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1章
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軽々と大剣を振るう姿に騙されそうになるが、一振りするだけでもの凄い衝撃が起きる。一撃が重く、しかも疾い。シルガの付与した身体強化で剣を弾き飛ばされずに受けていられるが防戦一方だ。
(もっと強い付与をするか?)
だが反動が凄まじいものになる。生死を分けるような重要な局面で指一本動かせなくなるのは避けたい。付与を徐々に強くして慣れて貰うしかないがそのための時間もない。身体強化はグイーズ達も自分で出来るのでそれはよくわかっていた。
―――オオオオオ
「グイーズ!」
不気味な雄叫びを上げて叩きつけるように振り下ろされた黒い大剣が 咄嗟に作ったシルガの結界を粉砕してグイーズの両手剣にめりこんだ。
「ぐぅッ、 チ……!」
「あたしが前に出るわ!」
戦士の亡霊は、ギリギリと競り合うグイーズを力で押し切り跳ね飛ばし、その脇腹を狙ったエルザの槍を剣を返して払いのけ、一瞬で体勢を変えて食らいつく。
「がっ……!!」
紅い刃先が結界を裂いてエルザの胸すれすれで止まった。だが、命を刈り取る肉食獣さながらに凝縮した殺気をのせた重く鋭い突きだ。凄まじい衝撃が心臓を打った。よろめくエルザを追撃する戦士の攻撃を阻もうと放たれたサークェンの矢が ぶんと薙ぎ払った大剣に弾かれ、それを受けきれずに押されたエルザが膝を付いた。
この隙に畳みかけて終わらせようと攻め込む戦士の足元に魔術式が描き出された。一瞬で展開された氷結魔法が戦士の膝まで一気に凍らせ動きを封じ、それでも自由な上半身から振り下ろされた剣をグイーズが防ぐ。
「離れてくれ!」
シルガの声と共にグイーズが跳んで退くと、空中に描かれたいくつもの魔術式から鋭い氷柱が弾丸のように降り注いだ。その間に治癒薬を使ってエルザが態勢を整えるのを確認しながらシルガは全員に結界を張り直す。
ずん、と音がして地面が揺れた。
4人が意識を向けた瞬間、石畳に亀裂が走ったかと思うと轟音を立てて地が裂け、その中心には魔術式を空中に描いた戦士がシルガの氷結魔法を憤然と蹴散らして立っている。
「魔法!? 何で亡者が魔法を使うんだ!?」
「あれは魔法じゃなくて、呪いだ」
どう違うんだ、と思ったがそれどころではない。
「グイーズさん!」
術式から放たれた禍々しい靄が意志を持った何かになって次々と襲い掛かった。それと同時に地を蹴って距離を詰めた戦士が大剣を振るう。
矢を魔法で強化したサークェンは襲い掛かる靄を粉砕するので手一杯だ。グイーズとエルザが剣を受けると同時に破壊される結界を シルガが何度も張り直すが重ね掛けする余裕はない。
二人のほんの少しの隙を突いて、戦士が標的を後方に移した。
「サク!! ぐあ!!」
注意が逸れたところを好機とばかりに渾身の力で押し飛ばされたグイーズは、神殿の柱に強かに背をぶつけた。
「くっ、 ぐはっ!!」
獰猛に迫る戦士の一撃がシルガの結界を叩き壊してサークェンのクロスボウを粉々に砕いた。その衝撃波を直に受けた身体は 宙を回転して地面に叩きつけられた。すぐに体勢を整えようにも立ち上がることができない。蹲って見上げた先で漆黒の大剣が振り上げられる様子が、ゆっくりと見えた。
――ゴキョッ!!
容赦なく振り下ろした戦士の大剣が肉を裂いて骨にめり込む嫌な音を立てた。
「ざ……ん、ねん! あたしの腕よ♡」
サークェンを庇って受けた漆黒の刀身が骨に入り込むのも構わず、エルザは身体に力を入れた。
「ひとりも、あげないわっ!!!!」
ここまできて何かを惜しむようなことはしない。
脚と腹筋をばねに身体をしならせ勢いをつけ、槍の穂を戦士の心臓目掛けて突き込むことだけ考える。
「うらああぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
熱量を持ったエルザの槍が戦士の胸を貫いた。更に力を入れて押し込み、エルザは戦士を貫いたまま前進した。
「おおおおお!!!」
――ヒュッ!
