256 / 322
護衛対象はキケンな男の娘 短編
ようやく下校時間
しおりを挟む
校門で待つ怪しげな二人の男、頑張って一般的なスーツ姿のカタギになろうとしたが、醸し出す雰囲気はそうではない。
あれが江分利組の若い衆だなとハジメは思った。
校舎から校門までが本職の護衛の範囲、あと少しで腕に絡みつくこの軟弱少年が離れてくれる。
そう念じながらハジメは我慢して歩く。
早く離れて欲しいから足早なハジメに対して、いつまでもくっついていたい夏生は歩みが遅い──どころか止まる──どころか後退りする感じである。
端からみれば、
やだー、もっと遊びたいー、帰るのやだー、
と言ってる子供を、
いい加減にしなさいもう帰るの、早く来なさい、
と言いながら連れ帰る母親のような感じである。
拮抗──はしない。
ハジメの方が背が高くチカラがある。さらに要所要所でうまく引っ張るので、どんどん校門に向かっていく。
「はいよ、警護はここまで。あとはこっちにに守ってもらいなさい」
「えーやだー、もっといるー」
「……あんた狙われているの分かってる? 全然怖がってないようにみえるんだけど」
ハジメが覗き込むように顔を近づけると、目をそらしてそ知らぬ顔をして離れる。
そしてそのままお迎えの方に行き校門から出てこちらに振り向いて手を振る。
「おねーさまー、また明日ねー」
笑顔でそう言うと黒塗りのセダンに乗り込み、お迎えとともに帰っていった。
ハジメはようやく緊張から解き放たれて、肩の力が抜ける。
「よ、お疲れさん」
「先輩、どこに行ってたんですか。探したんですよ」
いつの間にかそばに来ていた御器所に、ハジメは噛みつくように言う。
「ちょっと呼ばれてな、県警本部に戻ってた。詫びと言ってはなんだが、報告書はオレが書いておくから小山は直帰しな。体調不良ということにしておくから」
へらへらとしている御器所に何か違和感を感じたが、実際に疲れていたので言われたとおりにした。
先にクルマで帰る御器所を見送ったあと、しまったと思う。学校は交通の便が悪くてクルマでないと駅や街まで行けないのだ。
「葵ぃ、いる~?」
職員室で書類を作成していた葵が顔を上げる。
事情を話して駅まで送ってほしいと頼むと、もう少しでレポートができるからそれまで待ってと言われ、承諾した。
じっと待っているのも何だなと思ったハジメは、恩師の北方に挨拶がてら夏生のことを聞き取る。
「──そうですか」
ハジメが感じた違和感の正体を知り、顔をしかめた。
その後、葵のスポーツカーで壱ノ宮駅まで送ってもらうと、電車で名古屋に帰る前に祖父母と古巣の壱ノ宮署に挨拶しておこうと思いそちらに向かう。
あれが江分利組の若い衆だなとハジメは思った。
校舎から校門までが本職の護衛の範囲、あと少しで腕に絡みつくこの軟弱少年が離れてくれる。
そう念じながらハジメは我慢して歩く。
早く離れて欲しいから足早なハジメに対して、いつまでもくっついていたい夏生は歩みが遅い──どころか止まる──どころか後退りする感じである。
端からみれば、
やだー、もっと遊びたいー、帰るのやだー、
と言ってる子供を、
いい加減にしなさいもう帰るの、早く来なさい、
と言いながら連れ帰る母親のような感じである。
拮抗──はしない。
ハジメの方が背が高くチカラがある。さらに要所要所でうまく引っ張るので、どんどん校門に向かっていく。
「はいよ、警護はここまで。あとはこっちにに守ってもらいなさい」
「えーやだー、もっといるー」
「……あんた狙われているの分かってる? 全然怖がってないようにみえるんだけど」
ハジメが覗き込むように顔を近づけると、目をそらしてそ知らぬ顔をして離れる。
そしてそのままお迎えの方に行き校門から出てこちらに振り向いて手を振る。
「おねーさまー、また明日ねー」
笑顔でそう言うと黒塗りのセダンに乗り込み、お迎えとともに帰っていった。
ハジメはようやく緊張から解き放たれて、肩の力が抜ける。
「よ、お疲れさん」
「先輩、どこに行ってたんですか。探したんですよ」
いつの間にかそばに来ていた御器所に、ハジメは噛みつくように言う。
「ちょっと呼ばれてな、県警本部に戻ってた。詫びと言ってはなんだが、報告書はオレが書いておくから小山は直帰しな。体調不良ということにしておくから」
へらへらとしている御器所に何か違和感を感じたが、実際に疲れていたので言われたとおりにした。
先にクルマで帰る御器所を見送ったあと、しまったと思う。学校は交通の便が悪くてクルマでないと駅や街まで行けないのだ。
「葵ぃ、いる~?」
職員室で書類を作成していた葵が顔を上げる。
事情を話して駅まで送ってほしいと頼むと、もう少しでレポートができるからそれまで待ってと言われ、承諾した。
じっと待っているのも何だなと思ったハジメは、恩師の北方に挨拶がてら夏生のことを聞き取る。
「──そうですか」
ハジメが感じた違和感の正体を知り、顔をしかめた。
その後、葵のスポーツカーで壱ノ宮駅まで送ってもらうと、電車で名古屋に帰る前に祖父母と古巣の壱ノ宮署に挨拶しておこうと思いそちらに向かう。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
家に帰ると夫が不倫していたので、両家の家族を呼んで大復讐をしたいと思います。
春木ハル
恋愛
私は夫と共働きで生活している人間なのですが、出張から帰ると夫が不倫の痕跡を残したまま寝ていました。
それに腹が立った私は法律で定められている罰なんかじゃ物足りず、自分自身でも復讐をすることにしました。その結果、思っていた通りの修羅場に…。その時のお話を聞いてください。
にちゃんねる風創作小説をお楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる