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変動的不等辺三角形はじまる メグミ編
その3
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「おお、メグミちゃん、待ってたよー。ささ、おいでおいで」
店内は暗く、ミラーボールの反射光とタバコの煙で見づらく、大音量のBGMで気づかなかったのか、メグミちゃんこと恵二郎は僕を無視して課長の横に座る。つまり僕の正面に座ったのだ。
おそらくウイッグであろう肩までのストレート黒髪に綺麗に粧られた顔立ち、ベージュのジャケットにタイトスカート、ストッキングまで履いてるよ、それに白のハイヒール。顔さえ馴染みの弟でなければいいオンナだなと思ってしまう姿だった。
「どうしたのオニイサン、メグミちゃんに見惚れちゃった」
「おいおい起くん、ダメだぞこの娘は私の贔屓なんどから」
課長の言葉を聞いて恵二郎も気づいたらしい、僕の顔を見て驚きの言葉を出そうとして、慌てて口をおさえる。
「ええっと、たーさん、唄いましょ、デュエットしましょ、いつものやつ」
「おお、いこういこう」
恵二郎に腕を掴まれ、席を立ってステージへと向かう課長を見送ってママに訊ねる。
「ママさん、あのコっていつからいるの」
「さぁいつからだったかしら」
「去年の秋くらいじゃないですか、名前は恵二郎っていいませんか」
「あんた誰」
ドスの利いた声と険しい表情になったママを見て、思わず黙ってしまった。迫力負けした。
「メグミちゃんとどういう関係」
「あ、いえ、その……」
この時すなおに弟だと言えばよかったのだろう。だがそれを言うのが恥ずかしかった。弟がオカマになっているのが恥ずかしいと思ってしまったのだ。だから黙り込んでしまった。
歌が終わり、二人が戻ってこようとしたとき、課長がトイレに行き、ママが席を立って恵二郎のところに行く。なにかぼそぼそと話したあと、恵二郎がやってきて隣りに座る。
「いらっしゃいませ~」
「なにがいらっしゃいませだ、いつからこんなところで働いているんだ、飲食店でバイトしてるんじゃなかったのか」
「飲食店でしょ、あたしの唐揚げって人気があるんだから」
「なんでこんな店なんだよ」
「サークルのOBの店って言ったじゃない、けいちゃんの横にいたでしょ」
「じゃ、ママがOBなのか」
「あ、たーさんが帰ってきた。とにかくお互い内緒にしてね、話はあとで」
そういうと恵二郎は立ち上がり、オシボリを持って課長のところに行き、空いた席にママが戻ってくる。
「話は着いた?」
半分釘を差すような言い方だったので、頷くしかなかった。
店内は暗く、ミラーボールの反射光とタバコの煙で見づらく、大音量のBGMで気づかなかったのか、メグミちゃんこと恵二郎は僕を無視して課長の横に座る。つまり僕の正面に座ったのだ。
おそらくウイッグであろう肩までのストレート黒髪に綺麗に粧られた顔立ち、ベージュのジャケットにタイトスカート、ストッキングまで履いてるよ、それに白のハイヒール。顔さえ馴染みの弟でなければいいオンナだなと思ってしまう姿だった。
「どうしたのオニイサン、メグミちゃんに見惚れちゃった」
「おいおい起くん、ダメだぞこの娘は私の贔屓なんどから」
課長の言葉を聞いて恵二郎も気づいたらしい、僕の顔を見て驚きの言葉を出そうとして、慌てて口をおさえる。
「ええっと、たーさん、唄いましょ、デュエットしましょ、いつものやつ」
「おお、いこういこう」
恵二郎に腕を掴まれ、席を立ってステージへと向かう課長を見送ってママに訊ねる。
「ママさん、あのコっていつからいるの」
「さぁいつからだったかしら」
「去年の秋くらいじゃないですか、名前は恵二郎っていいませんか」
「あんた誰」
ドスの利いた声と険しい表情になったママを見て、思わず黙ってしまった。迫力負けした。
「メグミちゃんとどういう関係」
「あ、いえ、その……」
この時すなおに弟だと言えばよかったのだろう。だがそれを言うのが恥ずかしかった。弟がオカマになっているのが恥ずかしいと思ってしまったのだ。だから黙り込んでしまった。
歌が終わり、二人が戻ってこようとしたとき、課長がトイレに行き、ママが席を立って恵二郎のところに行く。なにかぼそぼそと話したあと、恵二郎がやってきて隣りに座る。
「いらっしゃいませ~」
「なにがいらっしゃいませだ、いつからこんなところで働いているんだ、飲食店でバイトしてるんじゃなかったのか」
「飲食店でしょ、あたしの唐揚げって人気があるんだから」
「なんでこんな店なんだよ」
「サークルのOBの店って言ったじゃない、けいちゃんの横にいたでしょ」
「じゃ、ママがOBなのか」
「あ、たーさんが帰ってきた。とにかくお互い内緒にしてね、話はあとで」
そういうと恵二郎は立ち上がり、オシボリを持って課長のところに行き、空いた席にママが戻ってくる。
「話は着いた?」
半分釘を差すような言い方だったので、頷くしかなかった。
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