「うわ、まずい!」
目の前に飛んできたエルザの腕をシルガは咄嗟に掴んで駆け出した。
ぶしゅっと血を噴き出し傾いだエルザの身体を支え、切断され半分になった上腕を異空間結界で囲って切り取り、失血防止のため時間停止を重ねて現状維持に持ち込む。
「エルザ、しっかりしろ!」
かなり後退させられた戦士は大剣を持ったままピクピクと痙攣している。
サークェンに治癒薬を飲ませ、倒れ込んだエルザをシルガが肩で支えるのを確認したグイーズは転移機を起動させ、叫んだ。
「撤収!!」
金色に光る新緑の目がグイーズをまっすぐに見て声を張り上げた。
「宿にいる!」
短く言うと同時に、一瞬で展開された転移術式が二人を飲み込んで消え、ぶんと振り下ろされた大剣が誰もいなくなった空間を叩き切って地面にめり込んだ。その衝撃に招かれるように戦士は膝を付いて動かなくなった。
「……展開速度が半端ねぇ」
グイーズが起動させたのは予備の転移機だ。ケヘランで上質のものを探しても転移機自体が品切れだったのは9階層の奴らと関係してるに違いない。性能が劣る予備の展開速度がかなり遅いのを差し引いても あの速さは尋常じゃない。
(ちっくしょ亡霊なんぞに……っておい……)
先程からぴたりと動きを止めていた戦士の亡霊が、胸に突き刺さった槍の柄を掴んだ。ぐぐっ、と力を入れて自ら引き抜いた跡には ぽっかりと穴ができている。その底なしの空洞の中でどす黒い不快なものが渦巻き怨嗟の声を上げているように見えた。戦士は掴んだ槍を横に払うと、ひゅっと風を切って穂先をこちらへと向けた。
――まだ展開に時間がかかる。
「エルザの槍で俺を殺れっと、思うなよ!!!」
獣の勢いで突進してくる槍を避けるどころか自らその前へと立ちはだかる。身を捻って避けたものの元より完璧に躱す気もなく、グイーズの脇腹を切り裂いた槍の 太刀打と柄の中間部を掴み、渾身の力を込めて石突側を押し上げた。
「おおおお!!!っらあぁぁぁぁ!!!!」
振り上げられた柄を避け身体を逸らした戦士の 槍を握る力がほんの少し緩んだのを見逃さず、グイーズはぶん捕った槍の穂を石畳を削りながら回転させて素早く敵の喉へとねじ込んだ。
グイーズの槍を受けて仰け反った胴から、切り離された宵闇色の兜が勢いよく飛んだ。
(全然手応えねえんだけど! ……やったのか?)
首をなくした戦士がよろめき 二、三歩後退する。倒れ込むこともなくそのまま硬直した身体がぶるぶると震え、胸の空洞で蠢く混沌の渦が、ぞぞぞ……と音をさせて膨れあがった。それが良くないものであることは本能的に解ったのだが、どう対処したものかわからない。
「やべっ……!」
このまま放っておいて破裂でもして飛び散ったら、取り返しがつかないことになるのではないか?
そんな悪い予感がしたグイーズはとにかく膨張を防ごうと咄嗟に左手を黒い渦の中心に突っ込んでしまった。
「ぐっ、あ、ああああああ」
激痛とともに不快な蟲のようなものがウゾウゾと這い上がり 身体の中を食い荒らすように浸食してくる。
(いやこれどうしろっての!? やっべー後先なんも考えてなかったわ!!)
左手から押し寄せる凄まじい怨嗟の激流がグイーズを飲み込み、憎悪と憤怒、悲哀と絶望の渦となって脳を滅茶苦茶に揺さぶる。それは何もかもをいびつに捻じ曲げ、自分が何者かさえもわからなくなりそうだった。
――呪いだ。
ふいに、シルガの静かな声がグイーズの脳裏に落ちてきた。
「グイ…ズさ…… 帰る、 っす」
やっとかっと絞り出したサークェンの声が呪詛で満ちた禍々しい唸りの渦を裂いて、海を割る音のようになってグイーズの心臓に届いた。
「うおおおおおおお!!!」
混沌に引きずり込まれて無くなりそうだった身体が境界を取り戻し、ずしりと腹の底に力が戻ってくるのがわかる。
底なしの穴から止めどなく這い出てくる生き物にも似た呪詛は、グイーズを飲み込んで内側から蝕み食い荒らすことをまだ諦めていない。気力を振り絞ったグイーズは膝に力を入れて踏ん張り、左腕を肩まで深く突っ込んで不気味な空洞を塞いだ。だが、つい先程まで感じていた恐怖も激痛も不明瞭な悪い予感も、今は全く感じなかった。
(……? 何か、ある……っ!!)
