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ジャグジーの誓い 短編

体力測定

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 よく土曜日、お昼過ぎに一色はスポーツジムの受付にいた。

「さて、どんな思惑があるのやら」

 たまたまチケットを渡されたような流れだったが、内ポケットから出すとき真新しいところを見たので、最初からそのつもりだったなとはわかった。

 そのあと何の説明もなかったので、あえてどういうつもりか訊かずにやってきたのだ。

「前に身体を鍛えるって言ったからそれでかな? それとも現状の能力を識っておくために測定させるのかな」

 出たとこ勝負だなと腹をくくり、優待券を受付に出す。
 すると、少々お待ち下さいと言われて、受付の人が奥の事務所に引っ込んでしまった。
 待たされるのかと思ったら、すぐに別の女の人が出てくる。

「すいません、こちらのチケットの方ですか」

「はい」

「──わかりました、こちらへどうぞ。案内させていただきます」

そう言うと、その人は受付カウンターから出てきて、こちらへとうながした。

──いきなりきな臭いな──

一色はそう思ったが、千秋を信じてついていくことにした。

 ジムの中は吹抜け二階建て構造になっていて、一階はフィットネススタジオとプール、二階はトレーニングマシンが使えるようになっていた。
 案内されたのは一般の更衣室ではなく、VIPルームの更衣室だったので一色は戸惑う。

「ここって、どういう人が使うんですか」

「はい、これロッカーのカギ。着替えたらそこのスタジオに来てね」

それだけいうとさっさとスタジオの方に行ってしまった。
 質問にこたえられない上に素っ気ない態度に一色は少々癇にさわったが、持ち前のポジティブ思考で気を取り直す。

「これはあれかな、試練的なものなのかな。それなら認めてもらうために頑張ってみるか」

 ロッカールームでTシャツと短パンに運動靴に着替えると、タオルとドリンクを持ってスタジオに向かった。

「来たわね。それじゃさっそくストレッチをはじめて」

 マットの上で軽く済ませると、それじゃ体力測定始めますと事務的に言われて、メニューをこなしていく。



「──以上で終わりです」

最後の持久走が終わり、ランニングマシンに座り込んでハァハァと息をはずませる一色に、女は冷ややかに言う。

「あなた、本気でやってる?」

「ほ……、本気……、です、けど……」

「本気でこれなの? この数値、女子高校生の平均値とほぼ同レベルよ。あなた何歳なの?」

「に、二十七です……」

 なんとか息を整えて女の顔を見上げると、冷静に保っているがかなり怒っているのがわかった。

「──千秋も何考えてんのよ」
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