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護衛対象はキケンな男の娘 短編

県警本部へ

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「ちょ、葵、どこ行くの」

名古屋高速高速にのるわ。アッチなら予想外の方向からの攻撃は無いから。それに中村署は名古屋駅の近くでしょう、万が一あんな人出の多いところで巻き込んだら大変なことになる。だから丸の内まで行って県警本部に向かうことにする」

 丸の内なら名古屋駅より比較的人通りは少ない。ハジメはその考えに同意した。
 烏森の料金所から高速に入る、ハイエースもついてくる。

「しつこいわね、そんなに三億円が欲しいのかしら」

葵が吐き捨てるように言う。

 高速にのったところで落ち着いたのか、自分のスマホが着信しているのにハジメは気づく。ポケットから取り出して相手を見ると本部からだった。

「小山です」

「小山か、少年課長浅間だ。無事か?」

「はい、対象者は無事です」

「そうか。お前の方はどうだ」

「はい、何ともありません」

「そうか、今はどこに?」

「名古屋高速を移動中です。中村署ではなく本部に向かってます」

そう言ったあと、葵の考えを話す。

「そうか分かった、受け入れの用意をしておく。それにしてもよくやったな、ライブ配信を見てたがよくぞ対象者を守ってくれた、感謝する」

 それだけやり取りをすると通話を切る。するとすぐに別のところから着信がきた、御器所からだった。

「小山です、先輩、無事ですか」

「そりゃこっちのセリフだ。配信見てたぜ、ケガはないか」

「大丈夫です、対象者は無傷です」

「坊ちゃんじゃねぇよ、お前だ。まあ大丈夫そうで何よりだ」

「今はどちらに」

「まだ江分利のところだ。やっぱり矢島じゃうまく説明できなくてな、江分利が起きたとたん『あのアマどこだ』と騒いだんで、『女に気絶させられたって言うつもりか』って小声で言ってから、ケンジのせいにするようにしたよ」

「納得しましたか」

「しなかったが、その後お前の活躍を見てな、坊ちゃん守るために六人倒したのを見てからボソっと『しゃあねぇか』って言って大人しくなったよ」

 笑いながら言われてハジメも苦笑するしかなかった。

「それより何か分かりましたか」

「ああ、まだ本部には伝えてないが面白いことが分かった。ケンジの独断じゃなくて命令されてやったということだ」

「命令? 誰にです」

「ケンジは半グレチームのリーダーだったんだが、下剋上されてな、そこを追い出されて江分利のトコにきたんだが、現リーダーに度胸をみせたら三億円やる、殺さなくてもいいケガさせるだけでもいいから坊ちゃんを襲ってみろと唆されたそうだ」

「そうですか」

「それと闇金に唆された男の方だが、コッチも面白いことが分かった。闇金のやっているところの母体は半グレチームだと所轄から情報が入った」

「そっちもですか……え、まさか……」

「そうだ、同じところだった。チーム名は[鎧武]というらしい」
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