上 下
2 / 12
置いてけぼり

星が落ちた日

しおりを挟む
「ん?なんだこれは?忘れ物かな?」

夜が更け、静まり返った駅で、駅員さんがベンチに横たわったパンダのぬいぐるみを見つけた。


「可愛いぬいぐるみだな。きっと持ち主の子は今頃探しているだろうな…」


駅員さんはぬいぐるみをそっと持ち上げ、駅員室のカウンターに置いた。


「持ち主の子、来るといいな」


駅員さんはぬいぐるみの頭をそっと撫で、帰る支度をした。
それからもずっと、女の子がぬいぐるみを探しに来ることは無かった。




「わあ!このぬいぐるみ可愛い!」


パンダのぬいぐるみは、その駅で話題となった。
改札を通る人が足を止め、眺めてしまうほど可愛かったからだ。


「駅員さん、これって売り物?」

「違うんだ。この子は誰かの忘れ物でね、ここで持ち主の子を待っているんだよ」

「そうなんだ~。早く会えるといいね!」


小さな男の子がぬいぐるみの頭を撫でると、パンダのぬいぐるみは少し懐かしい気持ちになり、寂しくもなった。
ここに居れば多くの子供たちに可愛がってもらえるが、パンダのぬいぐるみは、あの女の子に可愛がってもらいたかったからだ。


そして、何も進展がないまま、また夜が来た。



「僕はもう、あの子に会えないのかな…」


駅の窓から夜空を眺め、パンダのぬいぐるみは寂しい気持ちに押しつぶされそうだった。
早く女の子に会いたい。その気持ちは日に日に大きくなり、募っていくばかりだった。



「神様、この綺麗な夜空から僕が見えているのなら、どうか僕の願いを叶えてください。僕は持ち主の女の子に会いたいのです。女の子もきっと、僕を探していることでしょう。寂しい思いをさせているかもしれません。どうか、僕たちをまた会わせて下さい…」


パンダのぬいぐるみは綺麗な夜空に向かって何度も願った。
しかし、そんな願いも真っ暗な夜空に吸い込まれていくだけだった。


「一体、いつになったら会えるのだろう。それとも、もう会えないのか…。」


パンダのぬいぐるみは、女の子の顔を思い浮かべ、心の中で静かに涙を流しました。




次の瞬間。
真っ暗な空に、ひとつの光が出てきた。
光はたちまち大きくなり、まるで太陽のように輝きを放った。


「ん?あれはなんだ…?」


パンダのぬいぐるみが謎の光を見ていると、光はなんとこちらへ向かってきたのだ。


「なんだなんだ!?こっちに向かってくる!」


パンダのぬいぐるみは大慌て。急いで逃げようとするが、ぬいぐるみなのでもちろん動けない。
そうこうしている間にも、光は近づいてくる。


「ま、まぶしい…どうなるの?誰か助けて!」

そうして、ついにパンダのぬいぐるみにぶつかった。

「う、う、うわぁ~!!」


眩い光がパンダのぬいぐるみを包み込む。
さらに辺り一面を光が包み込み、真っ白に染めた。





「あ、あれ…?何が起こったんだろう…」


謎の光に包まれたパンダだったが、特に変わった様子はなかった。


「一体、何だったんだろう…」


パンダのぬいぐるみがもう一度空を見上げると、あることに気がついた。


「あれ…?僕の首が動く…?」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ツバメに乗った妖精さんのお話

乙原ゆん@1/10アンソロ配信
児童書・童話
春の女神さまに仕える妖精さんたちにまつわるお話 1.ネコのルルとツバメに乗った妖精さん ある春の日、蝶々に心引かれてお庭に出た家猫のルルは一人の妖精に出会いました。 猫の小さな冒険と、妖精さんの出会いのお話。 2.イブキとハルトとサクラの木 ルルと別れたイブキとハルトでしたが、イブキがルルが家に帰るところまで見守りたいと言ったために、出発を遅らせました。そのおかげで、二人は女神さまの力を宿した桜の木を見つけます。二人はサクラの木について調べることにしました。 3.ある晴れた春の夕暮れに 二人の妖精の一年後の春のお話。 ※第15回絵本・児童書大賞エントリー作品です。

子猫マムと雲の都

杉 孝子
児童書・童話
 マムが住んでいる世界では、雨が振らなくなったせいで野菜や植物が日照り続きで枯れ始めた。困り果てる人々を見てマムは何とかしたいと思います。  マムがグリムに相談したところ、雨を降らせるには雲の上の世界へ行き、雨の精霊たちにお願いするしかないと聞かされます。雲の都に行くためには空を飛ぶ力が必要だと知り、魔法の羽を持っている鷹のタカコ婆さんを訪ねて一行は冒険の旅に出る。

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

小さな王子さまのお話

佐宗
児童書・童話
『これだけは覚えていて。あなたの命にはわたしたちの祈りがこめられているの』…… **あらすじ** 昔むかし、あるところに小さな王子さまがいました。 珠のようにかわいらしい黒髪の王子さまです。 王子さまの住む国は、生きた人間には決してたどりつけません。 なぜなら、その国は……、人間たちが恐れている、三途の河の向こう側にあるからです。 「あの世の国」の小さな王子さまにはお母さまはいませんが、お父さまや家臣たちとたのしく暮らしていました。 ある日、狩りの最中に、一行からはぐれてやんちゃな友達と冒険することに…? 『そなたはこの世で唯一の、何物にも代えがたい宝』―― 亡き母の想い、父神の愛。くらがりの世界に生きる小さな王子さまの家族愛と成長。 全年齢の童話風ファンタジーになります。

ありがとうのお話

古式亜矢
児童書・童話
くまのみらいちゃんのために、うさぎのひなちゃんががんばります。 大事な大事な「言葉」と「色」のお話。

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

にゃんこによる、にゃんこの為の、にゃんこ講座

葉柚
児童書・童話
人間に可愛がってもらいたいにゃんこ達の可愛い奮闘。 どうしたら、可愛がってもらえるのか。 どうしたら、大切にしてもらえるのか。 にゃんこたちが必死に考え奮闘する話。

竜と絵描きは世界で一番仲が悪い

mitsuo
児童書・童話
竜と人が共に学ぶ「学舎」でパートナーになった人間の少女アイと、たてがみを持った竜の少年リオン。彼女と彼が抱える秘密が明らかになった時、最悪だったコンビに変化が起きる…。 クーザという架空の大陸を舞台にした、ファンタジー要素の強い小説です。小学校高学年から中学生までを対象に考えて書いた小説ですが、異世界やファンタジーが好きな大人の方にも読んでいただけるとうれしいです。

処理中です...