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佐野千秋の休日 謎解き川柳(小川三水目線)

その4

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「千秋がクリムゾン騎士を好きなのは、誰が知っている?」

「う~ん、思い当たらないな」

「じゃあ、範囲を狭めてみようか」

「どうやって」

「まず最近、カラオケとか雑談とかで、クリムゾン騎士の話をしたかい」

「う~ん、してないな。会社関係も昔からの地元の友達ともしてない」

「入社する前は」

「大学院出てから、ずっと海外だったし、それは考えにくい」

「となると、小学生から大学院の間の知り合いと考えられるな」

それを聞いて千秋はしばらく天井を見つめながら考えてた。

「一番考えられるのは、小学生の頃の友達かな」

「なぜ」

「大学時代は、バイトか研究で明け暮れてたし、中高は部活ばかりしてたもの」

「千秋の世代だと、中高生でもカラオケとか行ってたんだろう、その時に話題になったとか」

「ううん、あの頃はアイドルの話題ばっかりだった。だから小学生の時だと思う」

なるほど、千秋の考えは正しいと思う。さらに狭めれば、小3から小6の間となる。とはいえだ。

「クリムゾン騎士のブームはどのくらいあったの」

「どうゆうこと」

「子供のブームは早いというか短い。あっという間に興味が移っちゃうだろ」

「そっか、本放送が1クールで3ヶ月くらいの期間中と、その後しばらくなら半年くらいか」

そこまで言ったとたん、大声をだす。

「思い出した!  大宮公園だ!」

急に大声だされて目をシロクロしている私に、千秋はコトバを続ける。

「小3の頃は真清田神社の北側に住んでたのよ。だから、大宮公園でクリムゾン騎士ごっこしていたんだ」

千秋の世代でも、ごっこ遊びとかしたんだという事に驚いた。

「あ、でも……」

「どうした」

「一緒に遊んだハジメとケイは、今でも付き合いがあるから違うわね」

「へぇ、長いつき合いだね」

自分の知る限り、長いつき合いの女同士というのはいなかったから、また驚いた。

「となると、この考えは違ってたのかな」

 あらためてレポート用紙の川柳らしきものに目を向ける。二人してしばらく沈思黙考していたが、私が先に口を開いた。

「やっぱり合っていると思うよ。この川柳の、ゆか・りの・まきを取り除くと、[あの頃の]─[場クリムゾン]となるでしょ」

千秋が黙って聞く。

「クリムゾンが、クリムゾン騎士を指すなら、[あの頃の] と[場]が残る。
小学生の頃、大宮公園で遊んだのなら[あの頃の場]イコール[大宮公園]と言える。
つまり、クリムゾン騎士ごっこした大宮公園に来い、と言っているんじゃないかな」

千秋は、黙ったまま考えていたが、口を開く。

「うん、あってると思う。だけど疑問が残るの」

千秋の言いたいことはわかる。

「待ち合わせってのは、場所と時間を指定するのよね。でもこれだと場所だけだわ。私はいつ大宮公園に行けばいいの?」

私はすぐに答えられなかったが、しばらく考えて考えをまとめる。

「いつでもいいんじゃないかな」

「どうして」

「人がいるとは限らない、ひょっとしたらメッセージかもしれないだろ。それなら何日の何時でも関係無いだろ」

「そうね……、そうかもしれないわね」

「まあためしに、今度の休日にでも行ってみるんだね。これでいいかな」

少ない手がかりだったが、一応納得が出来る結論にいたったので私はそれなりに満足した。
ボトルキープしているお手頃価格のブランデーを手にすると、水割りを作り喉をうるおす。

うん、美味い。

千秋はレポート用紙を手に、見つめたままである。

「ねえ三ちゃん、私、明日休みなんだ」

「じゃあ明日行ってくるんだね」

「三ちゃんは?」

「……それは明日つき合えという意味かな」

「察しのいい人って好きよ」

一応、読み解きの責任があるし、私自身、興味があるから付き合うことにした。

そして今、大宮公園にいる訳だ。
 
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