シンセン

 新選組随一の剣の遣い手・沖田総司は、池田屋事変で命を落とす。  

 戦力と士気の低下を畏れた新選組副長・土方歳三は、沖田に生き写しの討幕派志士・葦原柳を身代わりに仕立て上げ、ニセモノの人生を歩ませる。  

 しかし周囲に溶け込み、ほぼ完璧に沖田を演じる葦原の言動に違和感がある。  

 まるで、沖田総司が憑いているかのように振る舞うときがあるのだ。次第にその頻度は増し、時間も長くなっていく。

「このカラダ……もらってもいいですか……?」  

 葦原として生きるか、沖田に飲み込まれるか。  

 いつだって、命の保証などない時代と場所で、大小二本携えて生きてきたのだ。  

 武士とはなにか。  

 生きる道と死に方を、自らの意志で決める者である。

「……約束が、違うじゃないですか」   



 新選組史を基にしたオリジナル小説です。 諸説ある幕末史の中の、定番過ぎて最近の小説ではあまり書かれていない説や、信憑性がない説や、あまり知られていない説を盛り込むことをモットーに書いております。
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