底なしと思われた空洞の中で、掌に何か手応えがある。それを掴み 拳を握り込んでぐっと引けば、ブチブチと何かが剥がれ引っこ抜ける感触がした。グイーズの左半身を覆うほどに群がった不快なものたちが一斉にざわつく。
「っせえぇぇぇぇい!!!」
きつく絡みつく呪詛の吻を引きちぎり、握り込んだ拳もそのままに、グイーズは ようやく展開された転移術式の中へ飛び退った。足元から漏れ出した帰路の明かりにほっとして顔を上げ、最後にもう一度、周囲を見渡した。転移術式の中から見た向こう側の景色は美しく、穏やかで安らいでいる。ひしめき合って苦しげに蠢く呪詛の塊を除いては。
「……おたくら、えらい不自由なこってお気の毒様。……同情しちまいそうだ」
二人が去ったそこは迷路のように入り組んだ石造りの通路に変わり、グイーズがふとこぼした呟きが 寂しげにこだまして消えた。
*****
宿にいる、と伝えたのだがシルガは自宅へ転移していた。なにしろ一刻を争う事態だ。エルザをベッドへ運び、回収した腕と傷口を確認した結果、治癒魔法でくっつけるよりも復元した方が元通りに動く可能性が高い。
(治癒魔法――欠損復元)
シルガはこれ以上ないほど丁寧に魔力を行使し魔術式を構築した。治癒魔法でも欠損復元なんて使うことはそうない。シルガにとって貴重な機会であり、失敗できない責任重大な案件だ。
特別複雑なこの魔術式は、シルガが養い親と二人で考案したのを更に改良したものだ。改悪でないことを切実に祈りながら繊細に制御した魔力で術式を描いていく。こういった質量の大きい魔術式は、描画途中にも関わらず術者から魔力を奪おうと暴力的に催促し、完成に近づくにつれてその激しさを増す。完成間際に失敗したら目も当てられないことになるのだ。
シルガから大量の魔力が削られ、魔術式が完成した。あとは復元後のイメージを練って魔力を術式に流し込み展開させる。流し込む魔力の量は 治癒の着火剤になる程度にして、その後はエルザの魔力に頼るのが最も自然に本人の身体として構築できる。本人の魔力でどうにかできそうなラインを見極めるのが結構難しい。シルガは復元後のイメージをしやすくするため、切断されたエルザの腕をたまに取り出して見ながら 治癒を施していった。
一応の区切りが付いてすぐ、シルガは白狸亭に使い魔を飛ばして空室と予約の可否を店主に問い合わせた。明日、良い返事が来たらすぐに転移出来るように準備を整えておかなければならない。
復元されたとはいえ身体の一部を切断されたのだ。エルザは酷い熱を出してうなされ、昏睡状態だ。どうにか意識を引き上げたくてシルガは声を掛けたり汗を拭ったりと、いつかのジスみたいに甲斐甲斐しく世話をした。
「うぅ……」
うとうとしていたところを小さなうめき声で はっと目が覚めた。
シルガは慌てて立ち上がって見守った。ぼんやりと覚束ないエルザの焦点が次第にはっきりとしたものになり、かすれた声が尋ねた。
「ピポッチ、ここは……?」
「俺の家だ」
パチパチと薪がはぜる音が聞こえる。窓の外側では雪が降っていた。
「……静かなところね」
「ああ、かなり込み入ったところにあって人が来ることは ほぼない。ここに来たのはエルザが3人目だな」
「それは、レアね。なんだか得しちゃったわ」
エルザの背に厚めのクッションを入れて少しだけ上体を起こさせ、シルガはコップに水を注いだ。
「熱が出てるんだ。水分をとって安静にしていてくれ」
「ありがと」
エルザは差し出されたコップを普段通り受け取っているという違和感に気付いた。
「えっ? 腕が……ウソ、あるの?? やだちゃんと動く……うそ、でも確かに…… そっか、夢ね」
「……」
「変な夢だわぁ、ピポッチの家で看病される夢なんて」
「夢じゃない」
しばらくの間 沈黙が落ちた。
暖炉に薪を足そうか迷っていたら唐突に素っ頓狂な声が上がった。
「うそ、腕、ホントにあるの??? ポーンて飛んでったわよぉ、確かに!」
「気のせいだ」
「気のせい」
「おそらく幻覚を使うタイプの亡霊だったんだろう。それより、部屋の温度は寒くないだろうか」
「幻覚」
(そう、なのかしら……)
言われてみれば 突然景色が変わったりと、幻覚でも見たような感じのことばかりだ。
ふと、エルザはグイーズ達二人がいないことに急激に不安になった。
「……ね、あたしだけ、よね? ここにいるの」
「ああ、酷い怪我だったんだ。肉が削がれて骨は粉砕されて、腕が変な方向に曲がって……だから早急に治癒する必要があって俺の家に転移した。グイーズ達が転移機に設定した転移先は知らないが、たぶん大丈夫だろう」
「グイーズとサクちゃんは、きっと無事よね」
「ああ。グイーズはなんかしぶとい。俺もかつてないほどに腹が立ったくらいだし」
出来るだけ何でもない風を装ってやかんに水を足しながら相槌を打つと、少し落ち着いたらしいエルザがポツリと話し始めた。
「あたしあの二人、大好きなの」
「……」
