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獲物は反撃を開始する
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アルに言われてハッとする。そうだ、早く洗ってあげないと彼の身体に負担がかかるではないか。
「ご、ごめんっ」
慌てて石鹸をシャカシャカ泡立て、海綿で背中を擦る。彼の背中には左の肩甲骨辺りから斜めに走る大きな傷跡があった。過去に父王に切られたと言う傷だろう。
前にも今回負った傷があるし、良く見ると他にも細かな傷がたくさんある。
「……痛くない?」
「平気、もう少し強くても良いくらい」
傷の事を聞かれたとは思わなかったようだ。早苗は言われた通り少し力を強め、念入りに洗って行く。後ろ側を洗い終え前に回った。
「前は良いよ、別に手が動かない訳じゃないし」
「私は洗われたけど?」
そう返すと、問答無用で洗い始める。泡だらけの海綿を肌の隅々まで滑らせていると、何故か背中を洗っていた時より胸の鼓動が激しくなって来た気がした。
「……大丈夫? 何か、真っ赤だけど……」
指摘され、思いきり心臓が大きく跳ねる。
「へ?! だ、だだ大丈夫大丈夫!!」
全然大丈夫では無い。どこを意識していたかなんて、気付かれてはいけない。早苗は額からだらだらと汗を流す。
「ふーん……?」
そんな彼女を、アルはじーっと見詰めた。動揺と浴室内の熱気で汗ばむ肌に白いシャツがピタリと貼り付いている。
彼はおもむろに手を伸ばすと、シャツのボタンをぷつぷつ外して行く。
「ん? えっ、何やってんの?!」
「ん~? いやあ、びしょびしょだし着てても脱いでも同じかな? と思って。君も汗流したら?」
言いながら、あれよあれよと言う間にテキパキと脱がされる。下穿きと共にズボンも一気に下げられた。
「ひゃああっ!」
何と言う手際の良さだろうか。抵抗する暇も無かった。
「あ」
何かに気付いたらしいアルが一点に視線を向ける。
「真っ赤になってる理由、分かっちゃった」
バッと下を見ると、彼が見詰める脚の間から粘度のある液体がとろりと糸を引き下に落ちる所だった。
アルが自身の口の端をペロリと舐める。まるで獲物を前にした捕食者のようだ。
「……君って、分かりやすくて可愛い……」
囁くと、目の前の濡れた下生えに口付けを落とす。
「や、ちょ!?」
今日はまだ洗っていないのに!焦って腰を引こうとするが、掴まれて引き寄せられる。この人は本当に弱っているのだろうか?
「可愛い……好き……」
「……え?」
「君のここ、素直で可愛い」
まさかの告白かと思ったのに、股間が好きだと宣ったのか。この男は。ときめきを返して欲しい。
「~もうっ!」
「はは、君も可愛いよ? 真っ直ぐでお人好しで強くて……」
「……そ、それは、どういう、ひゃっ!」
聞こうとしたが、彼が脚の間に顔を埋めぺろぺろと舐め始めてしまう。そんな事をされながら話すのは至難の技だ。
「あ、あ……んっ……は……」
優しく撫でるように舌が這う度、早苗の口から甘い吐息が漏れた。
口淫が苦手と言う割りに、彼はこの所毎回執拗に舌で嬲なぶる。まるでそれを好んでしているかのようだ。
「ま、ますたぁ……あっ」
「……違うでしょ? 何て呼ぶんだっけ? 俺の事」
濡れて開いた花弁を指でぬるぬる撫でられる。
「ちゃんと言えたらご褒美あげるよ……?」
「あ……あぅ……あ、ありゅ……あっ……」
舌がもつれて上手く言葉を紡げない。アルは可笑しそうにクスクス笑う。
早苗は優しくもどかしい刺激がこんなにも辛いのに。目に溜まった水滴が零れ、ぱたぱたと落ちた。
「……っ」
降って来た雫に、アルはハッとする。見上げて見えた泣き顔に手を止めた。
彼は戸惑うように瞳を揺らめかせ見入っている。暫し固まったかと思うと、焦燥した顔で衝動的に腕を伸ばした。
