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7、夢
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夢を見た。
私はまだ産まれたばかりで、歩くことさえもままならない。言葉も当然話せない。ベビーベッドの中から、窓の外を眺めるだけ。
けれども、目にする景色は色鮮やかで、希望に満ち、やわらかな光がこぼれている。
ああ、今から私はこの世界を生きていくのだ、と思うとなんだかワクワクする。
今の私にはありとあらゆる可能性があるのだ。そして、ありとあらゆることは可能なのだ。
プロのスポーツ選手になってもいい。テニスでも、バレーボールでも、卓球でも、サッカーでも。どんなスポーツ選手にだってなれる。学者になってもいいし、医者になってもいい。弁護士になってもいいし、学校の先生になってもいい。大工も格好いいし、芸術家もやりがいがありそうだ。宇宙飛行士なんて、まさに夢そのものといってもいい職業だろう。
ありとあらゆる可能性を夢想し、私はそのすべての未来を想像する。
不幸なんてない。困難や苦痛はもちろんあるだろう。けれども、それは決して不幸などではない。すべてはありとあらゆる可能性を現実のものとするための道のりにすぎないのだから。困難や苦痛を伴う苦境を乗り越えてこそ、夢は実現する。
選択肢は無限大。選択肢の数だけ、未来はある。魔女である私には普通の人よりも余計に多くの選択肢があるのだろう。眩暈がしそうなほどの数の道筋が視えてしまう私は、どれを選べばいいのかわからない。
あんな未来もいい。こんな未来もいい。そのどれもこれもが魅力的で、輝いていて、目が眩む。その中のどれかからひとつだけを選び出す、なんてこと、できそうにない。
だから、私は生まれて初めての魔法を行使することにしたのだ。
ありとあらゆる未来の中からたったひとつを選ぶことができなくて。そのたったひとつの選択肢以外の選択肢を捨て去ることができなくて。
ベッドの中で、私は小さく右手をふるう。
そうして奇跡は起こる。
私はまだ産まれたばかりで、歩くことさえもままならない。言葉も当然話せない。ベビーベッドの中から、窓の外を眺めるだけ。
けれども、目にする景色は色鮮やかで、希望に満ち、やわらかな光がこぼれている。
ああ、今から私はこの世界を生きていくのだ、と思うとなんだかワクワクする。
今の私にはありとあらゆる可能性があるのだ。そして、ありとあらゆることは可能なのだ。
プロのスポーツ選手になってもいい。テニスでも、バレーボールでも、卓球でも、サッカーでも。どんなスポーツ選手にだってなれる。学者になってもいいし、医者になってもいい。弁護士になってもいいし、学校の先生になってもいい。大工も格好いいし、芸術家もやりがいがありそうだ。宇宙飛行士なんて、まさに夢そのものといってもいい職業だろう。
ありとあらゆる可能性を夢想し、私はそのすべての未来を想像する。
不幸なんてない。困難や苦痛はもちろんあるだろう。けれども、それは決して不幸などではない。すべてはありとあらゆる可能性を現実のものとするための道のりにすぎないのだから。困難や苦痛を伴う苦境を乗り越えてこそ、夢は実現する。
選択肢は無限大。選択肢の数だけ、未来はある。魔女である私には普通の人よりも余計に多くの選択肢があるのだろう。眩暈がしそうなほどの数の道筋が視えてしまう私は、どれを選べばいいのかわからない。
あんな未来もいい。こんな未来もいい。そのどれもこれもが魅力的で、輝いていて、目が眩む。その中のどれかからひとつだけを選び出す、なんてこと、できそうにない。
だから、私は生まれて初めての魔法を行使することにしたのだ。
ありとあらゆる未来の中からたったひとつを選ぶことができなくて。そのたったひとつの選択肢以外の選択肢を捨て去ることができなくて。
ベッドの中で、私は小さく右手をふるう。
そうして奇跡は起こる。
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