「だから、腕があってよかったわ。失くしたと思ったときの喪失感はすごかった……これじゃ二人をギュってできないわ、ってね」
「ゆっくり休んで回復に専念してくれ。完治した腕で何をするか、具体的に考えると治りも早くなると思う」
「そうね。完治したら後ろから襲いかかって二人まとめて締め上げなくちゃ」
「……」
「もちろんピポッチもよ♡三人まとめて団子にしてあげる♡」
「やぶれまんじゅうになりそうなんだが……」
こっちにも団子ってあるんだな、とシルガは思った。
*****
水を飲むとすぐ、エルザは再び眠り込んでしまった。
欠損の復元は身体の一部を失ったという認識をはっきりとされないうちが より精緻に復元できる。当たり前にあった日常生活の記憶が脳の指令を普段通り行わせ、頭の中のイメージも明瞭だからだ。どんな姿をしていて、どんなふうに動かしていたか、どう動いていたか、どんなことが出来るのか、どう動かしたいのか、これだけはっきりと失った本人が以前と変わらずイメージできれば、治癒魔法の支配下に於いてそれに沿って無理なく自然に復元される。
治癒自体は無事に施すことが出来た。
だがこの治癒魔法は身体強化の延長にある治癒とは違って、何もないところから治癒を引き出す魔法だ。何を言ってるのか俺もよくわからないが、そういうものだとしか言えない。これは俺が子供のときからなんとなく使っていた魔法で、割と頻繁に使うので考察するためのサンプルには事欠かない。結果、記憶に関する魔法と連動しているように思う。
俺はそれまで、自分が普通に使っていた魔法について深く考えたことがなかった。この考察に至ったのは養い親と二人で暮らし始めてだいぶ過ぎたころだ。彼の家にあった無数の魔法書の中には俺が使うような治癒魔法に関するものはなかった。だが、彼が書いたと思われるレポートの束の中には、治癒、解毒、回癒、復元、記憶、幻覚、そういった生命に関わる魔法の様々な考察が記されていた。それらはとても興味深くわかりやすく面白く斬新なのに説得力があり可能性に満ちていて、あの人がどんなに理不尽で高圧的で自分勝手で癇癪持ちで配慮の足りない粗雑で暴力的な人間だろうと……それらの欠点を些細なことにしてしまうのだ。
で、治癒はとりあえず完了した。というのは、まだ魔法が作動中なのである。俺が出来ることはもうほぼないが、エルザの身体の中で俺の魔法がまだ生きている。俺の手を離れた治癒魔法は、エルザの身体の中でエルザの魔力を貪り食って治癒を行っている。目が覚めたらこれ以上ないくらいの飢餓状態になっているかもしれない。これもまた不思議な話だが魔力についての考察はまた今度にする。
エルザと話した限り、切断された衝撃と喪失感よりも腕があることへの安堵と歓喜が勝っている。元からあった通りの腕で何をしたいか、といった本人の具体的なイメージは、問題なく精緻に復元を進める手助けをしてくれるだろう。
だがここでひとつ問題が生じた。それは、俺の収納鞄の中身だ。
魔法薬
簡易椅子
簡易コンロ
簡易テーブル
自動結界付テント(一人用)
etc……
古代の薬草?雄株
古代の薬草?雌株
キラビットの爪
キラビットの牙
キラビットの肉
キラビットの毛皮
古ぼけた本
→エルザの腕 new
「…………」
布で包んで袋に入れ、時間停止機能がついた収納鞄で一時的に保管しているだけで、俺は一般的な普通の人だ。サイコパスじゃない。
切り離されたとはいえ他人の大切な身体の一部を勝手に処分するわけにはいかない。気のせいだ、幻覚だった、で押し通した手前、本人に確認をとることが出来ないのでやむを得ず預かっている。それに、切断された腕をエルザが見てしまえば精緻な復元を阻む可能性がある。失ったという強い衝撃が当たり前に腕があったイメージの邪魔をして以前ほど動かせなくなるかもしれない。だから一時的に保管しているだけで、俺は一般的な普通の人だ。サイコパスじゃない。
エルザの状態は今は落ち着いている。それでもまだ様子を見たいので傍で何かしながら待機しておく。作業するならやはり、魔道具づくりだ。
キラビットの毛皮と柔らかく鞣した鹿革を合わせてアスレイヤのマジックバッグとケープを作る。今度ケヘランへ行ったら裏地に良さそうな布を探そう。バッグは肩掛けだが、背負うタイプにも出来るようにした方が便利だろう。迷宮で遭遇したキラビットの毛皮が どれだけの術式を付与できるのか、実は少し楽しみだ。
それと、エルザが目を覚ました時のためにおかゆを用意しておいた。まずは消化の良いもので様子を見ながら食事をとってもらうためだ。俺も少し食べて、仮眠をとりつつ治癒の経過を観察するつもりだ。
エルザは普段通り明るく話していてもグイーズとサークェンの無事を気にして不安げだった。俺も状況がわからない以上、いい加減に無事だと言い切ることは出来ないが 無事であってほしい。彼ら三人のうち一人でも傷つき欠けるのは耐え難いことだ。俺は、グイーズ達3人がお互いを信頼して隙のない連携で戦う姿が、たぶん好きなのだと思う。
(もっと強い付与をするか?)
