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護衛対象はキケンな男の娘 短編

江分利パパ

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「なんだこの有様は、何があった」

 缶コーヒーの入ったビニール袋を持ったまま突っ立っている矢島
 夏生くんを背にして構えている御器所先輩
 その後ろで縮こまっている夏生くん
 そして刺客だったケンジを取り押さえている自分

 江分利パパとしては何があったか不思議だろうなとハジメは思った。

「お前ンとこの若いのが坊ちゃんを襲ったんだよ、それをウチのモンが防いだところだ」

 御器所が少々挑発するように言う。

「ホントか矢島」

「へい、ホントです。ケンジの野郎が隠し持った千枚通しで坊ちゃんを狙いました」

「よかったなぁ江分利、ウチのモンが優秀で。コイツは県警最強の警察官で、ベテランの俺でさえ気を使うくらいなんだよ」

「コイツがぁ」

「ああ。愛知県警のリーサル・ウェポン、アマゾネス小山っていってな、コイツに目をつけられると五体満足でいられないって有名だぜ」

 ──誰がアマゾネス小山よ、昔のリングネームは小山ハジメだ──

「さて江分利、殺人未遂──少なくとも暴行未遂の現行犯だ、コイツを連行する。もちろん坊ちゃんも連れて行く」

「ああん、なに勝手なこと言ってんだ。ソイツは置いていけ、夏生もここから出るな、お前たちは帰りな」

「どっちが勝手なこと言ってんだよ。警察官の前でやった上に取り押さえたんだぞ、次は連行して取調べに決まってんだろうが」

「ゴキ、ここがドコかわかってんのか。警官二人くらい行方不明になってもおかしくないんだぞ」

「オマエこそ分かってるのか。俺たちがここで行方不明になったら日本中の警察を敵に回すことになるんだぞ」

 江分利パパの凄味に一歩も引かない御器所に、ハジメはちょっと見直した。

「江分利、坊ちゃんが狙われてるのは知ってるな。そこのモニターを見てみろ、三億円の懸賞金がついてる、しかも誰でもいい、早い者勝ちってな」

「なんだと」

「お前ンとこの組員がそれ目当てでやってきたんだぞ、ここにいる方が危険なんだよ。だから所轄で保護する、ここより遥かに安全だからな」

「はン、警官だって信用できるか。三億に目が眩んで誤射するヤツがいるかもしれんだろう」

 江分利パパの言葉にカチンときたハジメが、立ち上がって前に立つ。

「アンタねぇ息子さんが命狙われているのよ、ゴチャゴチャ言わずに外に出しなさい」

「うるせぇ、オンナがでしゃばるんじゃねぇ、なにがアマゾネスだ、この筋肉ブスが」

「誰が筋肉ブスだ。お前こそ息子を食い物にしてるくせに。子離れしろ過保護オヤジ」

「るっせぃ」

 江分利パパが腕を振り上げハジメを叩こうとしたが、それを難なく躱すとみぞおちに膝蹴りを入れ低くなった顎に右アッパーを入れる。

「ぐはぁ」

 うめき声を出したあと江分利パパは気を失い、それを見て御器所は頭を抱えた。
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