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獲物にされた猟師ちゃん
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しおりを挟むいけない、逃げなければと踏み出すものの走る事が出来ない。ただ足がゆっくりと前に出る程度だ。
それでも前へ前へ進もうと懸命に足を動かすが、徐々に身体の力が抜けていき、彼女はついに地面に膝を着く。いつの間にか、背後から迫る音は消えている。
「なに、これ……力が……ぎゃ!?」
何処からかシュルシュルと伸びて来た細長い物が、早苗の右の足首に巻き付いて来た。緑色をしたそれは、動物のようでもあり植物の蔦のようでもある。
右足首だけで無く左足首、右膝、左膝、腰と次々に絡み付かれる。早苗は必死に外そうとするが、身体に力が入らないせいか全く外す事が出来ない。
早苗が必死に抵抗していると、またしても甘い匂いが立ち込める。今度は直接大量の香水を吹きかけられたかのような濃厚さだ。
「やだ、何これ、やだ」
両手首にも巻き付いた緑のそれは、早苗の身体を上に引っ張り上げ宙吊りにしてしまう。
緑色の物がシュルリと首に巻き付いた時、ついに彼女は恐怖の悲鳴を上げた。
「いやぁああ!! やぁっ止めてっ!!」
早苗が恐怖に震える言葉を口にしたその時、急に右手が解放される。
「そう言う台詞、寝室以外で言わないでよね」
聞こえて来た声にのろのろと視線をさ迷わせると、早苗に向かって掌を掲げたアルの姿があった。
「え……?」
恐怖と絶望の中見付けた見知った顔に、彼女の心には喜びと安堵が広がる。
「……た、助け、て……」
身体に加えて段々と頭が重くなり、紡いだ言葉は途切れ途切れで掠れていた。
「何で俺が? まぁ、結果的には助かる事になると思うけど」
アルの憎たらしい台詞を聞きながら、早苗はゆっくりと重たい目蓋を閉じて行く。
「取り敢えず、動かないでね? ……って聞いてないか」
そこまでは聞こえてはいたが、早苗はもう目蓋を開ける事も返事をする事も出来なかった。
**
早苗は、辺りがざわざわと騒がしい事に気付く。だが先ほどの森の騒がしさとは違い人の立てる音や声で、恐ろしさは感じない。
身体はふわふわと浮いて、何処かに移動しているようだ。早苗は意識が遠くなったり、また戻って来たりを繰り返している。
「怪我は無さそうですが、苦しそうだし酷い汗ですね。水と布を持って来たので拭きますよ」
早苗の知らない声の主はフィートと言う大柄な青年だ。
「俺がやる。部屋から出てて」
「え? そ、そうですか? あ、じゃあ娼館に連絡して来ますね」
不思議そうにしながら別の事をしようとしたフィートを、アルが制止する。
「待て、それもいい。とにかく部屋から出て」
「……ええ?! ま、まさかアル様……」
「おかしな想像をするな。これは女だよ」
「え?! そうなんですか?! てっきり少年かと……」
案の定早苗の性別を間違えていたフィートは驚きの声を上げた。
フィートがやっと出て行ったのを見届けると、アルは部屋の鍵を内側から閉め、ベッドに横たえた早苗の元へ向かった。
額に冷たい物が触れ早苗は薄く目を開ける。それは頬や首に移動し、熱く火照った肌に心地良い感覚を残して行く。
「汗だくだから脱がして拭くよ?」
「ぅ……あ……」
声は聞こえるが、荒い呼吸を吐き出すばかりで上手く声が出ない。
シャツのボタンがぷつぷつ外され前を開かれると、流れ出た汗が空気に触れ蒸発し、熱い身体が少しだけ冷やされる。
こちらで買った胸当ても外されると、早苗の口から熱い溜め息が漏れた。
冷たい物が、今度は胸の間を通る。アルの口振りからすると、布で汗を拭われているようだ。
普段なら羞恥心の一つも湧きそうな状況だが、彼女の熱に浮かされた頭では丁寧に拭われる心地良さしか感じられない。
「ぁっ……」
「……手首が赤いね…………はい、治ったよ。下も脱がすね」
布が不意に胸の頂を掠めた時何故か甘い声が漏れたが、アルは気にした様子も無く淡々と清拭を続けている。
彼は次に腰紐を解ほどき腰の下に腕を差し込み浮かすと、色気の無い緑のサルエルパンツを引き降ろす。現れた汗にまみれた肌を、濡らして固く絞った布で拭いて行く。
「ぅ、ん……ぁ……あつぃ……」
アルの手の動きに性的な意味合いは欠片も感じられないのに、腹部や太股を拭われる度に早苗の感じる心地よさは、明らかに性的な色を帯びて来ている。
横向きに転がされ、下に残っていたシャツを抜き取り背中も拭く。
「は、ぁふ……ぅ……」
「他に傷は無いみたいだね」
やられている事は介護か看護のようなのに、早苗の声だけが甘く異質に感じられる。
「……さて、まず君が何故そう言う状態になったのか説明した方が良いかな? ……って言っても今の君の溶けた頭じゃ分からないよね。でも取り合えずこれだけ。君、死にたい?」
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