勝手に動いた腕は、彼女の身体を掻き抱く。早苗はぎゅうぎゅう抱き締められる。
「………………」
「……あ、アル……?」
「ご、ごめんっ」
慌てて石鹸をシャカシャカ泡立て、海綿で背中を擦る。彼の背中には左の肩甲骨辺りから斜めに走る大きな傷跡があった。過去に父王に切られたと言う傷だろう。
前にも今回負った傷があるし、良く見ると他にも細かな傷がたくさんある。
「……痛くない?」
「平気、もう少し強くても良いくらい」
傷の事を聞かれたとは思わなかったようだ。早苗は言われた通り少し力を強め、念入りに洗って行く。後ろ側を洗い終え前に回った。
「前は良いよ、別に手が動かない訳じゃないし」
「私は洗われたけど?」
そう返すと、問答無用で洗い始める。泡だらけの海綿を肌の隅々まで滑らせていると、何故か背中を洗っていた時より胸の鼓動が激しくなって来た気がした。
「……大丈夫? 何か、真っ赤だけど……」
指摘され、思いきり心臓が大きく跳ねる。
「へ?! だ、だだ大丈夫大丈夫!!」
全然大丈夫では無い。どこを意識していたかなんて、気付かれてはいけない。早苗は額からだらだらと汗を流す。
「ふーん……?」
そんな彼女を、アルはじーっと見詰めた。動揺と浴室内の熱気で汗ばむ肌に白いシャツがピタリと貼り付いている。
彼はおもむろに手を伸ばすと、シャツのボタンをぷつぷつ外して行く。
「ん? えっ、何やってんの?!」
「ん~? いやあ、びしょびしょだし着てても脱いでも同じかな? と思って。君も汗流したら?」
言いながら、あれよあれよと言う間にテキパキと脱がされる。下穿きと共にズボンも一気に下げられた。
「ひゃああっ!」
何と言う手際の良さだろうか。抵抗する暇も無かった。
「あ」
何かに気付いたらしいアルが一点に視線を向ける。
「真っ赤になってる理由、分かっちゃった」
バッと下を見ると、彼が見詰める脚の間から粘度のある液体がとろりと糸を引き下に落ちる所だった。
アルが自身の口の端をペロリと舐める。まるで獲物を前にした捕食者のようだ。
「……君って、分かりやすくて可愛い……」
囁くと、目の前の濡れた下生えに口付けを落とす。
「や、ちょ!?」
今日はまだ洗っていないのに!焦って腰を引こうとするが、掴まれて引き寄せられる。この人は本当に弱っているのだろうか?
「可愛い……好き……」
「……え?」
「君のここ、素直で可愛い」
まさかの告白かと思ったのに、股間が好きだと宣ったのか。この男は。ときめきを返して欲しい。
「~もうっ!」
「はは、君も可愛いよ? 真っ直ぐでお人好しで強くて……」
「……そ、それは、どういう、ひゃっ!」
聞こうとしたが、彼が脚の間に顔を埋めぺろぺろと舐め始めてしまう。そんな事をされながら話すのは至難の技だ。
「あ、あ……んっ……は……」
優しく撫でるように舌が這う度、早苗の口から甘い吐息が漏れた。
口淫が苦手と言う割りに、彼はこの所毎回執拗に舌で嬲なぶる。まるでそれを好んでしているかのようだ。
「ま、ますたぁ……あっ」
「……違うでしょ? 何て呼ぶんだっけ? 俺の事」
濡れて開いた花弁を指でぬるぬる撫でられる。
「ちゃんと言えたらご褒美あげるよ……?」
「あ……あぅ……あ、ありゅ……あっ……」
舌がもつれて上手く言葉を紡げない。アルは可笑しそうにクスクス笑う。
早苗は優しくもどかしい刺激がこんなにも辛いのに。目に溜まった水滴が零れ、ぱたぱたと落ちた。
「……っ」
降って来た雫に、アルはハッとする。見上げて見えた泣き顔に手を止めた。
彼は戸惑うように瞳を揺らめかせ見入っている。暫し固まったかと思うと、焦燥した顔で衝動的に腕を伸ばした。
勝手に動いた腕は、彼女の身体を掻き抱く。早苗はぎゅうぎゅう抱き締められる。
「………………」
「……あ、アル……?」
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