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太陽神サン
しおりを挟むこれは秋時に捕まる前の話。
あたしは1人プルートに呼び出された。
「アース。今日は大切な話があります。」
「何ですか?」
「もし聖剣を取り戻したとしても、再び封印するのは難しいでしょう。サターンも警戒していると思いますし。」
プルートが難しい顔を浮かべる。
「あたしはサターンを封印するのは反対です。それじゃあ恨みを大きくするだけだから。」
「そうですね。アースの意見は正しいかもしれませんね。」
プルートは少し微笑んだ。
「アースの優しい心なら、太陽神サンの力を借りることができるかもしれません。もちろん話し合いです。太陽神サンはあたしよりも偉いのです。そして心の暖かい者たちにだけ力を貸します。」
「太陽神サン、、、?」
「そうです。期待していますよ?アース。」
*
「何をぼんやりしている?サンとやらにはどうやったら会える?」
「え?う、うん。優しく暖かな心の持ち主にだけ会うことができるらしいんだけど、、、。」
あたしは我に返り、慌てて言った。
「待つしかないのか?」
「うん。あたしもよく分からない。どうやれば会うことができるのか。でも会おうと思って会える神ではないと思う。」
「そうか。」
秋時は少し肩を落とし、ため息をついた。
「サターンにも言ったんだ。奈津は万能じゃないって。怒ることもあれば悲しむこともあるって。大切な奴を殺されたんだろ?」
あたしはどきりとする。
(ムーンのことは黙っておこう。またサターンに狙われてしまうかもしれないから。)
「うん。あたしも記憶が曖昧なの。ただ大切だったことは確か。」
「そうか、、、。」
秋時と自然と目が合ったが、逸らされてしまった。
*
「じゃ、俺はもう行く。」
「うん。」
秋時、、、。
もっと話したいと思うのは、わがままだろうか?
優しくされて、あたしは、、、嬉しいのだろう。
秋時にはサターンがいて、美鈴さんにそっくりで。
好き、、、!
言ってしまえばひと言で終わりだけど、この溢れてくる想いは止まらない。
たとえ秋時には届かなかったとしても、好きでいることを許して欲しい。
あたしは心からそう思うと、残りの餃子味のレンスの実を食べた。
「ふふふ。ねぇ?オータム?アースとは何を話したの?」
ベッドの上で絡み合う2人。
「別に。特には。」
「あ、、、!」
サターンが悶える。
「オータム、、、!あ、、、あ、、、あ、、、!」
秋時は無心でサターンを抱いていた。
*
「今日はものすごかったわね?ふふふ。」
サターンは情事が終わり、言った。
「アースと寝たい?」
「まさか。そんな気持ちは奈津にはない。」
「そう?ならいいけど。少しでも怪しい行動をとれば殺すわよ?ふふふ。」
(俺はやっぱり間違えたのか?)
あざ笑うかのように笑いながら脅しをかけるサターンには、あの優しかった美鈴の面影など微塵も感じられない。
秋時は奈津の優しく暖かい心に惹かれていくのが怖かった。
そんなことが起こり、俺が奈津を愛したりしたら、サターンは奈津を殺すだろう。
久しぶりに話して奈津に心が動き出した。
罪深い俺にそんな資格なんてないのに。
奈津、、、!
もっと話がしたい。
秋時の心は奈津によって支えられていた。
*
「明日はアースのところにはスプリングに行ってもらうわ。」
「えっ、、、!あー。そうか。」
「残念そうね?アースと話したかった?アースもそうかしらね?引き裂くのって楽しいわ。ふふふ。」
サターンは子供のようにはしゃぎ、笑う。
戸惑う秋時に、悪魔のようなことを言う。
「アースってまだ男の経験ないはずよね?スプリングじゃなくてウィンターに行かせて気持ち良さを教えてあげましょう!あたしって優しいわよね?ふふふ。」
「それは、、、」
さすがの秋時も言い返そうとした。
「なぁに?なにかまずいかしら?」
サターンの顔つきが変わる。
「優しさで言ってるのよ?なにか文句がありそうね?」
「ウィンターにだって選ぶ権利がある。」
秋時はうつむいてボソっと言った。
「もう決めたことよ?ウィンターにやらすわ!ふふふ。楽しみ!」
秋時の瞳に奈津の笑顔がにじんだ。
*
「おい!!起きろ!!」
ムーンの必死の呼びかけ。
目を覚まさないマーキュリー、マーズ、ジュピター、ビーナス。
「困りましたね。もうすぐアースが連れ去られてから2日になります。とりあえず、起きたら分かるように手紙を書いて、ネプチューンとウラヌスと私でシーズン銀河へ飛びます。ムーンはどうしますか?」
「もちろん行きます!聖剣エリシオンを持って!」
プルートはムーンの言葉に少し考えて言った。
「聖剣は置いていきます。ムーンに聖剣を託しますから、ここで待っていてください。」
「えっ?だって、聖剣エリシオンがなければサターンは封印できませんよ?アース様だって助けられない!!」
「ムーン。アースはサターンを封印しません。他の方法で対処します。」
プルートの瞳に映ったムーンは何か言いたげだ。
プルート様は聞いても答えてはくれない。
他の方法とは何か?
仕方なくムーンはしぶしぶうなづいた。
*
「いい?ウィンター?いいわよね?」
サターンは口元では笑みを浮かべているが、目は笑っていない。
選択肢は一つだけなのだ。
「、、、。」
ウィンターはひざまづいたまま動かない。
頭に浮かぶのは、スプリングのことだった。
誰にも打ち明けていない2人だけの秘密の恋。
アースを抱いたら、スプリングがどれだけ悲しむか。
確かサマーもスプリングが好きだったな。
ウィンターは悲しく笑う。
サマーに取られるだろうか?
ウィンターは走馬灯のように、そんなことを考えていた。
「ウィンター?返事がないようだけど?」
サターンは少し苛立ち、ウィンターを見る。
「仰せのままに、、、。」
ウィンターは絞り出すように言った。
「よかったわ!これはみんなアースのためなのよ?あたしって優しいわよね?」
サターンの高笑いが辺りに響きわたった。
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