った。
「これから、初夏もののコレクションが始まるんです。背中の露出があるアイテムも着るの。ぜったいに、ダメ」
「ずいぶん色っぽい服だな」
笑い声を交えて、清春は言った。
「じゃあ、ギリギリのところにしてやるよ」
きゅっと、清春は強めのキスを佐江の乳房に残した。
「さすがに、ここが見える服は売らないだろ?」
くくっと清春は笑い声をもらした。
その声に佐江は驚いたようだが、もっと驚いたのは清春自身だ。
おれは、セックスの最中に笑っているのか。
まだ、佐江の中に入ってもいないのに。
入りたい、と清春は思った。
すでに清春の指を受け入れている佐江は温かくうるみ、いつ清春が押し入ってもいいように準備が出来ている。
このまま進めば、佐江の身体はやわらかく清春を飲みこむだろう。
だが、それではなんの避妊手段も講じずに佐江を抱くことになる。
そしてコンドームは、このベッドから数歩離れた清春のブリーフケースの中だ。
清春は、これまでどんな女と寝るときでも必ず避妊をして来た。それは清春の信念であり、つきあっている女性に対するリスペクトでもあった。
清春の中には、望まぬ妊娠をして一生を棒に振った母親の記憶が、つねにある。
手を止めて、避妊をしろ。女の身体にリスクを残すな、と冷静に叫ぶ清春がいる。
何の予防策も講じずに佐江を抱くのは、佐江に無用の負担を強いることになる。それは清春にも、十分にわかっているのだ。
それでも今、愛撫の手を止めることが清春には怖い。
愛撫がとまり佐江が正気に返ったら、彼女は、もう二度と清春を清春のまま受け入れてくれないだろう。
このまま、佐江の目が欲情にけむっているあいだに、決定的な悦楽を佐江の身体に刻み込んでしまいたい。
もう、信念も相手への配慮もどうなってもいいほど、清春は、佐江が欲しくなっていた。
ーーなんとかなる、と清春は自分に言い聞かせた。
なんとかなる。きっと大丈夫だ。とにかく佐江を――
おれのものに、してしまいたい。
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