257 / 322
護衛対象はキケンな男の娘 短編
刑事課 黒田班
しおりを挟む
「おお小山、久しぶりだな」
壱ノ宮署刑事課の黒田が顔をほころばせる。
「ご無沙汰してます黒田警部補」
「なかなか会えなくなったから稽古ができなくて寂しいよ。なんせお前はうちの署で一番強かったからなぁ」
そんな自分を投げることができるアナタはもっと強いでしょう、と心のなかで思う。
「今日はどうした? なんか事件か?」
「あ、いえ、事件ではないんですが、警護で壱ノ宮署管轄地域に来ているので挨拶に来ました」
「なんだ小山もか」
「といいますと」
「さっき御器所さんも来たんだよ、仁義を通しにな。別件なのか?」
先輩が来ていた? 県警本部に戻ったんじゃないの?
不思議に思ったハジメは現状を黒田に話した。
「なるほどそういうことか……」
「黒田さんは御器所先輩と知り合いなんですか」
「歳は違うけど警察学校の同期だ」
「組んだばかりでどういう方が知りません、教えていただけませんか」
「うーん、何というか……、まあひと言で言うならヤクザ嫌いの寝業師かな」
ヤクザ嫌いは解るとして寝業師とはどういうことだろう。
「御器所さんは知らぬ間に根回しして成果を出すタイプなんだよ、だからひとりで動き回ったり隠し事をする。それで周りから浮いたりするし疑われたりするけどな」
「信用していいんでしょうか」
「今の話だとヤクザが絡んでるんだろう? なら信用していいよ……たぶんな」
いまいち信用できない言葉だったが、なんとなく人となりが分かったので少し安堵した。
「それでそのぅ、……今日は黒田さんだけですか……」
急にしおらしくなったハジメを見て、黒田はニヤつきながら言う。
「残念ながらミドウは捜査だ」
「そ、そんなつもりじゃ……そうですか」
あからさまにがっかりするハジメを見て吹き出しそうになるが、黒田はそれを我慢した。
「帰ってきたら小山が会いたがってたと言っておくよ」
「いいです!! けっこうです!!」
ハジメは真っ赤になりながら、失礼しますと言ってその場を離れるのだった。
翌日、つまり火曜日は早朝に県警本部で待合わせて今後の方針を打ち合わせしたのだが、なんというか全員の覇気というかやる気が感じられなかった。
組対の課長も少年課の課長も適当にやってくれという感じだ。
「時間だな。それじゃ二人とも警護に向かってくれ」
敬礼して会議室を出ていき、クルマで学校へと向う。
「今日の会議、おかしくなかったですか」
ハジメが素直に訊ねてみるたが、御器所はあんなもんだろうと返すだけだった。
壱ノ宮署刑事課の黒田が顔をほころばせる。
「ご無沙汰してます黒田警部補」
「なかなか会えなくなったから稽古ができなくて寂しいよ。なんせお前はうちの署で一番強かったからなぁ」
そんな自分を投げることができるアナタはもっと強いでしょう、と心のなかで思う。
「今日はどうした? なんか事件か?」
「あ、いえ、事件ではないんですが、警護で壱ノ宮署管轄地域に来ているので挨拶に来ました」
「なんだ小山もか」
「といいますと」
「さっき御器所さんも来たんだよ、仁義を通しにな。別件なのか?」
先輩が来ていた? 県警本部に戻ったんじゃないの?
不思議に思ったハジメは現状を黒田に話した。
「なるほどそういうことか……」
「黒田さんは御器所先輩と知り合いなんですか」
「歳は違うけど警察学校の同期だ」
「組んだばかりでどういう方が知りません、教えていただけませんか」
「うーん、何というか……、まあひと言で言うならヤクザ嫌いの寝業師かな」
ヤクザ嫌いは解るとして寝業師とはどういうことだろう。
「御器所さんは知らぬ間に根回しして成果を出すタイプなんだよ、だからひとりで動き回ったり隠し事をする。それで周りから浮いたりするし疑われたりするけどな」
「信用していいんでしょうか」
「今の話だとヤクザが絡んでるんだろう? なら信用していいよ……たぶんな」
いまいち信用できない言葉だったが、なんとなく人となりが分かったので少し安堵した。
「それでそのぅ、……今日は黒田さんだけですか……」
急にしおらしくなったハジメを見て、黒田はニヤつきながら言う。
「残念ながらミドウは捜査だ」
「そ、そんなつもりじゃ……そうですか」
あからさまにがっかりするハジメを見て吹き出しそうになるが、黒田はそれを我慢した。
「帰ってきたら小山が会いたがってたと言っておくよ」
「いいです!! けっこうです!!」
ハジメは真っ赤になりながら、失礼しますと言ってその場を離れるのだった。
翌日、つまり火曜日は早朝に県警本部で待合わせて今後の方針を打ち合わせしたのだが、なんというか全員の覇気というかやる気が感じられなかった。
組対の課長も少年課の課長も適当にやってくれという感じだ。
「時間だな。それじゃ二人とも警護に向かってくれ」
敬礼して会議室を出ていき、クルマで学校へと向う。
「今日の会議、おかしくなかったですか」
ハジメが素直に訊ねてみるたが、御器所はあんなもんだろうと返すだけだった。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
家に帰ると夫が不倫していたので、両家の家族を呼んで大復讐をしたいと思います。
春木ハル
恋愛
私は夫と共働きで生活している人間なのですが、出張から帰ると夫が不倫の痕跡を残したまま寝ていました。
それに腹が立った私は法律で定められている罰なんかじゃ物足りず、自分自身でも復讐をすることにしました。その結果、思っていた通りの修羅場に…。その時のお話を聞いてください。
にちゃんねる風創作小説をお楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる