鬼の子は鬼

るいのいろ

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人間の鬼

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「長老様、着きました」

「ふむ、ご苦労じゃった。」

「気をつけてお降り下さい」

「ありがとう」



「キバ、ヨウキ、着いたみたいだよ」

「ん…んん?着いたのか?」

「もう…2人とも早く起きて」

「外に出よう、大人たちに見つかる前に」

3人はバレないようにこっそり、でも急ぎつつ船をおりた。


「ここが…人間の島…」

「キバ、ルキ、こっちだ!」

「あ、待ってよヨウキ!キバも行くよ!」

「あ、ああ!」




「ここが人間の島か…人間臭いな」

「そりゃ人間が住んでるんだからな、さて、どうする鬼之進」

「まずは人を捜し、桃太郎の居場所を吐かせる。そんで桃太郎に会うんだ」

「じゃあとりあえずそこら辺を歩いてみますか」

鬼たちは船の周りをしばらく歩いた。

「しかし何も無いな。周りは木ばかり。建物も動物もいやしない」

「本当にここに人間がいるのか?まさか、リュウキ達が滅ぼしたんじゃ!」

「そうかもしれないな」

リュウキが生きているという希望が見え、鬼たちは安堵の表情を浮かべた。しかし、それは一瞬の事だった。


「みんな伏せろ!!!!」

1人の鬼が叫び、みなが振り返った。
その時、鋭い銃声が空に響いた。

「人間だ…」

木の影から若い男が銃を構え、鬼に向けて撃っていた。

「伏せろ!!!」

鬼の1人が叫ぶも、もう遅かった。
木の影や草の影から人間たちが出てきて、鬼たちを次々に撃ち始めた。鬼たちが唖然としていると、次々に撃たれバタバタと倒れはじめた。

「みんな逃げるのじゃ!!」

長老が叫び、鬼は必死に逃げ出した。

「逃がすな!撃てー!!!」

銃声は鳴り止まなかった。

「長老様!こちらです!隠れていてください!」

「鬼之進、みなをつれて逃げるのじゃ。お前たちだけは生き延びろ」

「何をおっしゃるのです長老様!さあ!早くお隠れに…」

鬼之進の腕を銃弾がすり抜けた。血が滝のように流れ、鋭い痛みが身体中に響いた。

「鬼之進!!」

「ばか!くるんじゃない!」

鬼之進に駆け寄る鬼たちを、さらに撃ち抜いた。

「そんな…」

鬼之進は絶望的な状況に涙を流した。自分の愚かな選択で仲間を死なせてしまったこと、何も出来ない自分の情けなさを激しく悔いた。

だが、目の中にはまだ光があった。
鬼之進は諦めてはいなかった。
鬼之進は立ち上がり、銃口を向けている若い男に襲いかかった。

「ひっ!!」

若い男は顔を青ざめさせ、その顔は一瞬にして恐怖の色に塗れた。
鬼之進はあっという間に人間の腕を引きちぎった。
若い男は腕から血を滝のように流し、倒れた。
人間たちの動きがやっと止まった。みな口をあんぐり開け鬼之進を見ていた。
鬼之進は人間たちを睨んだ。

「お前ら!!まだ生きてるやつはいるか!!いたら全員立ち上がれ!!俺たちは復讐しに来たんだ!ここでくたばってたまるか!」

鬼之進の声により、なんとか死なずに倒れていた鬼たちが1人、また1人と立ち上がった。
そして鬼之進の後に続き、人間たちに襲いかかった。

「怯むな!!殺せ!!!」

人間たちも負けじと銃を構え直し、鬼に向かって撃ち続けた。



その頃、キバ達は森の中を迷子になっていた。

「ここどこだろう。僕のお腹すいたよ」

「ルキ、あそこに木の実があるぞ、とってきなよ」

「あ、ほんとだ。みんなもお腹すいてるよね?」

「「いいや」」

「なーんだ、じゃあ取ってくるからちょっと待っててよ」

「わかった。早くしろよ~」

「はーい」

ルキは森の木を登り、2人はその下で座った。
すると、どこからか楽しそうな歌が聞こえてきた。



ももたろさん ももたろさん

おこしにつけたきびだんご

ひとつわたしにくださいな



「なに?この歌?」

「ひとりじゃないね」

歌は3~4人で歌われていた。

「近づいてくるね」

「ああ、隠れよう」

「ルキ、降りてこい、誰か来たぞ」

「え?なにー?聞こえない!」

「ルキ!大きな声を出すな!静かにしろ!」

「なにー?全然聞こえなーい!」

「ヨウキ!すぐそこまで来てる!」

「くそ!ルキ!そこにいろ!降りてくるんじゃないぞ!」

ヨウキはなんとかルキに状況を伝えようと、歌の聞こえる方を指さした。ルキはその方を見ると、顔を青ざめ強く頷き、音を立てなくなった。
キバとヨウキは近くの草むらに身を隠しじっと静かに待った。
楽しそうな歌はだんだんと3人に近づいて、ついに目の前まで来た。


