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第一章 フーバスタン帝国編

第18話 〈思い出!!①〉

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「じゃ、俺はこの薬草を調合依頼に出してくるから」

「本当に今日は休みでいいの?」

「毎日依頼受けてたら疲れちゃうだろ。もう魔王はいないんだし、ノンビリ行こうぜ」

「お休み~! やった~!」


 俺はフーバスタン帝国に来て、初めての休日を作る事にした。
 まあ、俺は溜まった薬草をポーションへと調合してもらうため、冒険者ギルドに錬金術師への調合依頼を出しに行ってからの休日になるのだが……。


「オマエ達はどうすんの?」

「私はですね~、お買い物に行きたいです~」

 アンナは久しぶりの休日と聞いて、心が弾んでいるようだ。


「アンナが買い物行くなら、私も一緒に行こうかな~?」

「本当ミレーヌちゃん!? やった~!」

 楽しそうで何より。
 かつてのパーティーの最年少と最年長コンビだが、昔から本当の姉妹のように仲がいい。

 俺としては、知力F&Gコンビを野に放つのは危険な気もするが、買い物するだけなら、そうそうやらかしたりはしないだろう。

 俺は一抹の不安を憶えながら二人に別れを告げた。


「じゃあ、また明日な」

「はいです~」
「じゃあね」

 俺は薬草がパンパンに入った大きなリュックを背負い、一人冒険者ギルドに向かう。
 思えばアンセムにあるミレーヌの領地で、アンナと再会してから、一日一人で動くなんて初めてかもしれない。

 気のおけない仲間達と居るのも楽しいが、俺はやはり一人も好きだ。
 そもそもが魔導士やってる奴なんて、頭でっかちのコミュ障野郎がほとんどだと思う。
 まあ、俺は? 持ち前のコミニュケーション能力と天才的魔法の才能であっという間にアイツ達と打ち解けたがな。
 今でも初めて会った日のことを、昨日のように思い出せる。


「もう五年も前になるのか……」



 ──五年前──。


「ほう……ここが大陸同盟ジャスティスの本部があるフォルテッシモか……」


 なかなか洒落た良い街ではないか。
 さすがに大陸同盟ジャスティスの中心的役割を担うハウンドッグ王国の王都なだけはある。

 大陸同盟ジャスティスに無理矢理招集されて、全然気が乗らないままフォルテッシモに来たが、この街並みを見られたのは悪くはないかもしれない。

 ハウンドッグ王国の王都フォルテッシモは、俺の住むノルガリア王国とは違って、華やかな街だった。

 歴史が古いだけが自慢のノルガリアとは違うな。
 こんな国だからこそ、地理的要因だけで無く、大陸同盟ジャスティスの中心になれたのだろう。


「さて、そろそろ時間か……」

 気が進まないが、無断で欠席すると、後でどんなペナルティを課せられるか分からない。
 大人しく晩餐会に出席するか……。


 晩餐会には大陸同盟ジャスティスの盟主達を含む、加盟国のほとんどの重鎮が参加していた。
 そのため並ぶ料理の数々は、世界三大料理に数えられるハウンドッグ料理の贅を尽くした物が並べられていた。

 スゲエご馳走だけど、魔王軍と衝突している国の中には、前線に送る食料が不足している国もあると聞くのに……何やってんだコイツらは?
 本当に状況分かってんのか?

 俺はその中から、サラダを皿に取り分け食べていた。


「……ん?」

 俺が豪華すぎる料理に苛立ちを覚えていると、視界の隅に、有り得ない勢いで料理にがっつく一人の女が見えた。


「うわ……きったね」

 せっかく美人ぽいのに、とにかく食い方が汚い。
 パラパラとこぼしながら、口に入るだけ食べ物を詰め込んでいる。
 その端正で整った顔立ちも、スラリとした美しいスタイルも全て台無しである。

 ナイフとフォークを使う習慣はないのか?
 ほら、無茶苦茶な食べ方してるから、喉つまらせちゃってるじゃんか。

 それを遠巻きに見ていると、一人の女神官が飲み物を持って食べ方の汚い女に駆け寄り、飲み物を渡して背中をさすっている。


「さすが神官……慈悲の心はあんなところにまで向けられるんだな」

 そんな事よりあの女神官、神官の儀式用のローブを着ているのだか、その上からでも分かるくらいの巨乳の持ち主だ。
 しかもカワイイ。

 スゴイな……神官とかの聖職者は、慎ましい食生活送ってると思ってたけど、良い物食べてるんだな。
 質素な食い物じゃ、あんな巨乳には成長しないだろ。


「いやーん、照れてる~」
「今度はこちらの料理も食べてごらんになって」
「今度は私の番よ~?」


 ……なんだアレは?
 一人の可愛らしい少年に、年増のお姉様方が群がっている。
 ああいう手合いの可愛らしい顔が、年上お姉様の母性を激しくくすぐるのだろうか?
 別に悔しくとも何ともないが、敢えて言わせてもらおう……。


「年増になんてモテたくないんだからね!」

 おっと、誰にも聞かれていないだろうな?
 俺の天才魔導士としてのイメージが壊れてしまうところだった。


 そう言えば、今日はフーバスタン帝国は参加していないんだったな。
 せっかく勇者に会えると思ったのだが、仕方ない。



『それではご来賓の皆様、ここで大陸同盟ジャスティスを代表して、ハウンドッグ王国オートゥモ国王から重大な発表が御座います。暫しの間、手を休めて御拝聴下さいますようお願い致します』

 なんだ?
 何がはじまる?


『え~、ハウンドッグ王国国王オートゥモです。お集まりの皆様、本日はお忙しい中、大陸同盟ジャスティス主催の晩餐会に足をお運びいただき、誠にありがとうございます。本日、世界の国々でご活躍の皆様にお集まりいただいたのは、対魔王軍スペシャルパーティーの結成を発表するからであります!』

 対魔王軍スペシャルパーティーだぁ?
 嫌な予感がするぜ。


『数年前のある日、フーバスタン帝国のとある町で、勇者の資質を持つ者が発見されました。これには世界中がお祭り騒ぎになったのも記憶に新しいと思います。ですが勇者に全てを託してしまってよいのでしょうか?大陸同盟ジャスティス大陸同盟ジャスティスで、魔王軍に対する剣を持つべきではないでしょうか?』

 このオートゥモ国王の演説に、各国の代表達がそうだ、そうだと賛同する。


『そして大陸同盟ジャスティスの国々の中から、特に力のある四人の冒険者を集め、対魔王軍スペシャルパーティーを結成させる事に相成りました。呼ばれた者は壇上へ……我がハウンドッグから神官アンナ・フランシェスカ!』


「え? ええ~!! 聞いてないですよ~!」


 おお! という各国代表の驚きの声と、巨乳の女神官の悲鳴とが入り乱れる。


『次に、南の大陸国オムシアランドより闘技場の覇者、拳闘士カイ・バンスロー!』


「おお! 闘技場で負けなしの、あのカイ・バンスローか!!」
「凄いぞ」

 いや、誰だよ。聞いた事ねーよ。


『次に東の大陸自由国家アンセムより、剣の腕なら勇者に勝ると噂される女剣士ミレーヌ・モロー!』


「なんと、勇者よりも剣の腕が上とは……」

 それあくまでも噂でしょ!?
 なんで確かめておかないのかな~!?
 しかもアイツ、食べ方の汚い女じゃん。
 うへ~、口の周りにソース付いてるよ~。
 見た目とは裏腹に残念な子だなぁ。


『そして最後に、東の大陸ノルガリア王国から、16歳ながらも数々の固有魔法を使い、この者に使えぬ魔法は無いと言われる天才魔導士アシュリー……クロウ……リィ~~~!!』


『今名前を呼ばれた者は、すぐ壇上に上がって下さい』


 ……上がるよ? そりゃ呼ばれちゃったから壇上には上がるよ?
 でもなんで?
 なんで俺の名前だけ、拳闘の選手入場みたいにタメて巻き舌気味に言ったの!?
 ねぇ? だれか説明して!

 そしてこの時が、後に英雄と呼ばれる四人が初めて並んで立った瞬間である。


『え~、急ではあるが、この者達が今日より対魔王軍スペシャルパーティーとなります。力を合わせ、世界のために死力を尽くすように』


 一方的に決めて強制的にパーティー組ませておいて、死力を尽くすも糞もないだろう。

『君達四人のS級冒険者に世界の命運がかかっておる。頼んだぞ』

 こうして俺たちは強制的にパーティーを組まされた四人の冒険が、ここから始まったのであった。




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タイトルをコロコロと変更して申し訳ありません。
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