愛しのお兄ちゃん

kinmokusei

文字の大きさ
上 下
2 / 13

姉じゃなくて兄?!

しおりを挟む
家に帰る足取りが重かった。


バーカ!


あたしはお姉さまに何をしてしまったのだろう?


今日は待ちに待ったお姉さまが家に来る日なのに。








「か、かんな様!?どうされたのです?」



家に帰るなりお世話係のエミがあたしを見て、声を上げる。


それもそのはず。


あたしは泣きべそをかき、とてもひどい顔をしていたのだ。


「とにかく早くお風呂にお入りくださいませ!彩音様がもう間も無くお着きになりますから。」


エミに言われるがままお風呂に入って、あたしはドレスを着させられた。


「今日は彩音様の歓迎パーティーでございます!お話は後ほど。」


その彩音お姉さまが原因なのに。


まぁ、お姉さまが今日来ないとしても、言うつもりはないのだが。






「彩音様がお着きになられました!!」


エミの一言であたしの心拍数は上がる。


『バーカ』


何故そんなことを言われなければならないのか?


憧れのお姉さまなのに。


「かんな様。お出迎えを。」


「えっ?えぇ、そうね。」


気まずい。


かなりの勢いで気まずい。


そこへ、下校の時に来た女の人が立っていた。


(あれ、、、?やっぱりこの人が彩音お姉さま?でも、、、あの時確かに言ったよね?彩音様の伝言って。)


「先ほどは失礼しました。涙と申します。彩音様のお世話係をやっております。」


(あー。やっぱり。)



「彩音様。さあお入りください。妹君になられるかんな様でございます。」


「あぁ。」


え?


あたしは一瞬固まる。


「どうも。彩音です。」


にこやかに笑うその男。


女じゃないの?!


あたしの驚きははかりしれなかった。






「彩音様がお着きになられました!!」


エミの一言であたしの心拍数は上がる。


『バーカ』


何故そんなことを言われなければならないのか?


憧れのお姉さまなのに。


「かんな様。お出迎えを。」


「えっ?えぇ、そうね。」


気まずい。


かなりの勢いで気まずい。


そこへ、下校の時に来た女の人が立っていた。


(あれ、、、?やっぱりこの人が彩音お姉さま?でも、、、あの時確かに言ったよね?彩音様の伝言って。)


「先ほどは失礼しました。涙と申します。彩音様のお世話係をやっております。」


(あー。やっぱり。)



「彩音様。さあお入りください。妹君になられるかんな様でございます。」


「あぁ。」


え?


あたしは一瞬固まる。


「どうも。彩音です。」


にこやかに笑うその男。


女じゃないの?!


あたしの驚きははかりしれなかった。






「お義父さんは?」


にこやかな笑顔で話しかけられ、あたしは戸惑う。


「彩音。わたしはここだよ。」


「お義父さん!よろしくお願いします!」


結構、、、?


いやかなり?


カッコいい、、、!


お兄さまか、、、!


あ。


いやそうじゃなくて!


「お父様?どういうこと?お姉さまじゃなかったの?」


あたしはお父さんにくってかかる。


「かんな。わたしは何度も言おうとしたんだ。話を聞かなかったのはお前だろう?彩音という名前からか、女と勘違いして。わたしは養子を取ると言ったはずだ。養女と言ったつもりはない。」


ゔ、ゔ。


「かんな。これからよろしくね?」


さわやかな笑顔をあたしに向け、彩音お兄さまはひざまずきあたしの手にキスをした。






まぁ、百歩譲ってお兄さまでもいいか。


これからご飯の時寂しくないもんね。


すると、彩音お兄さまは立ち上がりざまにお父様に聞こえないくらいの小声で言った。


『お前、本当にバカだよな。』


えっ?


お兄さまはニヤリと笑い、お父様の後をついて行ってしまった。


何?


聞き間違い?


でもあの笑み。


何あいつ!!


「かんな?どうした?今日は立食パーティーだ。早くおいで?」


お父様が振り向いてそう言ったので、あたしはとりあえずついて行った。


しかし。


お父様がいる時はお兄さまはニコニコしながらあたしを褒める。


「可愛い妹ができて嬉しいです。」


お父様が離れると、意地悪さを表情に出す。


そして何かというとあたしをバカにする。


コイツ、、、。


あたしは頭にきていた。






「可愛い妹です。」


「バカじゃねーの?まさか本気にしねーよな?」


「兄になれて光栄です!」


「あー面倒くせー。バカうつすなよな?」


「家庭教師?もちろん、妹のためなら。」


「やっぱりお前バカなんだな?」








わなわなわな、、、。


とりあえず食べよう。


怒りで大声を出しそう。



そしてとどめの一言。


「バカの大食いだな?」


ドッカーン!!


