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朝チュンで気が付いたら教え子とイチャイチャして休日を過ごすとか理性崩壊

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 彼……もう、元カレだ……私を電話一本で振りやがった二股ヤローとバースデーディナーの約束をしていたのは土曜日で。

 つまり、尊流と朝チュンしてしまったのは、日曜日である。

「センセ、トーストしかないけど食べる?」
 訊きながら身体を起こした拍子に、尊流の上半身から毛布が滑り落ちる。
 目をそらしながら、私は毛布の端っこをつかんで、身をすくめるようにして身体を隠す。

「……いただきます」

 ううっ、朝日に浮かぶ尊流の肌が眩しすぎて、目のやり場に困る……。
 アルコールに強いおかげか、二日酔いにはなったことないんだけど、今朝はなんだか、くらくらする。

 アルコールでなく、尊流に酔ったみたいだ。

「……ゴメン、朝ごはん、おあずけ……」
 尊流は、起こした身を再び沈める……私に向かって。
「え、あ、ちょっと……や……やっ……」
「……恥ずかしがってるセンセが可愛すぎるのがイケない」

 私の首筋にキスをして、そう囁くと、尊流は私を抱きすくめ、首筋から鎖骨、鎖骨から胸元に唇と指を這わせていき。

 それだけで、私は高みに達してしまい。

「もうイッちゃったの? もう一回、イカせてあげる、ちょっと待ってて……明るいと、ちょっと恥ずかしいな」
 
 なんて言いながら、ごそごそと挿入前の準備をしている気配が伝わる。
 昨夜は気付かなかったけど、ちゃんと避妊具もつけてくれていたみたい。

 ぼんやりそんなことを考えていると、再びタケルは私を愛撫し、今度は、私の中に入り……。




 ……朝ごはんのトーストにありついたのは、それから1時間以上経ったあとだった。


「……ずっと、って、いつから?」

 トーストをかじりながら、私は尊流に尋ねた。
 さすがに服は着ている。尊流が貸してくれた、スウェット。
 昨日着ていたおとっときコーデのワンピースは、しわくちゃになっていて、こんな昼間に着て歩けない。
 尊流がしわくちゃにしたわけじゃない。その前に私が公園で地べたに座っていたせい。

「いつだと思う?」
「……もしかして、入学した時、とか?」

 尊流が入学したのは、私が新人教師として今の高校に赴任したのと同時だ。
 その前……つまり大学時代には接点はないと思う。

「ハズレ」
「えー、じゃあ、今年になってから?」
「ハズレ。思い出せないんなら教えてあげない」

 意地の悪い顔をして、からかうような言葉に、私は口を尖らせる。
「ホント、センセって、すぐ顔に出るよね」
「どーせ、精神年齢低いわよ」
「いいじゃん、俺と釣り合い取れるし……で、センセは?」
「え?」
「俺のこと、好き?」
「……」

 ……急に真面目に訊いてこられて、私は言葉につまる。
 
 
「……好きとか、そういう対象じゃなかったから……あ! もちろん、生徒として好感は持っていたわよ!」
 しょげる尊流の様子に、私は慌てて言い繕う。

「好感とか、そんな一般論みたいな好意いらない」
「……だって、私にとって谷嶋くんは、生徒だったんだもん」
「……だった? 今は?」
「……今だって、生徒だよ! 教え子! 恋愛対象外!」
「ホントに?」
「ホント!」

 そう、尊流は、生徒! 教え子! 恋愛対象外! にしなくちゃいけない! 
 教師の私が、生徒と……すでに関係してしまったけど……これ以上深みにはまったらいけない!

「ホント?」
 気が付いたら、尊流は私の隣に移動してきて、密着してくる。
「ホ、ホントに……」
 か、顔が近い!

 私は顔を背け、身をよじったけど、両腕を掴まれる。
「ちゃんと、俺の顔を見て、言って」
「ホントに、谷嶋くんには、れ、恋愛感情とか、ない、から……」
 絞り足すように言うけど、じっと見つめる尊流の目を見ていられなくて、私はまた目をそらした。
「……センセ、そんな顔で否定されても、全然信憑性ないから」
「……」
「ま、いいや。まずは身体の関係でも。そのうち本音言わせてみせるから」
「いや! それもマズイって! 教師と生徒が身体の関係なんて!」
「今さら言う? 一晩中ヤりまくっておいて……あーあ、俺、センセにもてあそばれちゃったんだぁー」
「違っ! そんな! もてあそぶなんて……」

 確かに、24歳の女が17歳の男の子(それも美少年)となんて……世間から見たら、これ、淫行条例に引っ掛かるんじゃ?! 
 一応、社会科教師、しかも現代社会担当……法律はそれなりに学んで来ている。
 ヤバい、職業的にも、社会人的にも、抹殺される! 


「……センセ、心の声、漏れてるから」
「へ?」
「条例、ヤバい、抹殺される、とか、なに考えているのか丸わかりだよ……だったらなおさら、俺と恋愛関係になった方がいいよ。いざとなったら、俺がセンセを押し倒したって、証言してあげるから、さ」
「……いや、そんな、嘘……て? あれ? 嘘じゃない?」
「嘘じゃないよ。酔っ払った女の人、家に連れ込んで、押し倒したなんて、俺の方がタイホされちゃう。教え子を犯罪者にしたいの?」
「そんなことない! その、状況はそうだけど……私、抵抗しなかったし、それに……」

 ……元カレなんかより、ずっと、幸せな気持ちで抱かれてたし。

 ついばむようなキスの嵐も、肌を伝う指先も、耳に残る囁きも……思い出すだけで身体の奥が疼く。
 それが、たとえ成り行き任せの、身体の関係だったとしても。

「……好きに、なっちゃった、し」


「……」

 尊流が、無言で私に体重をかけてくる。両腕が掴まれままだったので、自然、そのまま押し倒される。
「……!」
口を尊流のそれでふさがれて、貪るように舌をまさぐられる。食べたばかりのトーストとバターの味がする。

「……マジ、嬉しい」
「谷嶋くん……」
「好きって、もっかい言って?」
「谷嶋くん……」
「タケル! 尊流って、呼んでよ」
「た、尊流……が、好き……」
「俺も。センセ……舞子って呼んでいい?」
「うん……」
「舞子……好きだ」

 再び、尊流は私の唇をふさぎ、スウェットの裾をまくりあげ……。


「BBBBBBB………!」

 スマホのバイブ音が響く。私のバッグからだ。

「……出ていい?」
「ダメ」
「あの長さ、電話だと思うから……緊急かもしれないし」

 尊流は不機嫌そうに身体を起こして私を解放してくれる。
 私は慌ててバッグからスマホを取り出す。着信の画面に表示されているのは、アパートの大家さんだ。
「はい、もしもし?」
『あ、涌井わくいさん?』
「はい。どうしました?」
『どうしましたじゃないよ! 今どこ?』
「今……は、友人、の家ですが……」
『そうなの? 良かった! 実は、アパート、火事になっちゃって……』
「あ、そうなんですか……え? 火事? アパートが……って、うちですよね?!」


 火事? うちが?


 突然の知らせに、私は呆然とし、スマホが手から滑り落ちた。

 
 

 
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