狼のタルとエサのペコ

るいのいろ

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最終話 ペコとタルと…

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満月の夜から3日経った。
あれから、タルは家族を捨て、家を出た。タルの家族もタルを見捨て、もう二度と関わることは無いだろう。
バルクも群れから離れた。元取り巻き達がバルクの評判を下げて回ってるらしい。

「情けない奴らだ。全く。」

バルクはそう言い笑った。

タルとバルクはお互いに居場所が無くなったので、しばらく一緒に過ごしていた。

ペコとペコのお父さんは、家に戻り、お母さんを埋葬した。その後家を引っ越した。タルとバルクもそのお手伝いに大忙しだった。

一通り済んで落ち着いた頃、タルとバルクはペコの新居に招かれたので、2人で遊びに行った。

「いらっしゃい、2人とも、今日はゆっくりしていってね」

「やっほー!どう?僕たちの家!いい感じでしょ~!」

「なあペコ、俺たちずっと手伝って何回も見てるんだぞ?」

「あ、そうだったー!」

「さあ2人とも、こっちにおいで。ご飯の準備はもうできてるよ」

「そうだよ!早く食べよう!」

「あっ、ペコ!」

「全く。忙しいやつだ」

4人は食卓につき、色々な話をしてパーティーを楽しんだ。



それから1週間後…。




「なあ、タル」

「なんだ?」

「ちょっと相談なんだが…」

「なんだよ?改まって」

「俺ら、お互いにここに居場所はないよな」

「なんだよ、失礼な。まあそうだけど」

「旅に出ないか?」

「え?」

「俺と一緒に、旅に出ないか?」

「何を言い出すんだよ、急に」

「ずっと考えていたんだ。俺らの場所はここじゃない。もっと大きな世界を見てみたいんだ」

「そうか…お前もそう考えていたんだな」

「お前’’も’’?」

「実はな…俺もそう思ってたところだったんだ」

「なっ…!」

「俺の居場所はもうここにはない。もっと広い世界がみたいなって思ってな。少し考えてはいたんだ。だが…」

「なんだ?」

「ペコとは離れたくないんだ」

「あ、ああ。そうか…そうだよな」

「あいつははぐれ者の俺の居場所を作ってくれた。旅に出ることであいつの元を離れると思うと、少し裏切るような気がしてな…」

「…そうだな」

「だからずっと思いとどまっていたんだ。でも今日決めた。あいつにこの話をしてみようと思う」

「大丈夫か?友達ではいられなくなるかもしれないんだぞ」

「ああ。覚悟は出来た。きっとあいつならわかってくれるさ。なんせ俺の自慢の友達だからな」

「ふふっ、そうか…」


それからさらに3日後…。





「タル、準備できたか?」

「おう、バルクは?」

「OKだ」

「よし、じゃあ行くか!」




「ペコ、もうそろそろ時間じゃないか?」

「あ!本当だ!」

「あとは何を準備するんだ?」

「えっとね~…あ!あとはあれだけだ!」

ペコの家からもウキウキとした声が聞こえてくる。


「タル!バルク!おまたせ!」

「遅いぞペコ」

「ごめんごめん!みんな準備は出来てる?」

「もちろんだ。それよりペコ、本当に大丈夫なのか?しばらく帰ってこられないぞ?」

「もちろん!2人が一緒ならどこでも大丈夫だよ!」

「そうか、俺もどこでも行けそうだ」

「2人とも、ペコのことをよろしくお願いします」

「もちろん、俺たちがちゃんと面倒見ます」

「2人が一緒なら頼もしいよ。全く。子供だと思っていたが、いつの間にか大きくなったんだな…」

ペコのお父さんの目には涙が浮かんでいた。

「お父さん泣かないでよ!」

ペコも泣きそうになっていた。

「ごめんごめん、ペコ、元気でやるんだぞ。2人に迷惑ばかりかけちゃだめだぞ。自分のことは自分で…」

「もう!分かったってば!大丈夫だよお父さん!」

「本当に大丈夫かな…」

「大丈夫ですよ、俺とタルが面倒見ますから」

「ふふっ。そうだね、ありがとう」

「じゃあそろそろ…」

「そうだな、出発するか」

「うん!わー!楽しみだなー!」


「ペコ、いってらっしゃい」

「うん!お父さん、元気でね!」

「それじゃあ、行ってきます!」

「3人とも、元気でやるんだぞ!」


こうしてタル、バルク、ペコの3人は歩き出した。
思い出の桃の木の下には、小さな芽がポツリと、けれども確かに輝いて、ずっとそこにいた。
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