頭の何かがキレた。


「あのねぇ?!さっきから何なのよ!!この二重人格男が!!」


あたしが大声を出したので、お父様が驚き、やって来た。


「かんな!口調に気をつけなさい!死んだお母様と約束したこと忘れたのか?立派な女性になると。」


あたしは唇を噛み締めた。


お母様、、、!


「し、失礼しました。お兄さま。」


「悪いね。彩音。少しおてんばなんだよ。」


お父様がそう付け加えた。


あたしはお兄さまの顔を見なかった。






「あたし、ちょっと休みます。」


あたしは優しかったお母様を思い出し寂しくなった。


お母様が亡くなったのは10年前。


癌だった。


『かんな?素敵なレディになるのですよ?』


お母様の最後の言葉。


素敵なレディは怒鳴ったりはしないよね?


まだまだだなぁ。


あたしはまだ未熟なのだ。


あのお兄さまの毒舌に怒らないという自信がなかった。


だからその場から逃げようとした。


すると。


「逃げるのか?」


彩音お兄さまが言った。


「べ、別に。そういう訳じゃ、、、。」


「お前の母ちゃんに頼まれてるんだよ。俺。」


は?


母ちゃん?


あたしがけげんな顔をすると彩音お兄さまは言った。


「俺、施設育ちだから。言葉遣いとかあんまり良くねーの。お兄さまってのやめてくれよ。兄ちゃんでいいから。な?」


優しくあたしを覗きこむお兄さま、、、いやお兄ちゃんは毒舌だけど澄んだ瞳をしていた。






「頼まれたって?お母様に?何を?お母様を知ってるの?」


「ああ。施設にいるときに世話になった。いい人だった。」


彩音お兄ちゃんは懐かしそうに目を細めた。


「で。出来の悪い娘がいるから頼むって言われた。」


カチーン!


「出来が悪くて悪かったわねー!!」


はっ!?


また言葉遣いが、、、!


素敵なレディになるためには多少のことで怒ったりしないものよ!


「お兄ちゃん、、、?でよかったかしら?あまり人をバカにするものではありませんわよ?」


「バカだからバカって言うんだよ。」


またまたカチーン!!


「あたしのどこがバカだと?」


あたしは怒りで目が座っている。


「素敵なレディってのは見かけや言葉遣いじゃない。それをこれから俺が教えてやるよ。さっき家庭教師頼まれたしな。」


そう言って彩音お兄ちゃんはニカッと笑った。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。

木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。 そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。 ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。 そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。 こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

家に帰ると夫が不倫していたので、両家の家族を呼んで大復讐をしたいと思います。

春木ハル
恋愛
私は夫と共働きで生活している人間なのですが、出張から帰ると夫が不倫の痕跡を残したまま寝ていました。 それに腹が立った私は法律で定められている罰なんかじゃ物足りず、自分自身でも復讐をすることにしました。その結果、思っていた通りの修羅場に…。その時のお話を聞いてください。 にちゃんねる風創作小説をお楽しみください。

形だけの正妃

杉本凪咲
恋愛
第二王子の正妃に選ばれた伯爵令嬢ローズ。 しかし数日後、側妃として王宮にやってきたオレンダに、王子は夢中になってしまう。 ローズは形だけの正妃となるが……

【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜

七瀬菜々
恋愛
------ウィンターソン公爵の元に嫁ぎなさい。 ある日突然、兄がそう言った。 魔力がなく魔術師にもなれなければ、女というだけで父と同じ医者にもなれないシャロンは『自分にできることは家のためになる結婚をすること』と、日々婚活を頑張っていた。 しかし、表情を作ることが苦手な彼女の婚活はそううまくいくはずも無く…。 そろそろ諦めて修道院にで入ろうかと思っていた矢先、突然にウィンターソン公爵との縁談が持ち上がる。 ウィンターソン公爵といえば、亡き妻エミリアのことが忘れられず、5年間ずっと喪に服したままで有名な男だ。 前妻を今でも愛している公爵は、シャロンに対して予め『自分に愛されないことを受け入れろ』という誓約書を書かせるほどに徹底していた。 これはそんなウィンターソン公爵の後妻シャロンの愛されないはずの結婚の物語である。 ※基本的にちょっと残念な夫婦のお話です

選ばれたのは美人の親友

杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。

夫の不貞現場を目撃してしまいました

秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。 何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。 そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。 なろう様でも掲載しております。

処理中です...