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Chapter #0
魔法の言葉
しおりを挟む「×××××××……」
どうしよう。
目の前の人がこっちに何か言ってる。
日本語ではない言語、たぶん英語で。
「え、えっと」
英語がすこぶる苦手な私は、苦笑いのまま固まっていた。
ものすごいイケメンに声をかけられた——ところまでは良かったものの、まさか外国の方だったとは。
一瞬だけ浮かれかけた気持ちが即座にして地に堕ちる。
どうしよう、しゃべれない。
「Oh, ×××××? ×××××……」
こうして話しかけられている以上、私もとりあえず何か返事をしなきゃいけないのだけれど、まったくもって言葉が浮かんでこない。
はろー。
はわいゆー。
あいむふぁいんせんきゅー。
えんじゅー?
外国人と会ったらとりあえずこれらのフレーズを使えばいいと思っていたけれど、今この状況では適切じゃないような気がする。
いま相手が言っているのはハローでもハワイユーでもない。
聞き取れはしなかったけれど、明らかに他の言葉だった。
おそらく挨拶の類ではないのだろう。
なんだろう。
何て言ったの??
それがわからなければ、こちらも答えようがない。
——聞き取れなかったときは、こう言えばいいの!
脳裏で親友の声が蘇る。
そうだ。
聞き取れなかったときは、あの言葉を使えばいいんだ。
彼女が教えてくれたじゃないか。
聞き逃した相手の言葉を、もう一度引き出させる奇跡の呪文。
「…………」
私は一度深呼吸して。
その魔法の言葉を口にした。
「……『ぱーどぅん』?」
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