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2 父の公爵の怒り
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「コルデリア! このバカ娘が!」
モランシーの宮殿に、父の王の怒声が響く。大混乱になった、卒業パーティー会場から抜け出し、故郷モランシーへ帰ると、怒りの形相の父が待ち構えていた。
「お前は一体、何てことしてくれたんだ!」
もちろん、私にも言いたいことはあった。
「お父様こそ! 私にいったいどのような魔法をお授けになりましたの?」
「なんだと? お前は、自分が教えられた魔法も理解しておらんかったのか!?」
「あんな難しい呪文、丸暗記するだけで精一杯でしたわ!」
「そうだった。お前のお脳が軽いのを、すっかり忘れていた」
父は、深いため息を吐いた。
「わしがお前に教えたのは、お前が魅力的で、賢そうで、その上、グラマラスな女性に見える幻惑魔法なのだよ」
幻惑? ええと。幻惑しなければ、私は、魅力的で賢そうに見えないわけね。
でも……。
「グラマラスはどうかと思いますわ。確かに、エリザベーヌは爆乳だけど、あれは、肩が凝りそうで、私的にはNGですわ」
私が言い返すと、父は激昂した。
「お前の好みなど、聞いておらぬわ! グラマーは全哺乳類の憧れなのだ。ジュリアン殿下は、ことのほか、乳のでかい女性がお好みだと、スパイが言っておった」
だからあっさり、エリザベーヌに、持っていかれちゃったわけね。
「お父様。スパイまで放っていらっしゃったんですの?」
「不肖の娘の為なら、親は、何でもするのだぞ」
「お父様……」
ここはやっぱり、感動するところよね?
「それなのに、コルデリア。お前は、いったいどこをどう、言い間違えて……」
父は声を詰まらせた。
心当たりならある。「アイ」と「イーッ」だ。
「きっと、オウムが教え間違ったんですわ」
そ知らぬ顔で、私は答えた。これも、父の為を思っての、優しい嘘だ。ここで娘のミスを知ったら、あまりの不甲斐なさに、父はさらに怒り狂うだろう。脳の血管でも詰まらせたら、大変だ。
「うぬ。オウムめ」
ぎりぎりと父は歯ぎしりした。
「さっそく鍋にして食ってやるわ」
「私は、遠慮しておきますわ」
オウムは、毎度毎度、間違いを指摘してくれた。本来なら、鍋にされるのは、私の方なのだ。危ない、危ない。
「ロタリンギア王は、さぞやお怒りであろう。大切な第一王子を、あのような……」
父は喉を詰まらせた。
「もしや、仕返しに、わが領邦へ攻め入って来るやもしれぬ」
「ジュリアン殿下は、モランシーとの防衛協定は白紙に戻すって、おっしゃってましたわ」
「ああ!」
父は頭を抱えた。
「婚約が破棄された以上、それは覚悟していた。しかし、まさか、ジュリアン殿下が……。全くお前は、なんということをしてくれたんだ!」
王座から殆ど崩れ落ちそうになった父は、寸前で、足を踏ん張った。
「絶望している場合ではない。全軍配備! ロタリンギアからの攻撃に備えるのだ。たとえ最後の一兵卒となろうとも、モランシーを守り抜け!」
「お父様。それは、無理なんじゃ……国力が違いすぎますわ!」
「うるさい! 誰のせいだと思っておるのだ! お前が、呪文を言い間違えたせいだぞ!」
モランシーの宮殿に、父の王の怒声が響く。大混乱になった、卒業パーティー会場から抜け出し、故郷モランシーへ帰ると、怒りの形相の父が待ち構えていた。
「お前は一体、何てことしてくれたんだ!」
もちろん、私にも言いたいことはあった。
「お父様こそ! 私にいったいどのような魔法をお授けになりましたの?」
「なんだと? お前は、自分が教えられた魔法も理解しておらんかったのか!?」
「あんな難しい呪文、丸暗記するだけで精一杯でしたわ!」
「そうだった。お前のお脳が軽いのを、すっかり忘れていた」
父は、深いため息を吐いた。
「わしがお前に教えたのは、お前が魅力的で、賢そうで、その上、グラマラスな女性に見える幻惑魔法なのだよ」
幻惑? ええと。幻惑しなければ、私は、魅力的で賢そうに見えないわけね。
でも……。
「グラマラスはどうかと思いますわ。確かに、エリザベーヌは爆乳だけど、あれは、肩が凝りそうで、私的にはNGですわ」
私が言い返すと、父は激昂した。
「お前の好みなど、聞いておらぬわ! グラマーは全哺乳類の憧れなのだ。ジュリアン殿下は、ことのほか、乳のでかい女性がお好みだと、スパイが言っておった」
だからあっさり、エリザベーヌに、持っていかれちゃったわけね。
「お父様。スパイまで放っていらっしゃったんですの?」
「不肖の娘の為なら、親は、何でもするのだぞ」
「お父様……」
ここはやっぱり、感動するところよね?
「それなのに、コルデリア。お前は、いったいどこをどう、言い間違えて……」
父は声を詰まらせた。
心当たりならある。「アイ」と「イーッ」だ。
「きっと、オウムが教え間違ったんですわ」
そ知らぬ顔で、私は答えた。これも、父の為を思っての、優しい嘘だ。ここで娘のミスを知ったら、あまりの不甲斐なさに、父はさらに怒り狂うだろう。脳の血管でも詰まらせたら、大変だ。
「うぬ。オウムめ」
ぎりぎりと父は歯ぎしりした。
「さっそく鍋にして食ってやるわ」
「私は、遠慮しておきますわ」
オウムは、毎度毎度、間違いを指摘してくれた。本来なら、鍋にされるのは、私の方なのだ。危ない、危ない。
「ロタリンギア王は、さぞやお怒りであろう。大切な第一王子を、あのような……」
父は喉を詰まらせた。
「もしや、仕返しに、わが領邦へ攻め入って来るやもしれぬ」
「ジュリアン殿下は、モランシーとの防衛協定は白紙に戻すって、おっしゃってましたわ」
「ああ!」
父は頭を抱えた。
「婚約が破棄された以上、それは覚悟していた。しかし、まさか、ジュリアン殿下が……。全くお前は、なんということをしてくれたんだ!」
王座から殆ど崩れ落ちそうになった父は、寸前で、足を踏ん張った。
「絶望している場合ではない。全軍配備! ロタリンギアからの攻撃に備えるのだ。たとえ最後の一兵卒となろうとも、モランシーを守り抜け!」
「お父様。それは、無理なんじゃ……国力が違いすぎますわ!」
「うるさい! 誰のせいだと思っておるのだ! お前が、呪文を言い間違えたせいだぞ!」
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