だが反動が凄まじいものになる。生死を分けるような重要な局面で指一本動かせなくなるのは避けたい。付与を徐々に強くして慣れて貰うしかないがそのための時間もない。身体強化はグイーズ達も自分で出来るのでそれはよくわかっていた。
―――オオオオオ
「グイーズ!」
不気味な雄叫びを上げて叩きつけるように振り下ろされた黒い大剣が 咄嗟に作ったシルガの結界を粉砕してグイーズの両手剣にめりこんだ。
「ぐぅッ、 チ……!」
「あたしが前に出るわ!」
戦士の亡霊は、ギリギリと競り合うグイーズを力で押し切り跳ね飛ばし、その脇腹を狙ったエルザの槍を剣を返して払いのけ、一瞬で体勢を変えて食らいつく。
「がっ……!!」
紅い刃先が結界を裂いてエルザの胸すれすれで止まった。だが、命を刈り取る肉食獣さながらに凝縮した殺気をのせた重く鋭い突きだ。凄まじい衝撃が心臓を打った。よろめくエルザを追撃する戦士の攻撃を阻もうと放たれたサークェンの矢が ぶんと薙ぎ払った大剣に弾かれ、それを受けきれずに押されたエルザが膝を付いた。
この隙に畳みかけて終わらせようと攻め込む戦士の足元に魔術式が描き出された。一瞬で展開された氷結魔法が戦士の膝まで一気に凍らせ動きを封じ、それでも自由な上半身から振り下ろされた剣をグイーズが防ぐ。
「離れてくれ!」
シルガの声と共にグイーズが跳んで退くと、空中に描かれたいくつもの魔術式から鋭い氷柱が弾丸のように降り注いだ。その間に治癒薬を使ってエルザが態勢を整えるのを確認しながらシルガは全員に結界を張り直す。
ずん、と音がして地面が揺れた。
4人が意識を向けた瞬間、石畳に亀裂が走ったかと思うと轟音を立てて地が裂け、その中心には魔術式を空中に描いた戦士がシルガの氷結魔法を憤然と蹴散らして立っている。
「魔法!? 何で亡者が魔法を使うんだ!?」
「あれは魔法じゃなくて、呪いだ」
どう違うんだ、と思ったがそれどころではない。
「グイーズさん!」
術式から放たれた禍々しい靄が意志を持った何かになって次々と襲い掛かった。それと同時に地を蹴って距離を詰めた戦士が大剣を振るう。
矢を魔法で強化したサークェンは襲い掛かる靄を粉砕するので手一杯だ。グイーズとエルザが剣を受けると同時に破壊される結界を シルガが何度も張り直すが重ね掛けする余裕はない。
二人のほんの少しの隙を突いて、戦士が標的を後方に移した。
「サク!! ぐあ!!」
注意が逸れたところを好機とばかりに渾身の力で押し飛ばされたグイーズは、神殿の柱に強かに背をぶつけた。
「くっ、 ぐはっ!!」
獰猛に迫る戦士の一撃がシルガの結界を叩き壊してサークェンのクロスボウを粉々に砕いた。その衝撃波を直に受けた身体は 宙を回転して地面に叩きつけられた。すぐに体勢を整えようにも立ち上がることができない。蹲って見上げた先で漆黒の大剣が振り上げられる様子が、ゆっくりと見えた。
――ゴキョッ!!
容赦なく振り下ろした戦士の大剣が肉を裂いて骨にめり込む嫌な音を立てた。
「ざ……ん、ねん! あたしの腕よ♡」
サークェンを庇って受けた漆黒の刀身が骨に入り込むのも構わず、エルザは身体に力を入れた。
「ひとりも、あげないわっ!!!!」
ここまできて何かを惜しむようなことはしない。
脚と腹筋をばねに身体をしならせ勢いをつけ、槍の穂を戦士の心臓目掛けて突き込むことだけ考える。
「うらああぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
熱量を持ったエルザの槍が戦士の胸を貫いた。更に力を入れて押し込み、エルザは戦士を貫いたまま前進した。
「おおおおお!!!」
――ヒュッ!
