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あげは紅ははかないらしい

その2

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タカコの目の前て繋がれた手を見て、ホッとする。そして、そのまま紹介を続けはじめる。

「えっとぉ、ビトーちゃんはいいわね。文芸部の先輩だから」

「はいぃ」

似たような背格好、似たような顔立ちと髪型、学年ごとに色が違うリボンくらいしか違いが分からないくらいだ。姉妹というよりは双子の方がしっくりくるな。

「そして隣にいるこっちが、ムトーちゃん。あたしと同じ剣道部で、次期エース。県大会の常連になるくらい強いのよ」

「すっごおおぉぉぃぃ、お強いですねぇぇぇ」

すましてはいるが、はっちゃんの無垢な驚嘆にムトーちゃんは照れているようだ。ちょっと頬が赤くなった。

「で、こっちが……」

どうでもいいが、MCをタカコにとられたな。やはり仕切らせたら一番だな。

「…カトーちゃん。読者モデルをやっているの」

「うわあわぁぁあ、すっごおぉぉぉぃぃ。あたしぃ、芸能人はじめてみましたぁぁ」

誉められ慣れている筈のカトーちゃんが、珍しく嬉しい顔をしている。

「べつに芸能人じゃないわよ。でもありがと」

2人とも誉められて気分が良くなったらしい、険悪な空気はもう感じられない。はっちゃん、グッジョブ。

「あげはと青草くんはいいわね。廿日さんはみんなになんて呼ばれているの」

「えっとぉ、廿日さんとかぁ、舞ちゃんとかぁがよく呼ばれますぅ」

「はっちゃんとは言われないの」

「あげは先輩だけですねぇ」

「ほうほうそうですか。よし、じゃああたし達もはっちゃんて呼ぶわ。あたし達だけのオリジナルネームね」

あ、あたしだけの呼び方だったのにぃ、タカコの名前ドロボー

でもまあいいか。なにせあの事件(?)を覚えているのは、ここに居る7人だけだもんね。

 あれから3日間、なにがあったか順に話そう。

事件当日の放課後、あたしは家事があるのですぐ帰ったが、タカコとカトーちゃんが、オーツチを呼び出して締め上げた。

2人のアメとムチ攻撃に、オーツチはたちまち陥落した。どうしてそうなったかは割愛するが、結果的にオーツチはカトーちゃんの下僕ポジションに着いた。屈辱的なポジションだと思うが、当人はいたって満足しているらしい。

エンピツモドキが無くなった影響はすぐに出て、翌日からは、ほぼ誰も[パンチラファイト]をしなくなった。もちろんスカートめくりもだ。

それを確認した葵先生が、はっちゃんパパのところに出向き、こう説明したそうだ。

あげは、つまりあたしが、娘さんに不埒な真似をした男子のズボンを脱がして仕返しをして、仇をとったと。
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