タイムパラドックス

kinmokusei

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太陽神サン

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これは秋時に捕まる前の話。


あたしは1人プルートに呼び出された。


「アース。今日は大切な話があります。」


「何ですか?」


「もし聖剣を取り戻したとしても、再び封印するのは難しいでしょう。サターンも警戒していると思いますし。」


プルートが難しい顔を浮かべる。


「あたしはサターンを封印するのは反対です。それじゃあ恨みを大きくするだけだから。」


「そうですね。アースの意見は正しいかもしれませんね。」


プルートは少し微笑んだ。


「アースの優しい心なら、太陽神サンの力を借りることができるかもしれません。もちろん話し合いです。太陽神サンはあたしよりも偉いのです。そして心の暖かい者たちにだけ力を貸します。」


「太陽神サン、、、?」


「そうです。期待していますよ?アース。」





「何をぼんやりしている?サンとやらにはどうやったら会える?」


「え?う、うん。優しく暖かな心の持ち主にだけ会うことができるらしいんだけど、、、。」


あたしは我に返り、慌てて言った。


「待つしかないのか?」


「うん。あたしもよく分からない。どうやれば会うことができるのか。でも会おうと思って会える神ではないと思う。」


「そうか。」


秋時は少し肩を落とし、ため息をついた。


「サターンにも言ったんだ。奈津は万能じゃないって。怒ることもあれば悲しむこともあるって。大切な奴を殺されたんだろ?」


あたしはどきりとする。


(ムーンのことは黙っておこう。またサターンに狙われてしまうかもしれないから。)


「うん。あたしも記憶が曖昧なの。ただ大切だったことは確か。」


「そうか、、、。」


秋時と自然と目が合ったが、逸らされてしまった。





「じゃ、俺はもう行く。」


「うん。」


秋時、、、。


もっと話したいと思うのは、わがままだろうか?


優しくされて、あたしは、、、嬉しいのだろう。


秋時にはサターンがいて、美鈴さんにそっくりで。


好き、、、!


言ってしまえばひと言で終わりだけど、この溢れてくる想いは止まらない。


たとえ秋時には届かなかったとしても、好きでいることを許して欲しい。


あたしは心からそう思うと、残りの餃子味のレンスの実を食べた。





「ふふふ。ねぇ?オータム?アースとは何を話したの?」


ベッドの上で絡み合う2人。


「別に。特には。」


「あ、、、!」


サターンが悶える。


「オータム、、、!あ、、、あ、、、あ、、、!」


秋時は無心でサターンを抱いていた。






「今日はものすごかったわね?ふふふ。」


サターンは情事が終わり、言った。


「アースと寝たい?」


「まさか。そんな気持ちは奈津にはない。」


「そう?ならいいけど。少しでも怪しい行動をとれば殺すわよ?ふふふ。」


(俺はやっぱり間違えたのか?)


あざ笑うかのように笑いながら脅しをかけるサターンには、あの優しかった美鈴の面影など微塵も感じられない。


秋時は奈津の優しく暖かい心に惹かれていくのが怖かった。


そんなことが起こり、俺が奈津を愛したりしたら、サターンは奈津を殺すだろう。



久しぶりに話して奈津に心が動き出した。


罪深い俺にそんな資格なんてないのに。


奈津、、、!


もっと話がしたい。



秋時の心は奈津によって支えられていた。





「明日はアースのところにはスプリングに行ってもらうわ。」


「えっ、、、!あー。そうか。」


「残念そうね?アースと話したかった?アースもそうかしらね?引き裂くのって楽しいわ。ふふふ。」


サターンは子供のようにはしゃぎ、笑う。


戸惑う秋時に、悪魔のようなことを言う。


「アースってまだ男の経験ないはずよね?スプリングじゃなくてウィンターに行かせて気持ち良さを教えてあげましょう!あたしって優しいわよね?ふふふ。」


「それは、、、」


さすがの秋時も言い返そうとした。


「なぁに?なにかまずいかしら?」


サターンの顔つきが変わる。


「優しさで言ってるのよ?なにか文句がありそうね?」


「ウィンターにだって選ぶ権利がある。」


秋時はうつむいてボソっと言った。


「もう決めたことよ?ウィンターにやらすわ!ふふふ。楽しみ!」


秋時の瞳に奈津の笑顔がにじんだ。





「おい!!起きろ!!」


ムーンの必死の呼びかけ。


目を覚まさないマーキュリー、マーズ、ジュピター、ビーナス。


「困りましたね。もうすぐアースが連れ去られてから2日になります。とりあえず、起きたら分かるように手紙を書いて、ネプチューンとウラヌスと私でシーズン銀河へ飛びます。ムーンはどうしますか?」


「もちろん行きます!聖剣エリシオンを持って!」


プルートはムーンの言葉に少し考えて言った。


「聖剣は置いていきます。ムーンに聖剣を託しますから、ここで待っていてください。」


「えっ?だって、聖剣エリシオンがなければサターンは封印できませんよ?アース様だって助けられない!!」


「ムーン。アースはサターンを封印しません。他の方法で対処します。」


プルートの瞳に映ったムーンは何か言いたげだ。


プルート様は聞いても答えてはくれない。


他の方法とは何か?


仕方なくムーンはしぶしぶうなづいた。





「いい?ウィンター?いいわよね?」


サターンは口元では笑みを浮かべているが、目は笑っていない。


選択肢は一つだけなのだ。


「、、、。」


ウィンターはひざまづいたまま動かない。


頭に浮かぶのは、スプリングのことだった。


誰にも打ち明けていない2人だけの秘密の恋。


アースを抱いたら、スプリングがどれだけ悲しむか。


確かサマーもスプリングが好きだったな。


ウィンターは悲しく笑う。


サマーに取られるだろうか?


ウィンターは走馬灯のように、そんなことを考えていた。


「ウィンター?返事がないようだけど?」


サターンは少し苛立ち、ウィンターを見る。


「仰せのままに、、、。」


ウィンターは絞り出すように言った。


「よかったわ!これはみんなアースのためなのよ?あたしって優しいわよね?」


サターンの高笑いが辺りに響きわたった。




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