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佐野千秋の休日 西南奔走

その6

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 油断なく確実に気絶させたことを確認してからティーは脚を離した。

全身のあちこちが痛い、立ち上がるとよろよろとケーのそばに行こうとするが、その足を掴まれる。サクマだ。

「ま、まて、」

朦朧としながらもまだ戦意を失っていないらしい。ティーは半分感心し半分呆れる。

「ケー」

ティーからの言葉で、手元のバッグから何かを取り出し、ケーはそれを投げる。

ティーはそれを受け取り、スイッチを入れてサクマの首筋に当てた。

「うっ、わぁああ!!」

短く叫ぶと、今度は完全に落ちた。

「効くでしょ、この特製スタンガン。……なんてもう聴こえないか」

チカラを失ったサクマの手を振りほどくと、喜んで近づこうとするケーに、無言で作業を先にすることをうながす。

すぐに承諾したケーは、ティーとそれぞれの予定通りの作業をして、その場をあとにした。




 2人は少し離れた駐車場に向かうと、そこに停めてあった軽自動車に乗り込み、すぐさま発車させる。
焦る気持ちを抑えて安全運転で向かった先は、名古屋のはずれにあるラブホテルだった。

クルマを停めて、部屋に入ると2人ともウィッグとサングラスをはずし、化粧を落とす。
素っぴんになってお互いの顔を見て、やっと安心したのか思わず笑いがこぼれた。

「あははは、やったねケイ」

「途中危なかったけど、予定通りいけて良かったわ。身体の方は大丈夫、千秋」

心配そうに千秋の身体のあちこちを見ると、やはり腫れたり擦り傷しているところを、いくつか見つける。

「大きな傷はなさそうね。薬と着替えの用意しておくから、先にシャワーを浴びてきて」

わかったと言いながら千秋は浴室に行き、服を脱ぎ始める。
壁が透明で覗けるタイプの部屋だったから、その姿は蛍《ケイ》にまる見えだ。
用意するといいながら、蛍はその様子をうっとりと眺めていた。

シャワーを終えて出てくる姿を見て、慌てて蛍は用意をする。

身体を拭いてからバスタオルを巻きつけると、ドライヤーで髪を乾かす。その後ろから蛍は薬を塗りながら湿布を貼る。

「けっこうやられたわねぇ、倒された時はマジ焦ったわよ」

「あたしも。でも文字どおり怪我の功名でね、あのままじゃ埒が明かなかったから、隙をつくる作戦に変更したの。今日ほど受け身の練習しておいてよかったと思う日はなかったわ」

髪が乾き、見えるところの治療が終わると、バスタオルをはずし下着を身に着ける。

「うわあ、左肩と背中がひどいねぇ。ほら横になりな」

左肩の治療をした後にベッドに寝そべると、蛍は千秋にまたがり、背中の治療をはじめた。
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