「桃太郎さん、きびだんごくださいな」

「いいだろう、いいだろう」

「ありがとう桃太郎さん!…こりゃうめーや!」

「俺も!俺も食べる!」

「いいだろう、いいだろう」

「ひゃっほー!」

歌声の主は、桃太郎、犬、猿、キジだった。
4人は ’’日本一’’ と書かれた旗を高く掲げ、道のど真ん中を堂々を歩いていた。

「ん?なあ猿、ここ匂わないか?」

「ほんとうだ!なんか生臭いぞ!」

「俺この匂い知ってるぞ…昔嗅いだことがある…この匂いは…」

「なんだ?」

「鬼だ」

「鬼?こんな所に鬼がいるわけないだろ~」

「まあそうだよな!ところで桃太郎さん、あの話本当なんですか?」

「ああ、俺も気になってた!」

「あの話とは?」

「キジは知らないのか?この前ここに鬼が来ただろ?俺らも鬼は絶滅させたと思ってたらまだ生きてたんだ。だから鬼ヶ島にまた行って今度こそ絶滅させるって話だ」

「ほ~。またあの島に行くのですか!それは楽しみですね~」

「行くんですか?桃太郎さん」

「うん。」

桃太郎が頷き、3人はまたわちゃわちゃと騒ぎ始めた。



「キバ…あれ…」

「桃太郎だ…」

「あれが桃太郎…?あんな子供が…?」

「うん…そうだね…」

2人とも体を固まらせていたが、それでもしっかりと桃太郎の姿を見ていた。
ふとルキの方を見ると、ルキも震えながらもしっかりと桃太郎の姿を目に焼き付けていた。

「あれなら…俺にも倒せるかも…」

「…は?」

ヨウキは近くにあった大きくて尖った木の枝を手にとった。1回、2回素振りをすると、桃太郎の方を見た。

「おいヨウキ!何考えてるんだ!?何をしようとしてんだよ!」

「キバ、復讐の時だ。俺がここであいつを殺す。父ちゃんと母ちゃん、そして兄ちゃんの仇打ちだ」

「なんだって!?馬鹿な真似はよせ!勝てっこないだろ!」

「あんなガキに俺が負けるって言うのか!?ありえないだろ!?見ろよあのはなたれ小僧!まともに喋れてもないだろ!」

「落ち着けヨウキ!ちゃんと作戦を立てないとダメだ!」

「いや、俺は行くぜ。見てろ、この俺があいつを退治してやるんだ」

ヨウキはそう言って、キバの元を離れた。


「おい」

「ん?」

桃太郎たちが振り返ると、そこにはヨウキが居た。

「お前が桃太郎か」

「お…」

「ん?なんだ?」

「お…お…」

「は?ちゃんと喋ってみろよはなたれ小僧!」

「鬼だーーーーーーーーー!!!!!!」

桃太郎はいきなり叫んだ。目を見開き、髪を逆立て、剣を鞘から抜いた。そしてぶんぶん振り回し、ヨウキに向かって襲いかかった。

「えっ」

ヨウキはいきなりの豹変っぷりに驚いているうちに、右腕が焼けるように熱くなった。

「桃太郎さんナイスー!」

「さっすがー!」

「鬼!!鬼!!」

桃太郎はヨウキの腕を切り取った。ヨウキの右腕があったところから血がたれ、血溜まりが出来ていた。

「えっ?えっ?」

ヨウキは状況を理解できずにいた。桃太郎の素早い動き、後ろの3びきの余裕そうな態度、そして切り取られた右腕。全てが訳が分からなくなって、何も考えられなくなっていた。しかし足だけは、桃太郎から逃げようと走っていた。

「あ!逃げましたぜ!桃太郎さん!」

「捕まえろー!」

3匹も走り出し、ヨウキを捕らえようとした。

「待てー!待てー!」

桃太郎が叫びながら追いかけてくる。
ヨウキにはさっきまでの余裕は一切なく、ただ恐怖だけが心を覆っていた。

「ごめんなさい…ごめんなさい…」

ヨウキはそう呟きながら走り続けた。


「よし!つーかまーえたー!」


ヨウキの背中に重いものがのしかかる。

「猿ー!よくやったー!」

「桃太郎さん!今です!」

「鬼ー!鬼ー!鬼ー!鬼ー!」

桃太郎は、ヨウキ頭を刀で貫いた。




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