「うわ、まずい!」
目の前に飛んできたエルザの腕をシルガは咄嗟に掴んで駆け出した。
ぶしゅっと血を噴き出し傾いだエルザの身体を支え、切断され半分になった上腕を異空間結界で囲って切り取り、失血防止のため時間停止を重ねて現状維持に持ち込む。
「エルザ、しっかりしろ!」
かなり後退させられた戦士は大剣を持ったままピクピクと痙攣している。
サークェンに治癒薬を飲ませ、倒れ込んだエルザをシルガが肩で支えるのを確認したグイーズは転移機を起動させ、叫んだ。
「撤収!!」
金色に光る新緑の目がグイーズをまっすぐに見て声を張り上げた。
「宿にいる!」
短く言うと同時に、一瞬で展開された転移術式が二人を飲み込んで消え、ぶんと振り下ろされた大剣が誰もいなくなった空間を叩き切って地面にめり込んだ。その衝撃に招かれるように戦士は膝を付いて動かなくなった。
「……展開速度が半端ねぇ」
グイーズが起動させたのは予備の転移機だ。ケヘランで上質のものを探しても転移機自体が品切れだったのは9階層の奴らと関係してるに違いない。性能が劣る予備の展開速度がかなり遅いのを差し引いても あの速さは尋常じゃない。
(ちっくしょ亡霊なんぞに……っておい……)
先程からぴたりと動きを止めていた戦士の亡霊が、胸に突き刺さった槍の柄を掴んだ。ぐぐっ、と力を入れて自ら引き抜いた跡には ぽっかりと穴ができている。その底なしの空洞の中でどす黒い不快なものが渦巻き怨嗟の声を上げているように見えた。戦士は掴んだ槍を横に払うと、ひゅっと風を切って穂先をこちらへと向けた。
――まだ展開に時間がかかる。
「エルザの槍で俺を殺れっと、思うなよ!!!」
獣の勢いで突進してくる槍を避けるどころか自らその前へと立ちはだかる。身を捻って避けたものの元より完璧に躱す気もなく、グイーズの脇腹を切り裂いた槍の 太刀打と柄の中間部を掴み、渾身の力を込めて石突側を押し上げた。
「おおおお!!!っらあぁぁぁぁ!!!!」
振り上げられた柄を避け身体を逸らした戦士の 槍を握る力がほんの少し緩んだのを見逃さず、グイーズはぶん捕った槍の穂を石畳を削りながら回転させて素早く敵の喉へとねじ込んだ。
グイーズの槍を受けて仰け反った胴から、切り離された宵闇色の兜が勢いよく飛んだ。
(全然手応えねえんだけど! ……やったのか?)
首をなくした戦士がよろめき 二、三歩後退する。倒れ込むこともなくそのまま硬直した身体がぶるぶると震え、胸の空洞で蠢く混沌の渦が、ぞぞぞ……と音をさせて膨れあがった。それが良くないものであることは本能的に解ったのだが、どう対処したものかわからない。
「やべっ……!」
このまま放っておいて破裂でもして飛び散ったら、取り返しがつかないことになるのではないか?
そんな悪い予感がしたグイーズはとにかく膨張を防ごうと咄嗟に左手を黒い渦の中心に突っ込んでしまった。
「ぐっ、あ、ああああああ」
激痛とともに不快な蟲のようなものがウゾウゾと這い上がり 身体の中を食い荒らすように浸食してくる。
(いやこれどうしろっての!? やっべー後先なんも考えてなかったわ!!)
左手から押し寄せる凄まじい怨嗟の激流がグイーズを飲み込み、憎悪と憤怒、悲哀と絶望の渦となって脳を滅茶苦茶に揺さぶる。それは何もかもをいびつに捻じ曲げ、自分が何者かさえもわからなくなりそうだった。
――呪いだ。
ふいに、シルガの静かな声がグイーズの脳裏に落ちてきた。
「グイ…ズさ…… 帰る、 っす」
やっとかっと絞り出したサークェンの声が呪詛で満ちた禍々しい唸りの渦を裂いて、海を割る音のようになってグイーズの心臓に届いた。
「うおおおおおおお!!!」
混沌に引きずり込まれて無くなりそうだった身体が境界を取り戻し、ずしりと腹の底に力が戻ってくるのがわかる。
底なしの穴から止めどなく這い出てくる生き物にも似た呪詛は、グイーズを飲み込んで内側から蝕み食い荒らすことをまだ諦めていない。気力を振り絞ったグイーズは膝に力を入れて踏ん張り、左腕を肩まで深く突っ込んで不気味な空洞を塞いだ。だが、つい先程まで感じていた恐怖も激痛も不明瞭な悪い予感も、今は全く感じなかった。
(……? 何か、ある……っ!!)
