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No.19
雨の降る日に②
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僕は死ぬ口実が欲しかった。
口実でもなきゃ、罪悪感で潰れそうだから。
例え父が僕を愛していなくても、息子が自殺したんなんて外聞が悪い事を許すはずがない。
母は正直僕を愛していたかは分からない。ただ見ているだけで、父のように明確なものはなかった。
だけど、僕達を父から庇ってくれたことなんて一度も無い。それと同時に僕達を怒ったことも無い。
本当に、見ているだけで何もしない。
これだけ聞けば、無関心な母親だと思うだろう。でも、決して無関心な訳ではないことを僕は知っている。
僕が小学生の頃描いた絵を、今も大事にファイルにしまってあることも、捨てたはずの読書感想文が母の部屋にあったことも、知っていた。
それになにより、母の日に初めてカーネーションをあげた時の、あの嬉しそうな表情を今でも鮮明に覚えてる。
でも、僕はそれだけじゃ足りなかった。僕は欲張りなんだ。
愛してもらいたいし、褒めてもらいたい。その一心で今まで頑張ってきた。
学年首位を取り続けていると、父と母は褒めてくれた。それでも、父は僕を愛することはなかった。
どんなに努力しても、褒められても、家族だって認めてもらえなきゃ、愛してもらえなきゃ意味がない。
それなのに父は僕を愛してくれなくて、母はよく分からなくて、兄と姉は僕をおいてどこかへ消えた。
兄と姉がいなくなった分、僕は父の期待は一心に受けていた。
その期待が愛だったら、どれだけよかっただろう。
もし母がわかりやすく僕を愛してくれたならば、どれだけ救われただろうか。
もし、兄と姉が僕を一緒に連れて行ってくれたなら…、僕はどれだけ幸せだったのか…。
どれだけ願っても手に入れられない夢。なら、とかもし、とかそんなのただの夢で叶わないから夢に見るんだ。
そう思っていたら自然と頬に涙が伝ったことに気がつく。止まらない。どんどんどん零れてくる。
物心ついてから今まで泣いたことなんて無かったのに。
そして気づいた。あぁ、僕は『悲しい』んだって。
降り続ける大粒の雨が、今の僕の心を表しているようだった。
僕はどれだけ感情を失っても、たった一つの感情だけは持っていた。
それが、愛されたい。
でも、死に際にそれ以外の感情を取り戻すとか、馬鹿げてる。
「ハハッ……、ふざけんな……」
死のうという時に戻るとか…。何でもっと前に戻らなかったんだろ。
でも、今更僕は自殺を辞める気なんてない。
そう思ったときだった。彼女が声をかけたのは。
「君も私と同じなんだね」
口実でもなきゃ、罪悪感で潰れそうだから。
例え父が僕を愛していなくても、息子が自殺したんなんて外聞が悪い事を許すはずがない。
母は正直僕を愛していたかは分からない。ただ見ているだけで、父のように明確なものはなかった。
だけど、僕達を父から庇ってくれたことなんて一度も無い。それと同時に僕達を怒ったことも無い。
本当に、見ているだけで何もしない。
これだけ聞けば、無関心な母親だと思うだろう。でも、決して無関心な訳ではないことを僕は知っている。
僕が小学生の頃描いた絵を、今も大事にファイルにしまってあることも、捨てたはずの読書感想文が母の部屋にあったことも、知っていた。
それになにより、母の日に初めてカーネーションをあげた時の、あの嬉しそうな表情を今でも鮮明に覚えてる。
でも、僕はそれだけじゃ足りなかった。僕は欲張りなんだ。
愛してもらいたいし、褒めてもらいたい。その一心で今まで頑張ってきた。
学年首位を取り続けていると、父と母は褒めてくれた。それでも、父は僕を愛することはなかった。
どんなに努力しても、褒められても、家族だって認めてもらえなきゃ、愛してもらえなきゃ意味がない。
それなのに父は僕を愛してくれなくて、母はよく分からなくて、兄と姉は僕をおいてどこかへ消えた。
兄と姉がいなくなった分、僕は父の期待は一心に受けていた。
その期待が愛だったら、どれだけよかっただろう。
もし母がわかりやすく僕を愛してくれたならば、どれだけ救われただろうか。
もし、兄と姉が僕を一緒に連れて行ってくれたなら…、僕はどれだけ幸せだったのか…。
どれだけ願っても手に入れられない夢。なら、とかもし、とかそんなのただの夢で叶わないから夢に見るんだ。
そう思っていたら自然と頬に涙が伝ったことに気がつく。止まらない。どんどんどん零れてくる。
物心ついてから今まで泣いたことなんて無かったのに。
そして気づいた。あぁ、僕は『悲しい』んだって。
降り続ける大粒の雨が、今の僕の心を表しているようだった。
僕はどれだけ感情を失っても、たった一つの感情だけは持っていた。
それが、愛されたい。
でも、死に際にそれ以外の感情を取り戻すとか、馬鹿げてる。
「ハハッ……、ふざけんな……」
死のうという時に戻るとか…。何でもっと前に戻らなかったんだろ。
でも、今更僕は自殺を辞める気なんてない。
そう思ったときだった。彼女が声をかけたのは。
「君も私と同じなんだね」
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