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護衛対象はキケンな男の娘 短編

膠着状態

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 御器所はしばらく、頭を掻きむしりながらウロウロしていたが、ピタリと足を止めると決意したように言う。

「やはり保護するしかないな。所轄に坊ちゃんを連れていく、その間に犯人を突き止めて逮捕。それから留学に行ってもらおう」

「無理ですよ」

矢島が慌てる。

「オジキもアニキたちもキレてるんす。シロートにカチコミされてナメやがってって」

──なんかカタカナで喋ってるみたいだな、言霊がのってないんだろうな──

 的外れな感想を思ってしまったが、御器所の意見には賛成だった。

「あのな矢島、モニターを見てみろ。参加者が増えているんだぞ。なかには坊ちゃんの命より抗争の火種目的でくるヤツがいるかもしれないんだ、お前たちの面子のために状況を悪化させるわけにはいかないんだよ」

「それはそうっすけど……オレが言いたいのは、オジキがユルさないってことっすよ、サツに頼るなんてナメられるって」

「ああそうだろうな。さらに言うなら、これを口実に留学を取り消しにして、ここに閉じ込めてカネだけ稼げという生活を坊ちゃんにやらせるだろうな」

御器所の言葉に夏生が反応する。

「そんなのイヤだぁ」

「やかましい、自分で蒔いた種だろうが。それがイヤならここから出る算段をしろ」

 ずっと苛ついていた感情が爆発したらしい、御器所は夏生に厳しく言い放つ。
 それを受けてビクッとしたあとうずくまって黙りこくってしまった。

──まあ仕方ないか──

 御器所が代わりに怒鳴ってくれたので、ハジメはちょっとだけ落ち着いく。おかげで頭がまわり、たしかに御器所のやり方がベターだなと思った。

「先輩、どうします」

 敷地内の江分利組の連中は外に出させてくれないだろうし、外に出ても殺しに来る連中がいる。
 今のところはこの部屋が一番安全なのだが、反面、また三億円目当てに襲撃される可能性がどんどん上がってくる状況でもある。

「……連中に黙って外に出て、パトカーで所轄に向かう……しかないか……」

 とはいえ玄関までは組員がいる。
 庭から塀をよじ登って出るにしても、時間がかかって見つかってしまうだろう。

「小山、坊ちゃんを投げて外に出せないか」

「できません。ヒトをなんだと思ってるんですか」

「つかえねぇな」

 ──この場でアンタを投げ飛ばすならできるわ!!──

 行動をともわないだけ自分はまだ冷静だなとハジメは気を落ち着かせる。

 膠着状態のなか、渡り廊下に繋がる扉にノックが鳴る。
 全員ドキリとしながら矢島が応えた。

「誰だ」
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