上 下
12 / 60
あげは紅ははかないらしい

その6

しおりを挟む
 午後の休憩時間に、タカコ、カトーちゃん、ビトーちゃんの4人で塊っていた。

窓際壁の席にあたし、その前にビトーちゃんが対面で、カトーちゃんとタカコがその両隣に座っている。
うん、完璧な防御陣形、シューガールWithあげはディフェンスフォーメーション。
さすがの蛮族もこれでは花園に来れまい。

 そしてあたし達の話の内容は、昼休みの出来事である。
女子高生には低カロリーと書かれた高カロリーの食事とスイーツ、そして恋バナが生きる糧なのだ。

「ほうほうほう、あの青草がねぇ」

恋バナ大好きなタカコが前のめりになって訊いてくるけど

「いいんじゃない、どうでもの方だけど」

爪の手入れをしながら、横向きで聞くカトーちゃん。
興味無さそうだが、耳だけはこちらに向けている。

「意外な2人です……」

ビトーちゃんが控えめだけど、驚きの声を出している。

「で、どうするの? あげは」

「とりあえず明日はお母さんが休みだから、急いで帰らなくていい日なんで、一緒に喫茶店に行く約束をしてあるの」

「ほうほうほう、一気に家族にご挨拶ですか」

「ナポリタンを食べに行くだけよ。その後のコーヒーも大事らしいけど」

そう、それだけのはずだ。なのに何故だろう、話しているうちに胸騒ぎがしてきた。

「で、あげはの役割は? どうやって2人をくっつけるの?」

「何にもしないわよ。コミュ障の究に橋渡しするだけ。究もコーヒーとナポリタンにしか興味ない筈よ」

「ふうん、じゃあ、この話しはお預けね。明日の夜に報告を待っているわ」

興味なさそうに言いながらも、カトーちゃんも気になるらしい。期待しない方がいいよ、なんたってあの究なんだから。

 午後の授業も終わり、あたしは帰途につく。
弟妹の面倒をみたあと、遅くに帰ってきたお母さんに、明日の帰りは遅くなるのと、食事をしてくることを伝えた。

「あらまあ珍しいわね。あまり遅くならないようにね」

いつも家事をしてくれて有り難うねと、ぽそっとつぶやく。
気にしているのかな。好きでやっているから、べつに気にしなくていいのに。

「ただーいまー」

こっちは、気にしてほしいと思う。

やれやれと思いながら玄関に行くと、お父さんがサラリーマンから、わかりやすい酔っ払い親父にジョブチェンジしていた。

「さぁてと」

お母さんと2人で、酔っ払い親父をかつぐ。リビングまで連れてくると、シワにならないようにスーツを脱がせる。

年頃の娘に何やらせてんのよ、と思うが、翌朝着ていくスーツが無いと騒がれるくらいなら、時間に余裕がある夜に面倒な事をやった方がいい。

いつもなら、あたし1人で担いで脱がすんだけど、今日はお母さんがいるから楽だ。
あたしが上着を脱がし、お母さんがシャツとスラックスと靴下を脱がす。あとはお任せします。

しわを伸ばしながらスーツをハンガーにかけると、明日のために寝ることにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

水曜の旅人。

太陽クレハ
キャラ文芸
とある高校に旅研究部という部活動が存在していて。 その旅研究部に在籍している花咲桜と大空侑李が旅を通して多くの人々や物事に触れていく物語。 ちなみに男女が同じ部屋で寝たりしますが、そう言うことはないです。 基本的にただ……ただひたすら旅に出かけるだけで、恋愛要素は少なめです。 ちなみにちなみに例ウイルスがない世界線でのお話です。 ちなみにちなみにちなみに表紙イラストはmeitu AIイラストメーカーにて作成。元イラストは私が書いた。

悪魔公爵鷲頭獅子丸の場合

岡智 みみか
キャラ文芸
悪魔公爵ウァプラの最後にして最愛の息子と称される獅子丸は、人間界への修行を命じられる。『聖人』の魂を持つ涼介と悪魔の契約を交わし、その魂を魔界に持って帰らなければ、獅子丸は真の息子として認められない。人間界で知り合った下級妖魔の沼女、スヱと共に、涼介の魂をめぐる争いが始まった。

失恋少女と狐の見廻り

紺乃未色(こんのみいろ)
キャラ文芸
失恋中の高校生、彩羽(いろは)の前にあらわれたのは、神の遣いである「千影之狐(ちかげのきつね)」だった。「協力すれば恋の願いを神へ届ける」という約束のもと、彩羽はとある旅館にスタッフとして潜り込み、「魂を盗る、人ならざる者」の調査を手伝うことに。 人生初のアルバイトにあたふたしながらも、奮闘する彩羽。そんな彼女に対して「面白い」と興味を抱く千影之狐。 一人と一匹は無事に奇妙な事件を解決できるのか? 不可思議でどこか妖しい「失恋からはじまる和風ファンタジー」

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

山蛭様といっしょ。

ちづ
キャラ文芸
ダーク和風ファンタジー異類婚姻譚です。 和風吸血鬼(ヒル)と虐げられた村娘の話。短編ですので、もしよかったら。 不気味な恋を目指しております。 気持ちは少女漫画ですが、 残酷描写、ヒル等の虫の描写がありますので、苦手な方又は15歳未満の方はご注意ください。 表紙はかんたん表紙メーカーさんで作らせて頂きました。https://sscard.monokakitools.net/covermaker.html

煙みたいに残る Smoldering

梅室しば
キャラ文芸
剣道有段者の兄の伝手を使って、潟杜大学剣道部の合宿に同伴した生物科学科の学生・佐倉川利玖。宿舎の近くにある貴重な生態系を有する名山・葦賦岳を散策する利玖の目論見は天候の悪化によって脆くも崩れ、付き添いで呼ばれた工学部の友人・熊野史岐と共にマネージャーの東御汐子をサポートするが、そんな中、稽古中の部員の足の裏に誰のものかわからない血痕が付着するという奇妙な現象が発生した──。 ※本作は「pixiv」「カクヨム」「小説家になろう」「エブリスタ」にも掲載しています。

まる男の青春

大林和正
キャラ文芸
ほぼ1話完結となってるシリーズモノです どれから読んでも大丈夫です 1973年生まれのまる男は小学校1年の頃から、ある理由でプロも通うボクシングジムで学校以外、ボクシング漬けだった。そして、中学校、友達に誘われて野球部に入る。運動神経は怪物だけど、常識のだいぶずれた少年と少し奥手な仲間たちの物語である

貧乏神の嫁入り

石田空
キャラ文芸
先祖が貧乏神のせいで、どれだけ事業を起こしても失敗ばかりしている中村家。 この年もめでたく御店を売りに出すことになり、長屋生活が終わらないと嘆いているいろりの元に、一発逆転の縁談の話が舞い込んだ。 風水師として名を馳せる鎮目家に、ぜひともと呼ばれたのだ。 貧乏神の末裔だけど受け入れてもらえるかしらと思いながらウキウキで嫁入りしたら……鎮目家の虚弱体質な跡取りのもとに嫁入りしろという。 貧乏神なのに、虚弱体質な旦那様の元に嫁いで大丈夫? いろりと桃矢のおかしなおかしな夫婦愛。 *カクヨム、エブリスタにも掲載中。

処理中です...