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護衛対象はキケンな男の娘 短編

行き先は……

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 「ハジメ、身体はいいの」

 運転しながら葵は訊ねる。

「大丈夫、ちょっと休めばもとに戻るわ」

「お昼用に買ったスポドリがあるから、それ飲んで。多少は早く回復するだろうから」

 つらそうに返事をするハジメに、葵は助手席に置いてあるコンビニ袋からペットボトルを取り出し、前を向いたまま後ろに放り投げる。
 それを受け取り、サンキュと言ったあと蓋を開けて一気に飲み干す。

「ふう、生き返ったわ。ありがとう。で、どうしてここに?」

「ハジメを下ろしたあと、適当に流してコンビニを見つけたから、そこで駐車して待機しながら例のライブ中継を観てたの」

「ああ、そうなの」

「そしたら二人がパトカーに乗って出てくでしょ。何かあったのかなと思って追いかけたの。さらに事故が起きて、渋滞になって、ライブ中継を観たらハジメが襲われているじゃない。空いてる反対車線を使って助けに来たというわけ。だから逆走には目をつぶりなさいね」

 最後のは葵のジョークだろう、ハジメは何も言わなかったが表情はやわらいでいた。

「それで本当に中部国際空港セントレアに行くの? なんで?」

 葵の質問に、ハジメは闇サイトの話をした。国外に出れば狙われなくなるというルールのことを。

「……あー、ハジメって海外に行ったこと無かったっけ」

「うん、無い。……なんかおかしいの?」

「パスポートもそうなんだけど……いちいち説明してもハジメには理解できないか……」

「なによそれ」

 ふくれるハジメに葵はどう言えばいいかと思案する。

「一番理解しやすいのは、これか。ハジメ、もし無事海外へ脱出できても、ホームステイ先にはどう説明するの? 夏生くんはソコと連絡取れるの? 海外でひとりっきり状態で放り出す気?」

「あ……」

 本来なら明日の昼に北方先生らに付き添われてセントレアまで行き、乗った飛行機が向こうの空港に着いてホームステイ先の方にお迎えしてもらう、そんな予定だった。
 夏生がもう少ししっかりしていれば、[大丈夫よ、男の子なんだから一日くらい何とかなるわ]と言い返せるが、天才的に数学ができても生活力としては不安しか感じられない。ましてや後先考えずこんな事態をひきおこしたばかりだ。

「……中村署で保護してもらうのが一番ね、だからそこに行く──つもりだったけど、ちょっとむずかしいみたいよ」

言いながら加速する葵に異変を感じ、後ろを見る。
 先程襲ってきたワンボックスカーが追ってきたのだ。

「ハイエースか。能力的には追いつかれない自信はあるけど、下道ではそうも言えないか」

そう呟くと葵は交差点を曲がった。
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