底なしと思われた空洞の中で、掌に何か手応えがある。それを掴み 拳を握り込んでぐっと引けば、ブチブチと何かが剥がれ引っこ抜ける感触がした。グイーズの左半身を覆うほどに群がった不快なものたちが一斉にざわつく。
「っせえぇぇぇぇい!!!」
きつく絡みつく呪詛の吻を引きちぎり、握り込んだ拳もそのままに、グイーズは ようやく展開された転移術式の中へ飛び退った。足元から漏れ出した帰路の明かりにほっとして顔を上げ、最後にもう一度、周囲を見渡した。転移術式の中から見た向こう側の景色は美しく、穏やかで安らいでいる。ひしめき合って苦しげに蠢く呪詛の塊を除いては。
「……おたくら、えらい不自由なこってお気の毒様。……同情しちまいそうだ」
二人が去ったそこは迷路のように入り組んだ石造りの通路に変わり、グイーズがふとこぼした呟きが 寂しげにこだまして消えた。
*****
宿にいる、と伝えたのだがシルガは自宅へ転移していた。なにしろ一刻を争う事態だ。エルザをベッドへ運び、回収した腕と傷口を確認した結果、治癒魔法でくっつけるよりも復元した方が元通りに動く可能性が高い。
(治癒魔法――欠損復元)
シルガはこれ以上ないほど丁寧に魔力を行使し魔術式を構築した。治癒魔法でも欠損復元なんて使うことはそうない。シルガにとって貴重な機会であり、失敗できない責任重大な案件だ。
特別複雑なこの魔術式は、シルガが養い親と二人で考案したのを更に改良したものだ。改悪でないことを切実に祈りながら繊細に制御した魔力で術式を描いていく。こういった質量の大きい魔術式は、描画途中にも関わらず術者から魔力を奪おうと暴力的に催促し、完成に近づくにつれてその激しさを増す。完成間際に失敗したら目も当てられないことになるのだ。
シルガから大量の魔力が削られ、魔術式が完成した。あとは復元後のイメージを練って魔力を術式に流し込み展開させる。流し込む魔力の量は 治癒の着火剤になる程度にして、その後はエルザの魔力に頼るのが最も自然に本人の身体として構築できる。本人の魔力でどうにかできそうなラインを見極めるのが結構難しい。シルガは復元後のイメージをしやすくするため、切断されたエルザの腕をたまに取り出して見ながら 治癒を施していった。
一応の区切りが付いてすぐ、シルガは白狸亭に使い魔を飛ばして空室と予約の可否を店主に問い合わせた。明日、良い返事が来たらすぐに転移出来るように準備を整えておかなければならない。
復元されたとはいえ身体の一部を切断されたのだ。エルザは酷い熱を出してうなされ、昏睡状態だ。どうにか意識を引き上げたくてシルガは声を掛けたり汗を拭ったりと、いつかのジスみたいに甲斐甲斐しく世話をした。
「うぅ……」
うとうとしていたところを小さなうめき声で はっと目が覚めた。
シルガは慌てて立ち上がって見守った。ぼんやりと覚束ないエルザの焦点が次第にはっきりとしたものになり、かすれた声が尋ねた。
「ピポッチ、ここは……?」
「俺の家だ」
パチパチと薪がはぜる音が聞こえる。窓の外側では雪が降っていた。
「……静かなところね」
「ああ、かなり込み入ったところにあって人が来ることは ほぼない。ここに来たのはエルザが3人目だな」
「それは、レアね。なんだか得しちゃったわ」
エルザの背に厚めのクッションを入れて少しだけ上体を起こさせ、シルガはコップに水を注いだ。
「熱が出てるんだ。水分をとって安静にしていてくれ」
「ありがと」
エルザは差し出されたコップを普段通り受け取っているという違和感に気付いた。
「えっ? 腕が……ウソ、あるの?? やだちゃんと動く……うそ、でも確かに…… そっか、夢ね」
「……」
「変な夢だわぁ、ピポッチの家で看病される夢なんて」
「夢じゃない」
しばらくの間 沈黙が落ちた。
暖炉に薪を足そうか迷っていたら唐突に素っ頓狂な声が上がった。
「うそ、腕、ホントにあるの??? ポーンて飛んでったわよぉ、確かに!」
「気のせいだ」
「気のせい」
「おそらく幻覚を使うタイプの亡霊だったんだろう。それより、部屋の温度は寒くないだろうか」
「幻覚」
(そう、なのかしら……)
言われてみれば 突然景色が変わったりと、幻覚でも見たような感じのことばかりだ。
ふと、エルザはグイーズ達二人がいないことに急激に不安になった。
「……ね、あたしだけ、よね? ここにいるの」
「ああ、酷い怪我だったんだ。肉が削がれて骨は粉砕されて、腕が変な方向に曲がって……だから早急に治癒する必要があって俺の家に転移した。グイーズ達が転移機に設定した転移先は知らないが、たぶん大丈夫だろう」
「グイーズとサクちゃんは、きっと無事よね」
「ああ。グイーズはなんかしぶとい。俺もかつてないほどに腹が立ったくらいだし」
出来るだけ何でもない風を装ってやかんに水を足しながら相槌を打つと、少し落ち着いたらしいエルザがポツリと話し始めた。
「あたしあの二人、大好きなの」
「……」
「だから、腕があってよかったわ。失くしたと思ったときの喪失感はすごかった……これじゃ二人をギュってできないわ、ってね」
