217 / 322
佐野千秋の休日 西南奔走
その6
しおりを挟む
油断なく確実に気絶させたことを確認してからティーは脚を離した。
全身のあちこちが痛い、立ち上がるとよろよろとケーのそばに行こうとするが、その足を掴まれる。サクマだ。
「ま、まて、」
朦朧としながらもまだ戦意を失っていないらしい。ティーは半分感心し半分呆れる。
「ケー」
ティーからの言葉で、手元のバッグから何かを取り出し、ケーはそれを投げる。
ティーはそれを受け取り、スイッチを入れてサクマの首筋に当てた。
「うっ、わぁああ!!」
短く叫ぶと、今度は完全に落ちた。
「効くでしょ、この特製スタンガン。……なんてもう聴こえないか」
チカラを失ったサクマの手を振りほどくと、喜んで近づこうとするケーに、無言で作業を先にすることをうながす。
すぐに承諾したケーは、ティーとそれぞれの予定通りの作業をして、その場をあとにした。
2人は少し離れた駐車場に向かうと、そこに停めてあった軽自動車に乗り込み、すぐさま発車させる。
焦る気持ちを抑えて安全運転で向かった先は、名古屋のはずれにあるラブホテルだった。
クルマを停めて、部屋に入ると2人ともウィッグとサングラスをはずし、化粧を落とす。
素っぴんになってお互いの顔を見て、やっと安心したのか思わず笑いがこぼれた。
「あははは、やったねケイ」
「途中危なかったけど、予定通りいけて良かったわ。身体の方は大丈夫、千秋」
心配そうに千秋の身体のあちこちを見ると、やはり腫れたり擦り傷しているところを、いくつか見つける。
「大きな傷はなさそうね。薬と着替えの用意しておくから、先にシャワーを浴びてきて」
わかったと言いながら千秋は浴室に行き、服を脱ぎ始める。
壁が透明で覗けるタイプの部屋だったから、その姿は蛍《ケイ》にまる見えだ。
用意するといいながら、蛍はその様子をうっとりと眺めていた。
シャワーを終えて出てくる姿を見て、慌てて蛍は用意をする。
身体を拭いてからバスタオルを巻きつけると、ドライヤーで髪を乾かす。その後ろから蛍は薬を塗りながら湿布を貼る。
「けっこうやられたわねぇ、倒された時はマジ焦ったわよ」
「あたしも。でも文字どおり怪我の功名でね、あのままじゃ埒が明かなかったから、隙をつくる作戦に変更したの。今日ほど受け身の練習しておいてよかったと思う日はなかったわ」
髪が乾き、見えるところの治療が終わると、バスタオルをはずし下着を身に着ける。
「うわあ、左肩と背中がひどいねぇ。ほら横になりな」
左肩の治療をした後にベッドに寝そべると、蛍は千秋にまたがり、背中の治療をはじめた。
全身のあちこちが痛い、立ち上がるとよろよろとケーのそばに行こうとするが、その足を掴まれる。サクマだ。
「ま、まて、」
朦朧としながらもまだ戦意を失っていないらしい。ティーは半分感心し半分呆れる。
「ケー」
ティーからの言葉で、手元のバッグから何かを取り出し、ケーはそれを投げる。
ティーはそれを受け取り、スイッチを入れてサクマの首筋に当てた。
「うっ、わぁああ!!」
短く叫ぶと、今度は完全に落ちた。
「効くでしょ、この特製スタンガン。……なんてもう聴こえないか」
チカラを失ったサクマの手を振りほどくと、喜んで近づこうとするケーに、無言で作業を先にすることをうながす。
すぐに承諾したケーは、ティーとそれぞれの予定通りの作業をして、その場をあとにした。
2人は少し離れた駐車場に向かうと、そこに停めてあった軽自動車に乗り込み、すぐさま発車させる。
焦る気持ちを抑えて安全運転で向かった先は、名古屋のはずれにあるラブホテルだった。
クルマを停めて、部屋に入ると2人ともウィッグとサングラスをはずし、化粧を落とす。
素っぴんになってお互いの顔を見て、やっと安心したのか思わず笑いがこぼれた。
「あははは、やったねケイ」
「途中危なかったけど、予定通りいけて良かったわ。身体の方は大丈夫、千秋」
心配そうに千秋の身体のあちこちを見ると、やはり腫れたり擦り傷しているところを、いくつか見つける。
「大きな傷はなさそうね。薬と着替えの用意しておくから、先にシャワーを浴びてきて」
わかったと言いながら千秋は浴室に行き、服を脱ぎ始める。
壁が透明で覗けるタイプの部屋だったから、その姿は蛍《ケイ》にまる見えだ。
用意するといいながら、蛍はその様子をうっとりと眺めていた。
シャワーを終えて出てくる姿を見て、慌てて蛍は用意をする。
身体を拭いてからバスタオルを巻きつけると、ドライヤーで髪を乾かす。その後ろから蛍は薬を塗りながら湿布を貼る。
「けっこうやられたわねぇ、倒された時はマジ焦ったわよ」
「あたしも。でも文字どおり怪我の功名でね、あのままじゃ埒が明かなかったから、隙をつくる作戦に変更したの。今日ほど受け身の練習しておいてよかったと思う日はなかったわ」
髪が乾き、見えるところの治療が終わると、バスタオルをはずし下着を身に着ける。
「うわあ、左肩と背中がひどいねぇ。ほら横になりな」
左肩の治療をした後にベッドに寝そべると、蛍は千秋にまたがり、背中の治療をはじめた。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
家に帰ると夫が不倫していたので、両家の家族を呼んで大復讐をしたいと思います。
春木ハル
恋愛
私は夫と共働きで生活している人間なのですが、出張から帰ると夫が不倫の痕跡を残したまま寝ていました。
それに腹が立った私は法律で定められている罰なんかじゃ物足りず、自分自身でも復讐をすることにしました。その結果、思っていた通りの修羅場に…。その時のお話を聞いてください。
にちゃんねる風創作小説をお楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる