上 下
57 / 75
第三章

第三章15 〈ユーリィ・ドランゴニア三世〉

しおりを挟む
 
 父さん、母さん、おげんきですか? 
 僕は今、帝国ドランゴニアの皇帝に謁見する為、厳重な護衛のもと、馬車で帝都を目指しています。


「本当にどうなっちゃうんだ?」

 何故こんな事になっているのかというと、理由は数時間前に遡る。



 数時間前。

「よしタロ、そろそろ降ろしてくれ」

 タロは徐々にスピードを落として止まると、俺たちが降りやすいように腹這いになっくれる。
 そして俺たちが全員降りたのを確認してから、デフォルメサイズになる。

『変……身……!!』
「とーーーう!」

 何も言わずに変身できるのに、なんで毎回声に出してサイズを変えるのか。
 そしてタロの変身の掛け声が、俺には初代マスクライダーの変身の声に聴こえてならない。
 本当にタロの知識はどこから来ているのか……タロは異世界転生者だったりしてな。


「お? あそこの門から入国するのか、カナ?」

「そうだよ。タロの言う通りあそこで門兵に、こっちの推薦状を見せれば大丈夫なはず」

 俺はレイモンド伯爵から国境で門兵に渡す用と、ドランゴニアのお偉い様に渡す用と二通の推薦状預かっていた。

「じゃ、行こうか」

 俺たちは、ビシエイド王国と帝国ドランゴニアの国境を隔てる防壁にある小さな門に歩いて行く。
 小さな門と言っても防壁と比べてであって、普通に門として見れば、かなり大きな門だ。
 これなら荷車や馬車にたくさん荷物を積んでいても通れないことはないだろう。


 国境を警備する門兵はビシエイド王国と、ドランゴニアの衛兵が協力して通行人の管理をしている。
 なのでビシエイド王国側にもドランゴニアの衛兵が門兵として立っている。

「止まれ! 入国許可証もしくは推薦状は持っているか?」

 槍で門を通れなくする門兵に、レイモンド伯爵からの推薦状を手渡す。
 まず両国の兵で推薦状の封蝋に押された印を確認してから封を解き推薦状を広げる。

 最初にビシエイド王国の門兵が内容を確認して、次にドランゴニアの門兵が内容を確認する。

 すると、ビシエイドの門兵は何の反応も示さなかったが、ドランゴニアの門兵が眉を一瞬ピクッとさせてから、確認をするから待ってほしいと言われた。

 それから10分ほど待つと、入国の許可が下り門の中間にある門兵の駐屯所ぽい場所で待つように言われた。

 なぜこんな所で待たされているのかも聞いたら、迎えの馬車が手配されたので、それに乗って欲しいと頼まれる。

 それから30分くらい経ったころ、ようやく迎えの馬車がたどり着いた。

「ユウタ様とそのお連れ様、皇帝陛下がお呼び出すので、こちらの馬車にお乗り下さい。帝都までは我々白竜騎士団が責任を持ってお連れしますので」

「え!? え~と、何がどうなって皇帝に呼ばれているのでしょうか!?」

「それは皇帝陛下にお聞き下さい。我々は帝都までお連れするよう仰せつかっただけですので」

「入国を止めるって言ったら?」

「ここはすでに帝国の領土内。一度入国したのなら皇帝陛下の命は絶対です」

 俺は仲間達と顔を見合わせて、仕方ないかとため息をついた。

 そして馬車に乗り込み、現在に至る。



「しかし、なんで皇帝から呼び出しくらってんのかな~?」

 俺は人生で初めて乗る馬車の、思いの外悪い乗り心地に辟易していた。
 リリルとタロなんかは窓から景色を見て楽しんでいて、乗り心地の悪さは気になっていないようだ。

「心当たりはないのか?」

 そう尋ねたのはカナだ。

「あるわけないじゃん。レイモンド伯爵領から一歩も出た事なかったのに」

「なら、セバスとの一件かエンドレスサマーに関わる事でしょうね」

 セバスとの一件か……となると魔族絡みになるなぁ……ゲリョルドとか言う上位魔族の差し金か?

 エンドレスサマーに関わる事と言われても、心当たりはない。
 それどころか、何故レイモンド伯爵からの推薦状を門兵に見せただけで皇帝から呼び出されたかだが……推薦状に何を書いたんだ伯爵様は?

「まあ帝国の皇帝ともなれば世界中に草を放ってると思うよ?」

 草……スパイの事か。
 その草がエンドレスサマーの事を皇帝に伝えたと言うのか?……レイモンド伯爵領に人間がマスターのダンジョンがあると。
 それに興味も持った皇帝からの呼び出し……あり得なくはないか。

「景色が変わってきたぞ」

「もうすぐ帝都に着くのね」

 うう……少し緊張してきたぜ。

「竜帝ユーリ・ドランゴニア三世……竜の化身と言われた男か……」

「え!? 何その新情報? 竜帝!? 竜の化身!? それすごく大事な情報じゃないの? え? なんでこのタイミングまで言わなかったの!? 何時間馬車乗ってたのさ!」

 俺が慌てふためいていると、馬車の動きが止まった。

『到着致しました。ご降車願います』

 馬車の外から声が聞こえるのと同時に、ドアか開く。

 馬車から降りると、そこは皇帝が住まうであろう巨城の停車場だった。

「でっか~い」

「ここからだと全体が見えないな」

「凄いな……私もここに来るのは初めてね」

「ここで飯にするのか?」

 思い思いの感想を口にしながら、その圧倒的な大きさの城を見上げていた。
 ただ俺の印象としては、豪華絢爛な城というよりは、堅牢な砦という印象だった。


 案内された部屋で一時間ほど休憩をしてから、謁見の間に呼ばれる。

 そして謁見の間で俺達は皇帝を待つ。
 少しの間そこで待っていると、近衛兵と共に皇帝が入ってきた。
 皇帝は玉座に座って口を開く。

「皇帝ユーリィ・ドランゴニア三世である! 旅の者よ、急な呼び出しによく答えてくれた」

 皇帝が話しているのだが、本当にこの男が皇帝なのだろうか?
 後ろに控える近衛兵の中に、とんでもないプレッシャーを放っている人が混じってるのだが……。

「名乗るがよい」

「その前にいいですか?」

「申してみよ」

「本当に貴方が皇帝陛下なのですか?」

 俺の言葉に謁見の間がざわつき、近衛兵達が今にも俺に斬りかかりそうなくらい殺気を放つ。

「貴様! 皇帝陛下のを疑うとは失礼であろう! 衛兵! 何をしている! 早くこやつらを捕らえよ!!」

 皇帝の近くで控えていた大臣っぽい感じの男性が衛兵に俺の捕縛を命じる。

「ちょ、ちょ……ユウタ!」

 だが俺の仲間はリリル以外、タロもカナも平然としている。

「もう良い!! そこまでだ!!」

 そう叫んだのは、凄まじいプレッシャーを放っていた近衛兵だ。

 皇帝として、それまで話していた中年の男がそのまま退き、空いた玉座に叫んだ近衛兵が座って兜を取った。

「さすがというよりないな。試すような事をして悪かった」

 玉座に座った壮年の男は大きく息を吸い込んだ。

「我がユーリィ・ドランゴニア三世である!!」

 その叫びは謁見の間に大きく大きく響き渡った。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

私のスローライフはどこに消えた??  神様に異世界に勝手に連れて来られてたけど途中攫われてからがめんどくさっ!

魔悠璃
ファンタジー
タイトル変更しました。 なんか旅のお供が増え・・・。 一人でゆっくりと若返った身体で楽しく暮らそうとしていたのに・・・。 どんどん違う方向へ行っている主人公ユキヤ。 R県R市のR大学病院の個室 ベットの年配の女性はたくさんの管に繋がれて酸素吸入もされている。 ピッピッとなるのは機械音とすすり泣く声 私:[苦しい・・・息が出来ない・・・] 息子A「おふくろ頑張れ・・・」 息子B「おばあちゃん・・・」 息子B嫁「おばあちゃん・・お義母さんっ・・・」 孫3人「いやだぁ~」「おばぁ☆☆☆彡っぐ・・・」「おばあちゃ~ん泣」 ピーーーーー 医師「午後14時23分ご臨終です。」 私:[これでやっと楽になれる・・・。] 私:桐原悠稀椰64歳の生涯が終わってゆっくりと永遠の眠りにつけるはず?だったのに・・・!! なぜか異世界の女神様に召喚されたのに、 なぜか攫われて・・・ 色々な面倒に巻き込まれたり、巻き込んだり 事の発端は・・・お前だ!駄女神めぇ~!!!! R15は保険です。

人の身にして精霊王

山外大河
ファンタジー
 正しいと思ったことを見境なく行動に移してしまう高校生、瀬戸栄治は、その行動の最中に謎の少女の襲撃によって異世界へと飛ばされる。その世界は精霊と呼ばれる人間の女性と同じ形状を持つ存在が当たり前のように資源として扱われていて、それが常識となってしまっている歪んだ価値観を持つ世界だった。そんな価値観が間違っていると思った栄治は、出会った精霊を助けるために世界中を敵に回して奮闘を始める。 主人公最強系です。 厳しめでもいいので、感想お待ちしてます。 小説家になろう。カクヨムにも掲載しています。

最強パーティーのリーダーは一般人の僕

薄明
ファンタジー
ダンジョン配信者。 それは、世界に突如現れたダンジョンの中にいる凶悪なモンスターと戦う様子や攻略する様子などを生配信する探索者達のことだ。 死と隣り合わせで、危険が危ないダンジョンだが、モンスターを倒すことで手に入る品々は、難しいダンジョンに潜れば潜るほど珍しいものが手に入る。 そんな配信者に憧れを持った、三神《みかみ》詩音《しおん》は、幼なじみと共に、世界に名を轟かせることが夢だった。 だが、自分だけは戦闘能力において足でまとい……いや、そもそも探索者に向いていなかった。 はっきりと自分と幼なじみ達との実力差が現れていた。 「僕は向いてないみたいだから、ダンジョン配信は辞めて、個人で好きに演奏配信とかするよ。僕の代わりに頑張って……」 そうみんなに告げるが、みんなは笑った。 「シオンが弱いからって、なんで仲間はずれにしないといけないんだ?」 「そうですよ!私たちがシオンさんの分まで頑張ればいいだけじゃないですか!」 「シオンがいないと僕達も寂しいよ」 「しっかりしなさいシオン。みんなの夢なんだから、諦めるなんて言わないで」 「みんな………ありがとう!!」 泣きながら何度も感謝の言葉を伝える。 「よしっ、じゃあお前リーダーな」 「はっ?」 感動からつかの間、パーティーのリーダーになった詩音。 あれよあれよという間に、強すぎる幼なじみ達の手により、高校生にして世界トップクラスの探索者パーティーと呼ばれるようになったのだった。 初めまして。薄明です。 読み専でしたが、書くことに挑戦してみようと思いました。 よろしくお願いします🙏

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

処理中です...