「ゆっくり休んで回復に専念してくれ。完治した腕で何をするか、具体的に考えると治りも早くなると思う」
「そうね。完治したら後ろから襲いかかって二人まとめて締め上げなくちゃ」
「……」
「もちろんピポッチもよ♡三人まとめて団子にしてあげる♡」
「やぶれまんじゅうになりそうなんだが……」
こっちにも団子ってあるんだな、とシルガは思った。
*****
水を飲むとすぐ、エルザは再び眠り込んでしまった。
欠損の復元は身体の一部を失ったという認識をはっきりとされないうちが より精緻に復元できる。当たり前にあった日常生活の記憶が脳の指令を普段通り行わせ、頭の中のイメージも明瞭だからだ。どんな姿をしていて、どんなふうに動かしていたか、どう動いていたか、どんなことが出来るのか、どう動かしたいのか、これだけはっきりと失った本人が以前と変わらずイメージできれば、治癒魔法の支配下に於いてそれに沿って無理なく自然に復元される。
治癒自体は無事に施すことが出来た。
だがこの治癒魔法は身体強化の延長にある治癒とは違って、何もないところから治癒を引き出す魔法だ。何を言ってるのか俺もよくわからないが、そういうものだとしか言えない。これは俺が子供のときからなんとなく使っていた魔法で、割と頻繁に使うので考察するためのサンプルには事欠かない。結果、記憶に関する魔法と連動しているように思う。
俺はそれまで、自分が普通に使っていた魔法について深く考えたことがなかった。この考察に至ったのは養い親と二人で暮らし始めてだいぶ過ぎたころだ。彼の家にあった無数の魔法書の中には俺が使うような治癒魔法に関するものはなかった。だが、彼が書いたと思われるレポートの束の中には、治癒、解毒、回癒、復元、記憶、幻覚、そういった生命に関わる魔法の様々な考察が記されていた。それらはとても興味深くわかりやすく面白く斬新なのに説得力があり可能性に満ちていて、あの人がどんなに理不尽で高圧的で自分勝手で癇癪持ちで配慮の足りない粗雑で暴力的な人間だろうと……それらの欠点を些細なことにしてしまうのだ。
で、治癒はとりあえず完了した。というのは、まだ魔法が作動中なのである。俺が出来ることはもうほぼないが、エルザの身体の中で俺の魔法がまだ生きている。俺の手を離れた治癒魔法は、エルザの身体の中でエルザの魔力を貪り食って治癒を行っている。目が覚めたらこれ以上ないくらいの飢餓状態になっているかもしれない。これもまた不思議な話だが魔力についての考察はまた今度にする。
エルザと話した限り、切断された衝撃と喪失感よりも腕があることへの安堵と歓喜が勝っている。元からあった通りの腕で何をしたいか、といった本人の具体的なイメージは、問題なく精緻に復元を進める手助けをしてくれるだろう。
だがここでひとつ問題が生じた。それは、俺の収納鞄の中身だ。
魔法薬
簡易椅子
簡易コンロ
簡易テーブル
自動結界付テント(一人用)
etc……
古代の薬草?雄株
古代の薬草?雌株
キラビットの爪
キラビットの牙
キラビットの肉
キラビットの毛皮
古ぼけた本
→エルザの腕 new
「…………」
布で包んで袋に入れ、時間停止機能がついた収納鞄で一時的に保管しているだけで、俺は一般的な普通の人だ。サイコパスじゃない。
切り離されたとはいえ他人の大切な身体の一部を勝手に処分するわけにはいかない。気のせいだ、幻覚だった、で押し通した手前、本人に確認をとることが出来ないのでやむを得ず預かっている。それに、切断された腕をエルザが見てしまえば精緻な復元を阻む可能性がある。失ったという強い衝撃が当たり前に腕があったイメージの邪魔をして以前ほど動かせなくなるかもしれない。だから一時的に保管しているだけで、俺は一般的な普通の人だ。サイコパスじゃない。
エルザの状態は今は落ち着いている。それでもまだ様子を見たいので傍で何かしながら待機しておく。作業するならやはり、魔道具づくりだ。
キラビットの毛皮と柔らかく鞣した鹿革を合わせてアスレイヤのマジックバッグとケープを作る。今度ケヘランへ行ったら裏地に良さそうな布を探そう。バッグは肩掛けだが、背負うタイプにも出来るようにした方が便利だろう。迷宮で遭遇したキラビットの毛皮が どれだけの術式を付与できるのか、実は少し楽しみだ。
それと、エルザが目を覚ました時のためにおかゆを用意しておいた。まずは消化の良いもので様子を見ながら食事をとってもらうためだ。俺も少し食べて、仮眠をとりつつ治癒の経過を観察するつもりだ。
エルザは普段通り明るく話していてもグイーズとサークェンの無事を気にして不安げだった。俺も状況がわからない以上、いい加減に無事だと言い切ることは出来ないが 無事であってほしい。彼ら三人のうち一人でも傷つき欠けるのは耐え難いことだ。俺は、グイーズ達3人がお互いを信頼して隙のない連携で戦う姿が、たぶん好きなのだと思う。
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