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変動的不等辺三角形はじまる メグミ編

その6

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「夜食ありがとう、僕はまだかかるからそれじゃ」

「何時に帰るつもりですか」

「そうだな……、バスの時間があるから9時にはあがるよ」

「わかりました、それじゃ帰ります。無理しないでくださいね」

 立ち上がり、ぺこりと頭を下げると部屋を出ていく。送ったほうが良かったかなと思ったが、彼女は車通勤だし残業を早く片づけたかったので、心の中でお疲れさまとだけ言うことにする。



 ひとりで集中してやったせいか思ったより早く終わり、帰り支度をして会社を出る。
 バス停でバスを待っているとスマホが震えた。美恵からかなと思って相手を確認すると、恵二郎からだった。

「どした」

「あ、けいちゃん、おつかれー。正式に住むところ決まったんでお知らせー、先輩と同居でーす」

「先輩って朝日くんだよな」

「そ、待って、いま代わるから」

 なにやらごそごそして代わるの代わらないのと言ってるのが聴こえたあと、朝日くんが出た。

「ご無沙汰してます起先輩、その説はどうも失礼しました」

「久しぶりだね、こちらこそ就職を世話してもらって感謝しているよ」

「いえ、そんな……」

「ところで恵二郎がまた世話になるらしいけどいいのかい」

「ええ、じつは今大須でお店をやってまして、年末年始のスタッフ不足で困ってたんです。渡りに船でしたからこちらも助かってます」

「えっとその──どういうお店なのかな──」

 僕が何の心配をしているのかを察したらしく、多少はアルコールを出しているがメインは食事とスタッフのショーで、自分がプロデュースしているから大丈夫だと言ってくれた。

「そうか、じゃあよろしく頼む──ああバスが来たからもう切るね、それじゃ」

 通話を切り、到着したバスに乗り込み空いている席に座るとひと息つく。

 ……朝日くんか、もう五年くらい会ってないな……

 あれは大学卒業の手前か、いや、彼との出会いを思い出すにはさらに昔の、そう、恵二郎が産まれた頃まで遡ることになるのか。

 恵二郎が産まれた時、まだ物心がついたくらいの頃で、単純に弟ができたと喜んでいた。
 しかし祖母は嬉しそうではなく、母もなんとなくすまなさそうな感じがしていたのが不思議でもあった。

 大きくなって知ったが、旅籠の跡継ぎとして祖母は女の子が欲しかったらしい。それもかなり本気だったらしく、すでに女の子用の産着や服を用意していて、恵二郎は生まれてからずっと女の子の格好をして育てられたのだ。

 最初の転機は保育園に入ったときか。スカートをはいて通園していたのだが、男の子だと知られると、保育士さんはともかく、園児達はおかしいおかしいと囃し立てられて、恵二郎は泣きながら帰ってきた。
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