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護衛対象はキケンな男の娘 短編

刑事課 黒田班

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「おお小山、久しぶりだな」

 壱ノ宮署刑事課の黒田が顔をほころばせる。

「ご無沙汰してます黒田警部補さん

「なかなか会えなくなったから稽古ができなくて寂しいよ。なんせお前はうちの署で一番強かったからなぁ」

 そんな自分を投げることができるアナタはもっと強いでしょう、と心のなかで思う。

「今日はどうした? なんか事件か?」

「あ、いえ、事件ではないんですが、警護で壱ノ宮署管轄地域こちらに来ているので挨拶に来ました」

「なんだ小山もか」

「といいますと」

「さっき御器所さんも来たんだよ、仁義を通しにな。別件なのか?」

 先輩が来ていた? 県警本部に戻ったんじゃないの?

 不思議に思ったハジメは現状を黒田に話した。

「なるほどそういうことか……」

「黒田さんは御器所先輩と知り合いなんですか」

「歳は違うけど警察学校の同期だ」

「組んだばかりでどういう方が知りません、教えていただけませんか」

「うーん、何というか……、まあひと言で言うならヤクザ嫌いの寝業師かな」

 ヤクザ嫌いは解るとして寝業師とはどういうことだろう。

「御器所さんは知らぬ間に根回しして成果を出すタイプなんだよ、だからひとりで動き回ったり隠し事をする。それで周りから浮いたりするし疑われたりするけどな」

「信用していいんでしょうか」

「今の話だとヤクザが絡んでるんだろう? なら信用していいよ……たぶんな」

 いまいち信用できない言葉だったが、なんとなく人となりが分かったので少し安堵した。

「それでそのぅ、……今日は黒田さんだけですか……」

 急にしおらしくなったハジメを見て、黒田はニヤつきながら言う。

「残念ながらミドウは捜査だ」

「そ、そんなつもりじゃ……そうですか」

 あからさまにがっかりするハジメを見て吹き出しそうになるが、黒田はそれを我慢した。

「帰ってきたら小山が会いたがってたと言っておくよ」

「いいです!! けっこうです!!」

ハジメは真っ赤になりながら、失礼しますと言ってその場を離れるのだった。



 翌日、つまり火曜日は早朝に県警本部で待合わせて今後の方針を打ち合わせしたのだが、なんというか全員の覇気というかやる気が感じられなかった。

 組対の課長も少年課の課長も適当にやってくれという感じだ。

「時間だな。それじゃ二人とも警護に向かってくれ」

 敬礼して会議室を出ていき、クルマで学校へと向う。

「今日の会議、おかしくなかったですか」

ハジメが素直に訊ねてみるたが、御器所はあんなもんだろうと返すだけだった。
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